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司法試験合格体験記と皆さんへのアドバイス

丸山 智史

 
 

1.経歴と志望動機

 私は、中学・高校が明治大学の付属校だったため、大学受験の勉強をすることなく、2000年4月、明治大学法学部法律学科に入学しました。
 法学部法律学科に決めた理由は、2004年開校予定だった法科大学院に入学し、法曹になって、法律で人を救いたいと思ったからでした。
 私が高校生の時、ちょうど司法制度改革の真只中で、その柱が、裁判員制度そして法科大学院の設立でした。
 文系か理系かの選択で迷っていた高校1年のとき、私の恩師である担任の先生から「これからの時代は、多様な法曹が必要になってくる。2004年に法科大学院が設立することを知っているか?これからは、法律で人を救うことが当たり前の時代になる。15年後、20年後、法曹となって活躍するお前が本当に困っている人を救いなさい。」という助言でした。この助言が、試験に何度も落ちた自分を励ましてくれました。諦めかけた自分を助けてくれました。私は、38歳で今年合格しましたので、高校1年の時から22年後の今、ちょっと遅くなりましたが、恩師の言葉が本当に現実となり、その意味がようやく理解できるようになりました。あのとき恩師に出会わなかったら、恩師に相談をしなかったら、今の自分はなかったと思います。本当に感謝しかありません。
 明治大学法学部法律学科に入学して、大学1年から司法試験の勉強を始め、大学3年時のゼミは、刑法の川端ゼミを選択しました。多くの法曹を輩出している川端ゼミのゼミ生そして卒業生は、とても優秀な方が多く、当時現役で合格した方もいました。卒業して16年経過した今でも、ゼミ仲間と連絡を取っています。
 川端ゼミの同期は、現在、弁護士、消防士、警察官、官庁の役人、学者、企業の法務部など法律に関わる仕事や公務など多方面で活躍しており、私にとっては、大学生活4年間の中で最も有意義で充実していた時期でした。
 大学1、2年生もしくは高校生でこの合格体験記を読まれている方、明治大学法学部でのゼミ選びは、あなたの人生が決まってしまうほど、とても重要な選択です。ゼミの選考は、面接や2年時までの成績などで決まりますが、2年時までの成績が重要です。行きたいゼミの選考基準を調べておいてみて損はないです。授業は手を抜かずに、大学1、2年時になるべく「優」を稼いでおいてください。
 それから法科大学院に入学できなかった私は、社会人となり、「社会人を10年間経験したら再び司法試験にチャレンジしよう。法科大学院に入学して後悔しないようにしよう」と思い、一念発起し、学習院大学法科大学院に入学しました。
 法科大学院卒業後、再び働きながら司法試験を目指して勉強していました。
 社会人として働きながら、勉強するのはとても大変で、苦しいものです。勉強時間は、平日では、1日でも多くて3時間位、休日でも12時間位が限界です。
 個人的には、予備試験を含め、働きながら試験勉強をするのは、非効率で失敗のリスクが大きいと思います。
 特に、司法試験は5回しかチャンスがないため、リスクが大きいといえます。予備試験も科目数が多いため、働きながらの試験勉強は、相当な覚悟と犠牲が伴います。
 ただ、30歳以上の方は別です。30歳を過ぎて、社会人経験や定職に就いていないと、社会的に全く信用されません。仮に、弁護士になったとしても、30歳を過ぎて社会人としてのマナーを身に着けていない方は、弁護士になってからとても苦労すると思います。30歳以上の受験者の方は、働きながら勉強されるか法科大学院に入学するかどちらかしかないと思います。
 法科大学院では、勉強に集中できる環境と実務家の方との出会いがあります。
 近年、法科大学院はあまり人気がなく、良い評判が見当たりませんが、法科大学院で集中した環境で同じ目標を有する仲間と語り合い、2年~3年かけて基礎からじっくり学べる法科大学院の存在意義は、大きいと思います。
 私は、30歳を過ぎて法科大学院に入学しましたが、法科大学院に入学して正解だったと思っています。法科大学院に入学していなかったら、司法試験に合格していなかっただろうと思っています。
 受験生の皆さんには、法科大学院でじっくり基礎から学びながら司法試験を目指すことも選択肢の1つだと思います。
 
