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司法試験合格体験記 私の司法試験合格法

山本 皓大
平成26年 明治大学法科大学院卒業

 

1 経歴・法曹志望の動機

(1)経歴

千葉県立幕張総合高等学校→明治大学法学部→明治大学法科大学院未修者コース→川崎市役所市民オンブズマン事務局専門調査員
4回目合格

  
(2)法曹志望の動機

 私が法曹を志望するようになった動機は,漠然としています。高校の時,友達と一緒に性格診断でどの進路が向いているかを診断する適正進路占いのような樹形図を使い,たまたま行き着いた先が法曹でした。それから法曹について具体的に考えるようになり,日常生活の中に法律は常に関わってくることを知り,勉強しているうちにどんどん興味が湧いていきました。そして,アルバイト等をしていく中で,本来あるはずの権利が与えられていなかったり,ルールが守られていないなど,法律を知らないことで損をしている人や泣き寝入りをしている人たちに出会いました。そのような人たちを救いたいと思い,具体的に弁護士になりたいと強く思うようになりました。
 ただし,他の人よりも漠然とした目標だったため,何が何でも受かってやるというような強いモチベーションはありませんでした。そのため,早期合格者のように全ての時間を勉強に使うなど,ストイックに勉強することができなかったのは,合格まで時間がかかってしまった要因の一つだったと思います。
 これから法曹を目指す皆さんには,何が何でも受かってやるというような強いモチベーションを持って全てを勉強に捧げられるようにするため,より具体的な目標を設定することができると良いと思います。

 

2 短答式の勉強方法

(1)自学自習が基本

 私は,1回目の試験では,短答式で落ちてしまいました。ロースクールでは,短答式対策の勉強は授業にはないため,自分でやるしかありませんが,私は,直前期までほとんど短答式の対策をしていませんでした。
もっとも,短答式の分野であっても,授業で一度は触れているはずであり,それを覚えている人は特に対策をしなくても受かると思います。
 しかし,それらができるのはごく一部の優秀な人たちであり,ほとんどの人は対策をする必要があると思います。なお,わざわざ授業で対策をやるものでもないと思います。授業でやるのであれば,せいぜい問題形式の種類に応じた解法のテクニックや頻出の分野の覚え方等に限定するべきです。なぜなら,普通にやってもある程度は解くことができるはずであり,分かっている人にとっては,全ての問題,全ての肢を授業で扱うことは時間の無駄でしかないからです。
 そこで,自分で黙々と過去問を解いていくわけですが,やるのは過去問だけで十分であり,予備校が作成したオリジナルの問題までやる必要はありません。メインの勉強時間は論文式対策であり,短答式対策に多くの時間を割く余裕はないからです。それでも,論文式対策の知識を正しく有していれば6割は正解できます。残りは合格を確実なものとするため,8割を目標に,短答プロパーと呼ばれる短答式頻出分野を潰していきます。

 
(2)具体的な勉強方法

 実際に私が使っていたのは,辰巳法律研究所の肢別本,パーフェクトの2種類です。前者は文字どおり肢ごとの一問一答,後者は実際の試験同様5択等になっています。どちらも体系別に編纂されているため,体系的に理解できるのと,苦手な分野が分かるのが良いと思います。また,解説も比較的シンプルで正確です。
 最近の短答式試験は,新司法試験の過去問だけでは解けない細かい知識が問われているため,新司法試験の過去問のみ掲載のパーフェクトだけでは厳しく,旧司法試験の問題まで掲載している肢別本もやる必要があります。また,憲法と刑法に関しては,判例問題や論理,パズル問題など,肢別本だけでは対応できない問題も出ますので,パーフェクトまでやっておくと良いと思います。もっとも,ここまでやるのは時間に余裕がない人も多いと思いますので,優先順位としては,肢別本全科目(民法→憲法→刑法)→パーフェクト(憲法→刑法→民法)の順でやると実力が付いていいと思います。私は,1回目の試験を短答式で落ちてから,これらの本だけで短答式試験では絶対落ちないだろうという確信が持てるようになりました。
また,肢別本の解き方としては,1肢ずつ解いて,解説をその都度見ていきます。そして,理由まで完璧に答えられるようなものは何回やっても答えられると思いますので,○印(若しくはノーマーク)を付け,2周目以降は全くやりません。次に,正解できたとしても理由が完璧に答えられなかったものは△という印,不正解のものは×印を付し,2周目以降はこれが○印に変わるまで解き続けます。1周目は全部解くので時間がかかりますが,2周目,3周目は見る問題が減るのでどんどん速くなっていきます。全て○印になれば自信を持って良いと思います(問題すら覚えます。)。また,解説等で重要だと思う部分は下線を引き,そこの部分だけは2周目以降も読むようにしていました。
 私は,毎日肢別本の問題を,1周目は50肢,2周目は200肢,3周目以降は600肢ずつノルマを課して解いていきました。1肢解き,解説まで読んで理解するのに約1分かかるので,大体30分から50分かかっていました。どうしても間違えやすい肢は,友人との論文ゼミの最後に1人5問ずつくらいで問題を出し合い,友人から覚え方など工夫している点を教えてもらったりしたこともありました。特に,指差し呼称といって,危険な工事現場などでよくやられる方法ですが,目で見て,指で指摘し,声に出して相手に読み聞かせ,耳で聞くといった方法で,記憶に定着しやすくなるよう工夫しました。
 パーフェクトに関しても基本的に同様であり,毎日1時間ほど時間をとり,1周目は10問(肢換算で50肢)ずつ,2周目以降は1時間で進めるところまでという感じでやっていました。
 これらだけでも短答式対策に毎日約2時間はとられてしまいますが,最低限この程度はやっておくと良いと思います。民法の量がどうしても多くなってしまいますが,このペースで12月あたりから始めても(これらの本が発売されるのがこの時期のため),本番まではギリギリ間に合います。
なお,本番の試験会場では,休み時間に憲法の統治分野,刑法の条文を素読する時間が十分にありますので,直前に条文知識を積め込み,条文問題では間違えないようにしておきましょう(これだけで10~20点は確保できます。)。

