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合格体験記 私の司法試験合格法

杉本 真樹

 

1.経歴

2016年 明治大学 法学部 法律学科 卒業
2018年 明治大学法科大学院 法務研究科 法務専攻 既修コース 修了
同年 司法試験 合格
 

2.はじめに

 この合格体験記をお読みくださっている方の中には今司法試験受験生であるという方々が少なくないと思います。そこで、この体験記では、司法試験の勉強をする上で私が意識したこと、その意識に基づいて導き出した勉強方法を可能な限り具体的に述べていきます。ここで述べることが絶対確実なことではありませんが、合格した一つの方法論として参考にしていただければ幸いです。
 

3.法曹志望の動機

 高校生の間に漠然と弁護士になりたいと考えていたため法学部に入学しました。その後、司法試験予備試験の存在を知り大学2年時の5月に1度受験したところ、短答式試験でボロボロに惨敗しました。この悔しさをバネに大学3年時の春から本格的に勉強を開始し、弁護士を目指したことが私が法曹の道を目指そうとしたきっかけです。
 

4.勉強の期間

 2で述べた通り、大学3年の春から主に短答式試験の勉強を開始しました。論文式試験の勉強は、大学4年の予備試験短答式試験が終了した後の6月ころから開始しました。諸事情によりロースクール在学中も長期休暇期間には最後の春季長期休暇を除き勉強時間を確保することができませんでした。
 

5.勉強の方針―論文式、短答式全体について

⑴ 私は、一般的な司法試験受験生と比較して相対的に時間的側面、経済的側面において不利な状況にあると感じました。そこで、日々の勉強では、「常にこの時間で最大の学習をするためには、何をどういった方法で行うことが司法試験合格のために必要か」という観点で学習することを心がけました。また、短答式試験については直前期に仕上げることができなかったため、簡単に後述する程度に留め、以下は論文式試験の勉強方法から述べていこうと思います。
 
⑵ 上述の方針から、まず①司法試験において何を書くことが求められているのか、次に②求められているものを書くためには何を身に着けるべきかという観点で勉強計画を立てました。
 

ア ①司法試験において何を書くことが求められているのかについて
 出題趣旨、採点実感、教授の先生や予備校の解説を見ながら、司法試験本試験過去問の再現答案に書かれていることからどの部分が評価され、評価されないのかという点を検討しました。評価されない部分は、無益な記載と有害な記載(減点)部分まで検討しました。高低各順位を比較することで見えてくる部分もあります。なお、この分析・検討を行うにあたっては前提知識として記載内容の意味は理解できるようにしておく必要があるので、本当の初学者の方はまず入門書や入門講座でこれをできるようにしてから取り組むとよいと思います。
 そして再現答案を分析すると、問題文に対して書くべき論点が見えてきます。論点だけ書けても論点に飛びつく印象を持たれると思うので、論点を展開するまでにどのような思考過程を見せると評価されるのかまで分析します。すると、大きくは「みんなが書けることは書く、みんなが書けない部分は書くと加点事由にはなるが書きすぎると減点も見えてきてリスキーでありそう」ということがわかります。細かくは、形式的な条文操作や、明らかに充足する要件についても触れておき、そのうえで論点についての論証を展開するべきであろうなど司法試験において何を書くことが求められているのかが把握できます。
 なお、この分析は行えば行うほど論文の質が上がる部分だと考えられるところだと思いますので、最初のうちはある程度でとどめ、学習の途中段階で立ち戻り、学習計画を修正することを繰り返すとよいと思います。学習初期では自己の勉強計画の大枠を決める方針を定めるためという意味合いでよいと思います。完璧主義になると進めなくなります。
 
