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合格体験記 私の司法試験合格法

佐賀 紘人
函館ラ・サール高校 普通科 卒業
明治大学 法学部 法律学科 卒業
早稲田大学大学院 法務研究科(未修コース) 修了
平成27年度司法試験 短答式試験 不合格
平成28年度司法試験 合格

1.はじめに

 この合格体験記は,「自分は正直,勉強が不得意。でも,絶対に司法試験に合格して法律実務家になりたい。」という方にもっとも読んでいただきたいと思っています。なぜなら,私自身がまさにこのような受験者であったからです。
 よく「天才は99%の努力と1%の才能である」という言い方がされますが,私は「司法試験は99%の学修方法と1%の才能である」と考えています。以下には私の現役時代の失敗をお恥ずかしながら書き,それと対比する形で浪人時代の学修方法をなるべく具体的に示します。私の学修方法が正しいと断言するつもりは全くありませんし,もっと効率の良い勉強方法はたくさんあると思います。
しかし,貴重な時間を使って私の体験記を読んでくださっている方の参考に少しでもなれば,私にとってこれ以上の喜びはありません。
 

2.短答式試験の学修方法

(1)現役時代の失敗

 私にとって,この短答式試験は苦痛以外の何物でもありませんでした。もともと細かな条文を記憶することが苦手ですし,問題を解いていて何度も同じ個所を間違うと,何とも恥ずかしい気持ちになるからです。その結果、ただただ苦手意識が先行し,単に解説付き過去問題集を各科目2周ほど解いて終わらせてしまっていました。
結果,不十分な対策しかできず,不合格となりました。考えてみれば当然です。私は短答式試験を足切り回避のための試験としか考えておらず,真剣に点数を取りにいく努力を怠っていたのです。

(2)浪人時代の学修

 まず,短答式試験に対する意識を変えました。1点でも多く取るために泥臭く学修しようと自分を奮い立たせました。
 学修教材として私は某予備校が出版している司法試験・予備試験短答式試験過去問題集を使用しました。その際,手元にノートを置いて解き,間違った問題番号をメモします。私の場合は,単に正解の肢を解答するだけにとどまらず,その他の肢のどこが間違っているかという点まで合っていてはじめて正解としました。また,解説を深追いするといくら時間があっても足りないので,解説に書かれてあることだけを理解するにとどめました。この際にもっとも大事なのは,自分に厳しくするということです。前述の通り,間違いは恥ずかしいですが,本番で同じ間違いをする方がもっと恥ずかしいのですから。この手順で問題集を1周すると,自分が間違えた問題番号だけがわかるノートが完成します。その後,さらにもう1周初めから解いていき,前回間違えた問題で再度間違えたものについては,色マーカーでノートの問題番号を強調づけます。ここまで終えると,自分がもっとも不得意とする分野が明確になってきます。更にもう1周するのですが,3度連続で正解した問題はその問題集のページを折り曲げ,もう解く必要はありません。間違えた問題は前述同様にノートに強調して記録します。最後に,記録していたノートを見て自分が間違えた問題番号だけを解いていきます。自分が完全に理解したと考えた場合にはノートの問題番号に×印を記入していき,ノートに書かれているすべての問題番号に×印がつくまで繰り返します。
 他に,私は自分の手で紙に書くことで記憶できるタイプだったので,短答式試験プロパーの細かな条文はノートに書き写しました。その際には,試験で問われそうな条文の主体・数字・要件などをマーカーで強調づけることもしました。特に前述過去問題集で何度も間違った条文は必ず手で書くようにしていました。
 更におすすめなのは,条文を声に出して読むことです。条文を知っていれば正解可能な憲法統治分野や民法の親族・相続分野は特に効果的です。私は夜寝る前に,六法を手に部屋の中を歩き回りながら条文を声に出して読んでいました。私は一人暮らしなので心配無用でしたが,ご家族と一緒に暮らされている方は一度ご家族に了解を取ると良いと思います。

3.論文式試験の学修方法

(1)現役時代の失敗

 何よりの後悔は,司法試験本試過去問の研究を怠っていたことです。法科大学院の友人数名で自主ゼミを組んで過去問をフルスケールで書くことはしていましたが,単に書いたことで満足し,ろくに研究していませんでした。過去問を解けない自分が嫌で,怖くて,論述試験対策が後手に回ってしまったことも大きな敗因です。
 また、問題文を見て論点に気づくことに集中してしまっており、条文をおろそかにしていました。加えて、問題文の事実を「使う」ことを「書き出す」ことだと勘違いしており,結論に至るまでの事実の評価を意識していませんでした。
 やはり,点数を取りに行く姿勢に乏しかったと言わざるを得ません。

(2)浪人時代の学修

 私が考える論述式試験の学修は,以下の3点に集約されます。①できないことを恐れず過去問を解いて、出題者が求める解答を研究する,②ひたすら「条文」と「解釈」を意識する,③学修しなくても良い部分の点数を逃さない,ということです。以下に,それぞれの項目ごとに説明を加えます。