 

3 論文式対策

(1)まずは現状を把握する(3パターン分析)

 私は,過去の自分や不合格だった友人たちを見て,不合格者のパターンには3種類あると思っています。
一つ目は,勉強量が圧倒的に足りていないパターン(以下「パターン①」といいます。)で,これは絶対受かりません(短答式で落ちます。)。なお,後述のパターン②と③の両方に該当する人もここに含まれます。これは勉強するしかありません。上記短答式対策で述べた勉強法や後述の勉強法を実践し,最低でも1日6時間以上,週30時間以上,月100時間以上はやりましょう。授業での時間も含めて,合計3000時間以上は勉強時間が必要だと思います。
 それをある程度クリアしている前提で,二つ目は,論点等の理解はあるが,書き方がダメなパターン(以下「パターン②」といいます。)で,法的三段論法が守れていないものです。これはたくさん答案を書き,書き方を知り,必ず合格者やできる人に見てもらう必要があります。そうすれば勝手に受かります。できる人,すぐに受かる人のパターンです。なお,書き方の対策は後述します。
三つ目は,法的三段論法等の書き方,答案の作法等はある程度守れるが,論点の理解が乏しい,あるいは,知っていても問題文の事実からそれを抽出できないパターン(以下「パターン③」といいます。)です。勉強が足りないともいえますが,短答式を通過するだけの知識は有しているので,惜しい人たちともいえます。私は,周りの友人や自分を含め,不合格者には,一番このパターンが多いのではないかと思います。この対策についても後述します。
 自分がどのパターンに属するのかを,再現答案やゼミ等で書いた答案を分析し,現状・敗因を正しく認識・分析する必要があります。不合格者はこれを受け入れるのがとてもつらいですが,これをしないとただやみくもに受験回数を重ねるだけになります。私は,なかなか敗因を受け入れられなかったのですが,3回目の受験失敗後,初めて現状を認識し,敗因分析をしました。そして,1回目受験時は短答式で落ちたのでパターン①,2回目はパターン②と③の両方に該当したので,これまたパターン①,3回目はパターン③に当てはまることが分かりました。当時は合格した友人と同じ内容の答案を書いたのに,なぜ落ちたのかわかりませんでしたが,今思えば落ちて当然の内容だったと思います。

 
(2)書き方の対策(パターン②対策)

 法的三段論法というワードをよく耳にすることはあると思いますが,その中身について,正確に理解していない人が多いのではないかと思います。三段とはいうものの,実際には,問題提起→規範(大前提,A=B)→当てはめ(小前提,B=C)→結論(A=C)というブロックパートで分けると,四段に近い形になります。
 問題提起の部分は,記載してあると読み手に読みやすい印象を与えるので,なるべく1~2行程度で簡潔に述べると良いと思いますが,点数はほとんどないと思いますので,時間がなければ不要です。
 答案を見ていると,規範部分が抜けていたり,当てはめ部分が抜けているものが非常に多いです。どちらかが欠けると法的三段論法にならないので,注意しましょう。
 規範部分は,要件や定義の解釈を趣旨や法益から導き出す部分です。ここでは,理由付けとして,趣旨や法益が必要であり,定義を書く場合は,判例どおり一言一句正確に記載する必要があります(特に刑法。)。現場思考の問題など,事案に応じて,趣旨から要件を解釈して規範を導き出す場合は,趣旨に合致するよう柔軟な規範を立てれば良いです。
 当てはめ部分は,一番配点の高い部分であり,人によって書き方の違いが現れる最たる部分であるため,配点が高いです。そのため,規範1の割合に対し,当てはめは2くらいの割合になるよう意識して,当てはめ部分を多く記載するようにする必要があります。そして,まずは,問題文の事実を細かく引用し(一言一句そのまま書き写す必要はなく,ある程度要約しても大丈夫です。),その事実に対して,必ず自分の言葉で評価を加えるようにしましょう。この評価の部分が肝であり,経験則や判例の言い回しを参考に,評価を加えます。修習に行っても事実認定起案において,この点ができている必要があることを思い知ると思います。語彙が少ない人は,判例の当てはめ部分の言い回しを参考にするのが良いと思います。
結論も点数が振られていますので,必ず忘れずに書く必要があります。
 パターン②の人は,知識はあるのに,以上の内容がどこか抜けていると考えられますので,自分で答案を分析してみて,何が抜けていたのか,その都度確認するようにすると良いと思います。

