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合格体験記 私の司法試験合格法

69期 丸山 彬
明治大学法科大学院(既習)2012年卒

平成27年度司法試験合格

 

1 はじめに

 私は、経済学部から、明治大学法科大学院(既習)を経て、4回目に合格しました。他学部で合格に時間がかかった分、失敗と分析を重ねたので、ここでそれを少し還元できれば幸いです。
 

2 短答式の勉強法

 短答式では、第一に、肢を確実に切るための基礎知識を増やすことが大切です。なぜなら、瞬時に確実に切れる肢があれば、選択肢を効率よく絞ることができるからです。そこで、私は、情報を択一の過去問に絞り、それを何度も繰り返し、骨太の基本知識を抑えるという勉強方法をとりました。
 第二には、制度を比較して、体系的に理解することが大切です。上記方法を用いても、最後の1つを絞れないことが少なくないです。そうしたときは、断片的な知識から一歩引いてみて、制度の体系的理解からアプローチすることで、相対的に肢を絞れることが多いです。そこで、私は、基礎知識を条文ベースの参考書に書き込んで一元し、それをスピーディーに反復する中で、似たような制度を比較し、体系的理解を深めました。これをせずに、すべてを断片的知識で対応しようとすると、知識は膨大にあるので、非効率的だと思います。
 

3 論文の勉強法

⑴ 目次
 改善した点は多岐に渡りますが、「基礎部分と応用部分の区別」、「チェックシートの利用」、「国語力不足」、「ベテラン受験生の勉強法」の4点を書きました。
 
⑵ 基礎部分と応用部分の区別
 司法試験は平均的な守りの答案の方が遥かに合格しやすいと思います。なぜなら、本試験は、半分程の点数で受かるという特殊な試験であり、残り半分には難しい応用部分が含まれているところ、時間内に効率よく安定的に合格点をとるには、応用部分ではなく、基本部分で点を稼いだ方がよいからです。受験生の中には、理由は様々ですが(性格も関係すると思います)、応用部分に力点を置いてしまう人がいます。そのような答案は、確実に点を稼げる基本部分が薄く、応用部分が当たれば点が高く、外れれば点が低いという不安定な答案になっていることが多いです。8科目もある試験で、このような答案を書いていると、必然的に合格する確率が低くなるでしょう。私も応用部分に挑み続け、模試等で一定の科目だけ上位の点をとって、満足してしまっていた時期がありました。そうした失敗を経て、漸く意識改革をして、基本部分で点を稼ぎ応用部分では攻めすぎない守りの答案を書けるようになりました。
ア 基本部分
 答案を書き終わったら、すぐにコピーして、2色(基本の色、応用の色)のマーカーを持ち、自分が書いた記述の中で、基本を書いている部分と現場で試行錯誤した応用を書いている部分とを簡単に色分けしました。そして、参考答案も同じようにマークした上で、両方の基本部分を見比べながら、自分の記載した表現が正確であるかを確認しました。
 論文における基本部分が何かについては諸説あるかと思いますが、参考までに、私は、択一の過去問解説や予備校の論証等で頻繁に見かける基本的条文・制度、その趣旨、要件・効果、有名判例の規範及びそこに至る理由等がそれにあたると思います。これらを正確に再現する(見せかける)には、「キーワード(特有の言い回し等)」を正確に再現するのがコツです。こうした基本となる部分は、理解したら一元化して、とにかく血肉になるまで気合で反復するしかありません。急がば回れです。自分は、2,3回くらい回した程度で、やった気になっていましたが、合格者らが試験前に十数回まわしていたという話を聞いて、恥ずかしくなったことを覚えています。
イ 応用部分
 応用部分とは、上記のように基本知識を吐き出す部分ではなく、現場思考を要する部分だと思います。ここは、内容が正解であるか、ではなく、基本的な法的思考・作法を遵守して、「端的」にかつ「論理的」に書けたかを確認します。基本的な法的思考・作法についても色々ありますが(科目ごとに差異もありますが)、例えば、条文や文言の適示、原則による帰結、不都合性や問題の所在の指摘、趣旨に立ち返って考えること、反対利益に対する配慮、三段論法等がこれにあたると思います。時間の制約との関係で、応用を攻めすぎると他にシワ寄せがくるため、長々と書かずに端的に書いた方が望ましい場合が多いと思います。
以上のように、基本部分と応用部分をきちんと分けて考えているか、曖昧になっていないか確認してみてください。
ウ 参考答案の活用
 応用部分の正解までを追っているうちは、参考答案の一部の応用部分の記載だけを見て、自分も同じように書けたかということだけに目が行きがちです。しかし、これまで述べたように、大切なのは、時間と記述量の制約がある中で最もリスクの少ない安定した構成・バランスで書けたかどうかです。従って、参考答案は、サッと数通目を通し、かつ、答案全体で比較するのがポイントです。こうした観点で参考答案をみると、一見中身が薄いなあと思う箇所でも、時間の制約や他とのバランスの関係で、現場ではそうせざるを得なかった理由が見えてきます。このメリハリが、合格者の多数派の感覚とずれていなかったかを意識的にチェックしてみてください。その意味でうまく逃げられている答案などを発見すると、分析も楽しくなると思います。
なお、参考答案は、現実的な分量で合格平均点くらいの答案が望ましいです。
 