【失敗談として・・・】
 私は、3回目の時に、願書の提出期限を間違えて受験できませんでした。仕事で多忙な時期に願書の期限が迫り、提出期限に間に合わず、そのまま失格となってしまいました。それから、社労士の試験に切り替え合格しましたが、自らのミスで受験機会を失ったことは今でも後悔しています。
 皆さんは、絶対に願書の提出期限を間違えないようにしてください。
 私のように1年を棒に振ると、人生が終わるくらいの喪失感がありますので・・・
 
 

2.勉強方法

➀ 法科大学院での授業
 法科大学院での授業で大切なことは、しっかり予習をして、自分が当てられてもすべて答えられるよう「事前に準備をしておく」ことです。そして、自分が「できる(理解している)ところ」と「できないところ(理解が不十分なところ)」、「よくわからないところ(授業後で質問をするところ)」をあらかじめ整理しておくことです。
 法科大学院では、授業の準備で日々大変忙しいです。全ての講義で事前にきちんと準備をしておく必要があり、多大な労力を費やします。ただ、法科大学院生の皆さんは、先生に何を聞かれてもいいように、事前に授業で関係のある判例や学説に目を通すのは当然で、むしろ準備しておかないと授業のレベルに追いついていけないと言います。法科大学院生は、何より授業を大切にすることが重要です。
 しっかり準備してきちんと予習している人ほど早く合格しているといいます。
 「予習」、「授業」そして「授業後の復習」がとても重要です。
 しっかり授業の準備をして、1つひとつの授業を大切にしてください。
 私は、予習をして理解が不十分だと思ったところをマークして、授業が終わった後に「授業を聞いてわかったこと」、「気づいたこと」、「重要なキーワード」をノートに赤ペンで書いていました。
 また、授業中に出てきた判例を復習時にチェックして、教科書に気づいたことを書き込んでました。
 授業を聞いてもわからなかったことは、授業が終わった後すぐに先生に質問したり、同期の友人に質問して、しつこいほど聞いていました。
 先生に質問をして、答えを頂いてもすぐには理解できないかもしれません。
(※質問しても「自分で考えてみてください」と言われたら、それは勉強不足です。その質問の答えは、教科書や調査官解説などに書いてあることが多いです。)
 それでも、答案を書いていると、3か月後、6か月後に「あっ、そういえば前に聞いたことあったな。」と気づくことがあります。
 質問することで、自分が理解していないことに気づきます。また、質問することで新たな発見をすることもあります。質問したり、他人に聞いてみることが重要です。
 口に出してみると、とても効率的に整理することができます。
 本を読んで自分で納得しただけでは、忘れてしまいます。
 また、本を読んで理解しただけでは答案に書けません。
 授業後の復習は、論文として答案で書くこと(答案でどう表現して書くか)を想定しながら、「気づいたこと」などをメモしながら勉強を進めてみてください。
 
➁ 択一の勉強方法
 私の択一の勉強方法は、毎日(日曜日も正月も関係なく)、帰りの電車の中や寝る前に過去問を解いていました。
 過去問は、「択一問題集」や「肢別本」で充分です。
 帰りの電車の中で問題を解き、寝る前に答え合わせと条文の確認をしていました。
間違えたところ、気づいた点、わからなかったところは、『択一六法(LEC出版)』に書き込みをしていました。
 特に、寝る前に条文の確認を習慣にしたことが知識の定着に役立ちました。
 1日30分でもいいので、毎日、寝る前に『プロフェッショナル判例六法』記載の「判例のチェック」と「条文の素読み」(特に、民法)を習慣にしてみてください。
 択一対策は、「毎日過去問を解くこと」、「答え合わせの際には、条文や判例を照らし合わせながら行うこと」「条文の素読み」が点数UPにつながると思います。
 