イ ②求められているものを書くためには何を身に着けるべきかについて
 ①で求められている部分を把握したら、これを身に着けるため何が必要かを考えます。ここで抽出した必要事項をすべて充たすものはないと思うので、一つ一つ必要なことを検討するとよいと思います。ここでは全て書くと膨大な量になるため「問題を解いて答案を作成する行為を行うにあたり必要だ」と考えたことを述べます。
 私は、問題において聞かれていることを把握する能力と、これを解いて答案に記載する能力は別のものと考えました。使用したのは市販の問題集と論証集です。
 前者については、問題文から問われてる条文や定義、論点を抽出する能力を養う必要があると考えました。そのため、問題文を見てすぐこれらを反射的に適示できるよう、使用していた問題集にメモを作成し答え合わせをする作業を繰り返しました。
 後者については、さらに論点を展開するまでの過程部分と論証の展開部分に分かれると考えます。過程部分については参考答案がついている問題集を使用し、その参考答案を問題文を見て頭の中で再現できるか繰り返しました。その際、私は参考答案を要素ごとにマーカーで色分けし印象に残るよう工夫しました。例えば青は問題提起、オレンジは定義などです。
 次に、論証展開力については、基本的に判例に基づいて作成されている論証集を利用しました。ここはどうしても暗記に頼らざるを得ない部分でしたので、当該論証中の核となる部分を最初に頭に入れました。核とは、趣旨や定義、規範の部分のことです。そのうえでその規範等を導くために必要な理由付けを頭に入れました。またどうしても長すぎて頭に入らないものは必須の要素は含めるようにして短縮しました。その際、参考にしたのは再現答案です。どこまでの短縮は許されるのかその相場観を養いながらこれを行いました。1周で覚えることは私にはできませんでしたので、ロー3年時11月頃から司法試験当日まで永遠に繰り返しました。移動中、食事中、入浴中もです。また、論証だけ覚えていても実際の試験現場で使用することができないので、どの要件の問題なのか、どの場面で使用する論証なのかまで意識して覚えました。そして、あてはめで必須の要素や認定の仕方も併せて押さえることで、当てはめ部分でブレることがないように意識しました。特に定義や規範との対応関係は意識しました。

 
⑶ 形式面
 文の長さには特に配慮しました。短文を基本とし、同じ意味でより短く言うことのできる単語、表現はないかと日頃から意識しました。字の大きさは可能な限り大きくしました。接続語は決まったものを決まった順序で用いることで、文のつながりが変になることを防止しました。
 
⑷ 現場思考
 再現答案を見て相場観を養いました。その際も、みんなが書けることは何かを意識しました。私は、法的三段論法を死守し、趣旨や定義から論証を展開するなどを意識すればここで落とされることはないだろうと考えました。
 
⑸ 論文の勉強まとめ
 長くなりましたが、どの勉強をするにしても「みんなが書けることが書けるようにするために、自分に何が不足しており、これを補うためには何が必要か。その達成過程として最大限自分の身になる方法は何か。」といった方針は変わりません。
 
⑹ 短答式の勉強方法
 前述の通り、司法試験本番の直前期にまとまった短答の勉強を確保できませんでした。しかし、論証集として用いていたものがほとんど判例の規範等をそのまま掲載されているものでしたので、おそらく短答の問題の中で基本的とされる問題には対処できたのだと思います。また、ロー2年までの予備試験の短答対策として前年度を各分野ごとに体系化された問題集を利用して知識化しておいたものが多少残っていたことにも助けられたと思います。
 もっとも、これは短答の対策は不要という意味ではありません。短答式試験を受験する前も最中も自信をもって答えられるものが少なくとても不安でしたし、短答式試験の結果が帰ってきてからもとても最終合格していると安心できるような順位でもありませんでした。私の勉強開始後直後のように知識偏重に陥り、短答式試験の対策ばかりに時間を使い論文には目も当てられない状態になるのもよくないとは思いますが、対策しないで論文式試験の採点すらしてもらえない状態になるのもその後の学習に著しく悪影響を与えるので学習量のバランスはよく考えた方がいいと思います。
 
⑺ 勉強環境
 体調にはとても気を付けました。特に空腹や体調不良、睡眠不足によりすぐに集中力が途切れてしまう気質がありましたので、内的外的それぞれの勉強環境の整備にも努めました。この体験記を読んでくださっている方の中には、時間のなさによる焦りから睡眠時間をとにかく削って勉強時間に充てる方も少なくないと思いますが、私は睡眠時間不足による生産力の低下は著しいものがあると痛感しました。例えば、睡眠時間1時間減るごとに自分の集中力にどの程度変化があるのか計測してみるなどして私に絶対的に必要な睡眠時間は何時間かと検討しました。このように、自身の最高の体調で勉強を継続することが合格につながるものと考えて勉強していました。これは、5日間という過酷で長い試験本番において自分の実力を全て出し尽くすという意味でも効果があるものと思います。結果、論文式試験については受験後後悔はなく、今年で最後という気持ちにすぐ切り替えることができました。
 

6.最後に

 勉強方法は各人に最適なものがあると思います。しかし、実践してみなければどれが最適かということは分かりません。そして、今はインターネットの普及により勉強方法に関しても多くの情報が溢れています。私のものを含め、中には偶然成功した事例もあるかもしれませんが、いろいろと試してみてご自身にあった勉強方法を確立して頂ければと思います。
 また、司法試験の勉強でご質問がある方はなんでもお答え致しますのでお気軽にして頂ければと思います。司法試験の勉強は大変で辞めたくなる時もあると思いますが、乗り越えた先には大きな成長があると思います。最後までお読みいただきありがとうございました。がんばってください。
 

以上

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