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合格体験記 私の司法試験合格法

菅原 克仁

平成23年4月 明治大学法学部法律学科入学
平成26年3月 明治大学法学部法律学科卒業(三年次早期卒業)
平成26年4月 早稲田大学大学院法務研究科入学
平成28年3月 早稲田大学大学院法務研究科修了
平成28年9月 司法試験合格

1 法曹志望の動機

 私は、昔から漠然と人の役に立てるような仕事に就きたいと考えていました。明治大学入学後は法学会法律相談部に所属し,そこでの様々な活動を通して弁護士という職業に惹かれ、司法試験の受験を決意するに至りました。
  

2 短答式の勉強方法

 司法試験の合格ラインが近年上昇傾向にあること、また、合格ラインの付近には多くの受験生がひしめいていることから、「短答は足切りにならない程度に対策をすればよい」という考えは、もはや通用しません。確実に最終合格をするためには、最低でも140点(得点率80%)以上を目指すべきでしょう。短答対策としてどんな勉強方法を採用するにせよ、それを毎日欠かさず行うことが肝要です。
 私は、短答が非常に苦手であり、直前期まで苦戦させられました。考え抜いた末,最終的には法務省のホームページから短答過去問を印刷し、毎日3科目を1年度分ずつ解き、間違えた問題を体系別の過去問題集に印を付け解説を読むという方法を採用しました。この方法のメリットは、問題集を頭からページ順に解き進めるのと異なり、例えば民法であれば毎日必ず総則から家族法までの問題に一通り触れることができるため、記憶が薄れにくくなるという点にあります。問題集には間違えた問題に印をつけるほか、自ら考えた語呂合わせを書き込むなどして、短答知識を集約させていきました。どの問題集も巻末には年度別にまとめられた正解と索引があるため、そこに印を付けておくと間違えた問題が一目瞭然であり、復習に便利です。

  

3 論文試験対策(総論)

⑴ 基本的な定義・論証を正確に書けるようにする

 「論証パターン」という言葉を聞いただけで嫌悪感を覚える方も少なからずいますが、最低限の論証ができなければ全くもって話になりません。やはり最低限の暗記は必須です。私は、ここでいう「最低限」とは書店等で販売されていて多くの受験生の間で流行している論証集,例えば,『趣旨規範ハンドブック』(辰巳),『工藤北斗の合格論証集』(法学書院)などに掲載されている定義・論証レベルだと考えています。私は上記『趣旨規範ハンドブック』の民事系に直接書き込むなどしました。公法系と刑事系については自作のまとめノートを利用していましたが、それらのまとめノートに穴があってはならないと考え、公法系と刑事系の『趣旨規範ハンドブック』,『工藤北斗の合格論証集』を時折参照し,適宜補充していきました。直前期は、論点のタイトルのみを一覧化させた表を作成し、それを横目に解答用紙に論証を書き続けました。

⑵ 出題趣旨・採点実感,上位答案の分析

 過去問を解いた後に,出題趣旨・採点実感,上位答案を参照する方は多いと思います。その際,「あの論点を書けなかった」,「この事実をあてはめで使えなかった」といったその場限りの分析・反省に終始していては,実力向上に全くつながりません。そもそも,上位合格を狙うのでなければ,書くべき論点を全て書けなくても,拾うべき事実を全て拾えなくても,合格することは十分可能です。
 まずは自らが採点官になったつもりで、出題趣旨・採点実感を用いて上位答案のどの部分が出題趣旨に対応しているのかをチェックし、該当部分にアンダーラインを引いてみるなどの作業をすることで,上位答案が上位答案である所以を探ってみましょう。
 次に,『論文合格答案再現集上位者10人全科目・全答案』(辰巳)に掲載されている上位合格者の答案を徹底的に分析し、そこから自分でも真似できそうな答案作成上のルールを見つけてみて下さい。このシリーズの特徴は、タイトル通り上位合格した方の全科目・全答案が掲載されていることにあり,その人が全科目を通じて自らに課したと思われる答案作成上のルールを浮き彫りにすることができるという点にあります(例えば、見出しを活用する、制度趣旨にやたら言及する等々)。
 これらの作業を通じて,出題趣旨・採点実感,上位答案の分析を通じて,自分にも真似できそうなルールやテクニックをいくつか見つけることができると思います。最終的には,それらを積極的に取り込み、答練や全国模試等で積極的に試し,自分のものとして確立する必要があります。並行して,これまでに自分が犯したミスをメモしておき,同じミスを二度と繰り返さないよう答案作成上の注意事項を箇条書きで作成しておくと後々便利です。注意事項の具体的内容は「仮処分についても言及し忘れない」(商法)といったものです。

 

4 論文試験対策(実践編)-答案の型の構築

 抽象論に終始していてはなかなか伝わらないと思うので,憲法を例にとって出題趣旨・採点実感等の分析を通じて,答案の型を構築していく流れを示したいと思います。問題のネタバレを含みますので,まだ過去問に触れていないという方は読み飛ばしてください。
なお,下記の分析内容はあくまでも私の分析であり,必ずしも正しいというものではなく,分析方法の一助として示したものに過ぎませんので,ご了承ください。

① 出題趣旨・採点実感を読み,採点官の発したメッセージを探す
<平成24出題趣旨>「宗教上の組織若しくは団体」の定義を述べつつ
<平成25出題趣旨>デモ行進の自由…の憲法上の位置付けに関して,憲法第21条第1項の解釈の仕方と関わって,学説は大きく2つの見解に分かれる。そのいずれの見解によるのかを,理由も述べつつ,明らかにする必要がある(=動く公共「集会」とみるか,「その他一切の表現の自由」に含まれるとみるか
<平成27採点実感>条文の解釈(本問では特に第14条)について,これをせず,あるいは,これができていない答案が散見された…条文の表記や解釈を大切にしてほしい
これらの記述を読むと,採点官は「条文文言の定義・解釈を示してほしい」というメッセージを発しているように思える。そうであれば「条文の定義・解釈をしっかりと抑えて,これを答案上に示す必要がありそうだ」という発想に至る。そして,自分の方向性が間違っていないかを確認する意味で,実際に上位答案が定義・解釈を示しているかをチェックし、該当部分にアンダーラインを引いてみたりする。