➂ 論文の勉強方法
 受験1年目、2年目までは、自分の点数がなぜ悪いのかよくわかりませんでした。
 今思えば、やみくもに過去問や予備校の問題を解いていたように思います。
 過去問に関しては、答案を書いた後、模範答案(早稲田セミナーの過去問集に「模範答案」がありますね。)や各年度版の優秀答案集と照らし合わせて確認していましたが、予備校の答練でもなかなか点数が上がりませんでした。
 法科大学院で指導を受けた実務家の先生に添削していただき、ご指導を受けながら過去問を解いていました。実務家の方からアドバイスを受けると、今まで自分が作成していた答案のスタイルとだいぶ違うことに気づかされます。
 実務家の方のご指導で、答案作成の基礎から鍛えられたため、答案の書き方が変わり、少ない分量でも端的に事実・評価を指摘することで答練でも高得点を取れるようになりました。
 今までは、予備校などが出している答案を参考にしていましたが、無駄が多く、優秀すぎて私には書けないものでした。
 予備校で講義を受けるよりも、仲間内でゼミを組むよりも、実務家の方のご指導を受けながら勉強されたほうが「正確な知識」や「答案の書き方」など多くの「気づき」を得ることができると思います。
 答案作成に悩んでいる方は、「端的に問題点を示し、条文を示して、規範とあてはめを一致させる。」
まずは、これをトレーニングしてみてください。
 
➃ 学部生、ロー1年生・2年生へ:「他流試合」のご案内
 授業の準備や勉強が大変であることは承知していますが、本番の予行演習として、「予備試験」「行政書士」「ビジネス法務検定」「社労士」の受験がおススメです。
 予備試験を受験すると、受験会場の雰囲気からも予備試験生のモチベーションが高いことを実感できます。
 予備試験の択一試験に関しては、司法試験の問題とかなり共通していますので、本番に向けた予行演習になります。また、論文試験に関しても、時間内に答案を仕上げるための本番の予行演習として最適です。
 予備試験の受験経験は、きっと本番に役立つと思います。
 「行政書士」の受験科目(法律科目:法学、憲法、民法、行政法、商法)は、司法試験の科目とかなりリンクしており、記述式問題も皆さんが日々勉強している範囲内の問題です。「行政書士試験」は、学部生・法科大学院生が、司法試験に向けた正しい勉強法を日々行っていれば、合格できる試験の1つです。
 ただ、皆さんは「行政書士」になるわけではありませんので、深入りは禁物です。
 もし受験されるならば、1回限りで、短期間の勉強で、必ず合格できるように勉強を進めてみてください。
 ちなみに、行政書士試験は、申請:8月7日~9月9日まで、受験日:11月12日(2019年度)ですので、ご注意を。
 
➄ 予備校の使い方
 法科大学院の学生にとっては、予備校に行かれるかどうか迷われている方も多いかと思います。
 私は、週1回の答練を利用していました。
 私は、伊藤塾を利用していましたが、どこの予備校でも構わないと思います。
 週1回のペースで答練があることで、常に論文を書くことを意識しながらスケジュールを立てることができますし、モチベーションが高い環境の中で勉強できるほうが合格は早いかと思います。
 また、「試験問題」に関する情報は、圧倒的に予備校のほうが豊富にあります。本試験を意識した問題で練習できることで、本番に向けた予行演習にもなります。
 ただ、予備校の答練を受ける際には、「休まない」、「途中答案を書かない」、「目的を設定する(「6ページ以内で書く」「規範定立とあてはめを一致させる」、「趣旨から規範定立の流れを意識して書いてみる」など)ことが重要です。
 答練の点数は気にしなくて大丈夫です。ただ、採点基準は、よく読んでおいてください。採点基準、優秀答案と自分の答案を対比して、優秀答案はどうやって論点を書いているかをチェックして、再度書き直してみてください。
 
 

最後に・・・

1.毎日答案を書いてください。
 答練の問題は、予備試験でも旧司法試験でも予備校の問題でも構いません。答案を書かなくなると、書くスピードが落ちます。頭に浮かんでも文章が出てこなくなり、意味不明の文章を作成することになります。
 
2.教科書や判例をただ読んだだけでは、理解したことになりません。
 教科書や判例は、答案を書く際に利用するものです。教科書の内容を覚えても何ら意味はありません。皆さんは学者になるわけではないので、学説なんてどうでもいいんです。判例を研究するのは構いませんが、論文は答案で理解度を問われます。勉強方法として、「答案で採点者にわかりやすく説明するためにどうしたらよいか」「答案でどのように書いたらよいか」という視点を忘れないでください。
 