 
(3)問題点抽出能力の向上方法(パターン③対策)

 このパターンの人は,論点の理解が乏しいため,問題となる事実を見落とし,何を論じていいか全く気づきません。
 まずは,論点の理解をすることが大切です。論点として何があるかは,予備校本や市販の論証集,趣旨・規範ハンドブックなどで十分です。その論点については,何度も読み込み,その論点が出れば,論証をすらすらとコンパクトに吐き出すことができるようにしましょう(合格者のほとんどができます。)。コンパクトに書くためには,長い論証部分の内容を理解した上で,問題との関係で必要な部分と不要な部分を取捨選択できるようにする必要があります。
 その上で,問題をたくさん解き,論点がどのようにして問われるのか,その出題パターンをストックしておくことが必要です。市販の演習本を用いたり,予備校本でも良いと思いますが,大事なのは繰り返し解くことで,論点の出方をストックしておくことです。ロースクールのゼミなどでも1回はやると思いますが,大事なのはできないところを繰り返すことです。
 私は,予備校(アガルートアカデミー)の旧司法試験や法科大学院試験の問題をベースにした問題集(重要問題演習講座)をやって論点の出方をある程度把握できるようになりました。やり方としては,答案を作成するのが理想かもしれませんが,膨大な量ですので,あまり現実的ではありません。論証の吐き出しは,論証集で完璧にしておけば良いので,演習問題をやる際は答案構成のみで良いと思います。そして,解説を見て,自分の構成に足りないところや気付かなかった論点について,なぜ気付けなかったのか,知らなかった場合には知識を補充するなどして,どんどん論点の出方をストックしていきます。私は,短答の場合と同様に気付けなかった論点がある問題のみを繰り返しやるようにした結果,論点の出方をある程度把握できるようになりました。
 以前は論点主義に陥るなと指導し,悪しき論点主義などとして論点の理解を避けるように指導している人もいました。しかし,その人たちは既に論点の理解をできている前提での次のステップの話をしていると私は思います。上位答案を書くにはそれが必要かもしれませんが,単純に受かるだけなら,論点の理解だけを極め,論点をはずさなければ,絶対受かります。私が証明しました。論点は多数の合格する受験生が書いてくるので,そこをはずすと点数が大幅に離れます。みんなができていることができないとだめです。逆にそれさえできれば,現場思考の問題や最新の判例の理解を聞いている問題ができなくても,十分合格点がとれます。

 

4 その他(予備校の講座で良かったものなど)

 長々と書いてきましたが,凡人の私が受かったので誰でも受かります。以上の内容を実践できれば,順位はともかく私のように合格することは可能です。特にリベンジ組の方々は頑張ってほしいです。なお,当然ですので割愛しましたが,過去問は必ずやりましょう。
最後に,いくつか予備校の講座でやって良かったものを記載します。
 
(1)論証集の「使い方」(アガルートアカデミー)

 これは一番重宝しました。総合講義(別講座)の論点がほぼ論証化されていて,これに刑法の構成要件の定義や趣旨,要件など,足りない部分を補うようにして(この補う作業は必須です。),何周もしました。市販でも売っています。また,音声ダウンロードもあるので,移動中ずっと繰り返し倍速で聴いていました。ほとんどの科目がここに記載されている内容で対応できたと思います。
 私は友人とゼミを組んで,論証(太字のキーワード中心に。)が口頭で言えるか,お互いに範囲を決めて問題をランダムに出し合い,テストするゼミを直前期は毎日やっていました。暗記が苦手だった私は,これのおかげで受かったといってもいいと思います。

 
(2)重要問題習得講座(アガルートアカデミー)

 これはひたすら旧司法試験程度の長さの問題を解きまくります。簡単なものもあれば,旧司法試験の過去問もあり,やはり旧司法試験はひねりがあって難しいなと感じました。旧司法試験の過去問を別途やらなくても,この講座だけでだいぶ潰せると思うので,これだけ繰り返せば十分だと思います。問題数が各科目50~65問もあるので,とても全部は書けないと思います。私は,答案例もついていたので,答案構成だけ自分で行い,解説・参考答案を見ながら足りない部分を覚える・理解するという姿勢でやっていました。2周目については,できなかった問題,構成が抜けていた問題だけを中心にできるまでやるようにしました。これは非常に有意義でした。何回やってもできる問題を繰り返しても意味がないので,できない問題をできるまで繰り返しやりましょう。特に民事訴訟法はこれが効いたと思います。

以上

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