② 他の年度の過去問を解く際に,①で得た方法が通用するかを確かめる
 早速,他の年度の過去問で「条文の定義・解釈を答案上に示す」ことにする。
 例えば,平成23年…一読して,表現の自由,21条の問題であることがわかるはずである。とりあえず,答案に「表現」(21条1項)の定義を示してみよう。
 「表現」(21条1項)とは,思想・内心を外部に表明することをいう。
定義を書いたのであれば,当然,次は事実をあてはめる作業に移る。パッとあてはめて…と思いきや,本問では「地図情報」が問題となっており,これは「思想・内心」とは言い難い。定義にあてはめることができない,という事態に陥ってしまった。①で得た方法は通用しないのか…と悩んでしまうかもしれないが,実はこの点をどう乗り切るかが本問のポイントなのである。出題趣旨にはこうある。
<平成23出題趣旨>本問の地図検索システムは,X社の思想や意見を外部に伝達するものとはいえない。そこで,当該システムを表現の自由として位置付けようとすると,表現の自由の権利内容の新たな構築が必要となる。つまり,自由な情報の流れを保障する権利としての表現の自由である。本問における判断枠組みに関する最大のポイントは,判例や学説を参考にしつつ,相応の説得力を有する論拠を示して,自由な情報の流れを保障する表現の自由論を論述することである。
 この出題趣旨の記述から,「①で得た方法がダイレクトで通用しない場合には,判例や学説を参考にする」という方法論を獲得することができる。つまり,採点官は,判例や学説を書けと繰り返し言っているが,何も冒頭からいきなり展開しろと言っているのではないということがわかる。そして,この問題点に気が付くためには,①のステップが必要不可欠であることも確認できた。換言すれば,①のステップを踏めば,自然と出題趣旨を捉える,出題趣旨に気が付いているような記述をすることができるということになる。実際に上位答案が,どの場面で,判例や学説を展開しているかも一応チェックする。

③ ①②を通じて,汎用性のある「型」を構築する
以上の分析結果から,憲法の冒頭部分では,下記のような構成,「型」が求められていると考えられる。
  憲法△条は,「○○は…保障する」と規定している。
  「○○」とは,~をいう。
  本問において,~する自由は,…であるから,○○に当たる/当たらない。
  (当たらない場合)判例・学説を展開し「当たる」という結論を導く論理を示す
  そうすると,本問において,~する自由は,…であるから,○○に当たる。
  したがって,~する自由は,○○として,憲法△条によって保障される。

 

5 予備校答練,全国模試

 予備校答練の受講については,個人の好き好きでよいと思いますが,全国模試は自分の立ち位置を知るのに最適だと思うので,受験することを勧めます。TKC模試,辰巳全国模試あたりが規模も大きくお勧めです。当日は、周りの受験生がどのような教材、筆記用具、時計を用いているか等々を探ることもできました。出題された問題はどれもその年の本試験を意識したものとなっており、実際に全国模試で出題された論点が本番でも出題されたりもしました。
  

6 自主ゼミについて

 私は、ひとりよがりな答案になりがちな公法系の過去問を解くゼミと、対策が遅れてしまった選択科目を鍛えるために選択科目の過去問だけを解くゼミをそれぞれ期間限定で設けた以外には、自主ゼミに参加しませんでした。言うまでもなく、自主ゼミを通じて得るものは大きいですが、反面、目的意識を持たずに漫然と行ってしまうと時間の無駄遣いとなるおそれもあります。自主ゼミを組む前にはその点を十分に考慮したうえで決めるのが良いと思います。
 ゼミでの検討対象を自分の苦手な科目に絞り、当該科目が得意な人と自分と同じく苦手な人を集め、短期集中で組むという方式をお勧めします。

  

7 使用した書籍

 基本書は定評のあるものであれば、どれを使用しても大きな差はないと思います。
 演習書は、ひとりでも取り組めるように回答例が付いているものや解説が判例・学説の説明に終始せず問題の具体的検討(あてはめ)にまで踏み込んでいるもの、ロースクールの授業で指定されたものをそのまま使用しました。
  憲 法:小山ほか『判例から考える憲法』
  行政法:橋本『行政法解釈の基礎「仕組み」から解く』
  民 法:松久ほか『事例で学ぶ民法演習』
  商 法:中村ほか『ロースクール演習 会社法』
  民訴法:三木ほか『ロースクール民事訴訟法』
  刑 法:大塚『ロースクール演習 刑法』、佐伯ほか『刑法事例演習教材』
  刑訴法:亀井『ロースクール演習 刑事訴訟法』
  環境法:大塚『環境法BASIC』、越智『環境訴訟法』

  

8 おわりに

 勉強方法は十人十色ですので、勉強の合間に様々な方の合格体験記を読んだり,合格者の話を聞くなどして,それぞれの方法の費用対効果に注目しつつ自分に合う勉強方法を模索してみて下さい。ただ,どれだけ自分に合った良い方法を見つけたとしても,そのことに満足し,実際に行動に移さなければ何の意味もありません。
 明治大学付属明治中学校,高等学校,明治大学と約10年間明治に在籍した者として,今後,全ての明治の学生が司法試験合格の栄冠を掴み取ることを心より願っております。

以上

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