3.答案は、端的に、わかりやすく。
 答案は、8ページ全て書く必要はありません。本試験では、4ページでも「A」評価がつくこともあります。6ページで十分です。
「問題点を指摘して、条文(構成要件)を提示して、定義・趣旨を踏まえて、規範を定立し、事実を評価して、規範にあてはめる。類似・関連判例があれば、紹介して問題との相違点を端的に指摘する。」
 これを愚直に進めてください。
 本試験では、予備校の評価とは異なり、たくさん書いても必ずしも点数が伸びるわけではありません。
 また、規範とあてはめが一致していないと、点数として評価されません。
 私は、刑法が今までいつも「E」評価だったのは、規範とあてはめが対応していなかったからだと思われます。
 
4.試験問題の「出題趣旨」が重要です。
 「設問で問われていることは何か?」「出題者は何を書いてほしいのか?」
 「関連判例との違いは何か?」「趣旨から規範を導いて、問題文の事実をどのように利用すればいいのか?」
 予備試験で若くして合格する方は、上記視点に気付くまでが早いんです。
 司法試験の問題には、出題趣旨がありますが、出題趣旨には上記視点が含まれています。
 出題趣旨をじっくり研究してみましょう。出題趣旨を見ながら答案を作ってみましょう。
 その答案を本試験で書けるようにすること。
 それが合格の一番の近道です。
 
 司法試験の勉強には、必ず挫折するときがあります。勉強が嫌になるときもあります。合格者、法科大学院生、予備試験に向かっている方みんな同じです。
 法律の勉強は、なかなか成果が目に見えないことがありますが、あるとき急にふっと頭に浮かんでくる場合があります。私も今年の試験で、分からなくて悩んでいた際に、ふっと頭に趣旨や規範が浮かんできたことで、きちんと書けた答案がありました。そのような答案は、いずれも「A」評価でした。
 どうか諦めないでください。
そして、何より基礎(条文、趣旨、規範の定立)が重要です。
 最新の判例を追いかけるより、条文と趣旨、規範が大切です。
 法科大学院や予備校に行くとわかりますが、法律マニアが結構います。
 しかし、法律マニアになってしまうと、試験に落ちます。
皆さんは、「知識」よりも」「答案の書き方」を学んでください。
 本当に、知識は、短答に受かる程度で十分ですから。
 
 
【参考書籍】
 私が利用した教科書・参考書です。
  憲法:「憲法事例演習」 大沢秀介・大林啓吾著 
     「憲法演習ノート」憲法を楽しむ21問 宍戸常寿編 弘文堂
 
  行政法:「現代行政過程論」「現代行政救済論」 大橋洋一著 
      「事例研究 行政法」 曽和俊文・金子正史著 日本評論社
      「基礎演習行政法」 土田伸也著 日本評論社
      「行政法判例50!」大橋真由美・北島周作・野口貴公美著 有斐閣
 
  民法:「コアテキスト民法」 平野裕之著 新世社
     「基本事例で考える民法演習1.2」 池田清治著 日本評論社
 
  会社法:「ロースクール演習会社法」中村信男・受川環大著 法学書院
      「会社法事例演習教材」前田雅弘・川崎雅史・北村雅史著 有斐閣
 
  民事訴訟法:「基礎演習民事訴訟法」 長谷部由起子・山本弘・笠井正俊著 弘文堂
        「判例講義民事訴訟法」小林秀之著 悠々社
        「基礎からわかる民事訴訟法」和田吉弘著 商事法務
 
  刑法:「刑法事例演習教材」 井田良著 有斐閣
     「外せない判例で押える答案作成マニュアル3 刑事系」辰巳法律研究所
     「趣旨・規範ハンドブック 刑事系」 辰巳法律研究所
 
  刑事訴訟法:「捜査法演習」 佐々木正輝・猪俣尚人著 立花書房
        「刑事公判法演習」 廣瀬健二 編 立花書房
        「事例演習刑事訴訟法」 古江賴隆著 有斐閣
        「外せない判例で押える答案作成マニュアル3 刑事系」辰巳法律研究所
 
  選択科目:租税法
        「スタンダード所得税法」 佐藤英明著 弘文堂
        「演習ノート租税法」 中村芳昭・三木義一著 法学書院 
        「新実務家のための税務相談(民法編)」山田泰弘・安井栄二編 有斐閣
 
 明治大学図書館で所蔵している雑誌「受験新報」を毎月欠かさず読んでいました。
 「受験新報」は、司法試験受験者を対象とした雑誌で、司法試験や勉強法に関する情報を数多く掲載していますので、ぜひ手に取って読んでみてください。

 

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