 ①できないことを恐れず過去問を解いて、出題者が求める解答を研究する
 ここでいう研究とは,出題趣旨と採点実感を読んで,採点者が受験者にどのような答案を求めているのかを考えることを指します。これは,司法試験は自らの法的知識をひけらかす試験ではなく,採点者が書いてほしいことを素直に書く試験であるという前提に基づいています。
 私の場合は,75分を使って過去問を解きました。内訳は,30分で問題文を読み,残りの45分で詳しめの答案構成,という感じです。その後すぐに出題趣旨・採点実感を読んで、何を書くべきだったかを考えました。その際,自分の答案が求められている解答の流れになっているかを重点的にチェックし,時間を短縮するために出題された論点のこまかな復習はしません。答案の大きな流れとして出題趣旨や採点実感の通りであればひとまずよしとしました。
 同時に,出題趣旨・採点実感を読んで、どんな答案が求められていたかという点・自分が答案作成中に気づかなかった点などをノートに書いていきました。場合によっては,論述式試験の考え方がそのまま書かれている場合もあるので(たとえば,平成20年度や平成23年度には刑事訴訟法の伝聞証拠問題をどのように検討すべきかが具体的に示されています。),この作業は丁寧に行いました。このような手順で各科目を年度ごとに解いていけば,各科目で採点者が書いてほしいことをまとめたノートが出来上がります。しかも,司法試験で求められている論述は新司法試験が開始された昔から現在にかけて何も変わっていないことがわかってくると思います。
 私は,この過程で出来上がったノートだけを論述式試験直前に見直していました。

 ②ひたすら「条文」と「解釈」を意識する
 法律の学修を進めていくと,問題を解いていて自分の知っている論点に気づいた場合,それに飛びついてしまいがちになります。しかし,法律は条文にはじまり条文に終わると考えます。しかも,ほとんどの論点は,条文の文言解釈が起点となっていると思います。そこで,論述においては必要な条文文言を「 」で抜き出し,それを解釈するというかたちで論点を処理するように心がけていました。
 よく,「司法試験は基本が大切だ」などとおっしゃる方がいますが,その肝心な「基礎」が何かまでは教えてくれません。私が考える「基礎」とは,条文を意識することです。条文文言の定義や趣旨を理解し,それを解釈するという姿勢を意識すれば,学修方法も必然的に変わってくると思います。

 ③勉強しなくても良い部分の点数を逃さない
 たとえば,会社法における役員の対会社責任(会社法423条1項)が問われた場合、ほとんどの受験生は「その任務を怠ったとき」という文言を重視して,当該役員に任務懈怠責任があったか否かのみを問題にしようとすると考えられます。しかし,条文を見ると,そのほかに検討すべき文言として,「取締役」・「これによって」・「損害」などの文言があることに気づくはずです。この場合当然,任務懈怠に関する部分が重視されているとは考えられますが,それ以外の文言をあてはめることに1~2点くらい割振られているかもしれません。(民法の採点実感にも全要件を検討する答案が優秀な答案であるとの記述がある年度があります)しかも,これらの文言はとくに勉強が必要なものではなく,ただ単に事実をあてはめることで足りるものばかりです。
 このことは会社法に限らず、どの科目にも言えます。司法試験の論述式試験は選択科目を入れて7科目あるので,仮に各科目で2点底上げできるとします。それだけで14点の点数アップが可能です。しかも、論述式試験の点数は総合点数を計算する際に1.75倍されるので,24.5点も底上げできることになるのです。司法試験は1点を争う試験ですから、約25点の違いがどれだけ大きな影響を与えるかは想像に難くないと思います。
 このように,ちょっとした意識だけでも周囲との差をつけることは可能です。1点でも多くかきあつめるという貪欲な姿勢も大切だと思います。

4.その他意識してほしいこと

(1)精神面の健康

 司法試験は長時間かつ長期間の学修を必要とし,本番も5日間に及ぶ長時間の試験です。なので,積極的に息抜きをして,心の健康を保つ必要があると思います。私は週に1度はほとんど勉強しない日を作って出かけたり,すきま時間に外に出て歩いたりしていました。いくら学修を積み重ねても,それが当日発揮できなければ意味がありません。ぜひ学修だけをするのではなく,自分なりの息抜きを積極的に行ってください。

 心の健康は重要なので,息抜きをしている自分自身に負い目を感じる必要はないと私は思います。

(2)周囲への感謝

  司法試験は一人で乗り越えられる試験ではないと考えています。私は,金銭面や精神面で支えてくれている両親,学修の相談や雑談ができる友人,私を理解してくれる恋人,その他私の挑戦を応援してくださった多くの方々がいなければ司法試験の合格はありえなかったと確信しています。特に浪人時代は,先に合格したロースクールの同期や立派に自立して働く学部時代の同期を見ていたので,「私の将来は大丈夫だろうか」・「私の選んだ道は間違いだったのだろうか」と悩み,心が折れそうになることが多々ありました。
 そんなときにも支えてくれて,最後の最後で私の背中を押してくれたのは,私の周囲の方々でした。ぜひ,孤独に試験と戦っているという意識は持たず,支えてくれる周囲の方々に時には頼り,そして感謝を忘れないでください。

5.さいごに

 私のような若輩者が長々と思ったことを書き綴ってしまい,失礼いたしました。途中意味が分かりづらい箇所があったり,無用なアドバイスになったりしている個所もあるかと思いますが,私の生の声を読んでくださっている方にお伝えするような体験記を意識した結果ですのでご容赦ください。
 私は,司法試験に合格できたこと,そしてこの体験記を書かせていただけることに心から感謝しています。この体験記を,司法試験に合格したいと願うすべての後輩と私を支えてくださっている皆様に贈ります。

 以上
(H28.10.7執筆)

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