⑶ チェックシートの利用
 前は気を付けていたけれど、不覚にも今回は忘れていたという失敗を数えきれないほどしました。全科目でみれば、相当の点数を損していることになります。これまであと数点で涙を流した人は少なくないはずです。そこで、私は、「チェックシート」なるものを作成し、答案を書く15分前には必ずそれを見て留意点を意識付けし、答案を書いた後も真っ先にそれをチェックすることを習慣づけました。
シートの中身としては、自分がよくミスする点、忘れがちな採点実感からの要求、上記(1)の応用部分における思考手順等がメモしてあり、答案を書く度にこれを修正・更新していき、本番時に、最も凡ミスしない自分を作るように努めました。上記作業を重ねていけば、単に答案を書いて答えを見ていた自分と比べて格段の違いがでてきますし、何よりこのシートは精神的にも頼もしい相棒となりました。
 
⑷ 国語力不足
 司法試験に合格するためには国語力、すなわち読解力と文章力・論理力が必須です。厄介なのは、合格者の中には、国語に苦手意識がある人は少なく、この点のアドバイスがなかなか見当たらないことです。私は、国語が苦手故、色々分析したので、少しだけご紹介します。国語ができる方はご容赦ください。
ア 読解力
 最近の試験問題は、昔と比して長文であり、その中に誘導やヒントが書かれています(当事者の生の主張部分が、方向付けのヒントになっている等)。そのため、読解力不足は、そこそこ致命的だということを認識してください。
 私は、せめて問われていることや誘導に正面から答えることでそこをカバーしようと努力しました。例えば、問いや誘導をマークしている人は少なくないと思いますが、それに加えて、上記チェックシートを利用する等して、試験の開始時、答案を書く直前、答案を書いた後に、設問を読み返し、チェックマークを3つ付けるという手順を恒常化しました。また、誘導にも、様々な種類・質があることに気づいたため、各誘導ごとに色やマークの大きさを少し変える等の工夫もしました。自分は、最後、行政法が得意でしたが、こうした成果が反映されていたのもその理由の一つだと思います。
 また、文章を、じっくり読む前に、接続詞や指示語などに着目して、文章の内容を予測するようにすると読むのが早くなると思います。当たり前かもしれませんが大切です。
 最後に、文章に触れた絶対量が足りていない人(自他ともに認める)は、はやり演習量を増やして慣れるしかないのかなと思います。余談ですが、私も、行き詰ったことがあり、何とかしようと思って、試験の合否を待っている間に、試験と関係のない本を50冊くらい読んだところ、次年度(合格年)は読解があまり苦にならなかったような気がします。
イ 文章力
 文章をうまく書けない人は、とにかく参考答案の書き方を真似るといいと思います。答案を何通も分析すると、流れのいい答案には、試験特有の一定の型があることに気付きます。例えば、使っている接続詞は限られてきます。また、明確な文章は、主語が短く句読点で区切られていたり、一文が短く一センテンスであったり、理由や結論を書くときに直前の言い回しが統一されていたりと様々な工夫が発見できます。どんどん真似て、吸収して、文章力を高めましょう。
ウ 論理力
 まず、文章の論理が全体的に緩い方は、構成をしっかりすべきです。書いている途中で止まれば止まるほど、全体の論理がブレがちです。結論を決めて、一気に書くのがコツだと思います。
 個人的に苦戦したのは、もう少しミクロの、論理の間隔・幅の調整です。自分は当初から論理的な文章を書こうという意識はありました。そのため、ゼロベースで論理的に書いていくのですが、どうしても記載量が多くなりすぎてしまったり、逆に分量を気にすると論理が飛躍してしまったり、そのバランスに苦戦しました。試行錯誤の末、少しわかったことは、司法試験ではできるだけ論理の幅を均等にしてあげた方が印象がよいということ、また、その幅は、スタートとゴール地点の設定(距離)及びそこに費やせる記載量(容量)で必然的に決まってくるということです。例えば、同じ距離であれば記載量が減るほど論理の幅は開きます(又は抽象度が上がります)。また、同じ容量でも、距離が開けば論理の幅は開きます。従って、大切なのは、まず設問や誘導を確認して、どこから書き始めることが求められているか(終わりはわかりやすいと思います)を的確に把握することです。また、その距離を書いていくにあたり費やせる時間と記載量がどのくらいになるか目途を立てることだと思います。後者について、私は、(自分が答案1枚を何分程で書けるか把握している前提で)構成し終えたら、設問や書くテーマごとにランク付けをして、それぞれの基礎部分と応用部分に約何ページさくことができるかを簡単に計算して(例えば、答案を8枚中「6枚」書く人は、設問の配点に「0.6」をかけると、そこの分量の目安がわかります)メモしていました。構成用紙自体を折って8つに分けて、視覚的にも答案のように構成することで書く分量を調整するのも同様の効果があると思います。最初は、少し時間を要しますが、訓練すると、イメージがついて、場面ごとに最適な論理の幅で文章を書けるようになってくると思います。例えば、よく言われる評価というのも、抽出した事実と規範の論理の幅が常識的に考えて遠い場合に、その間に一つ架け橋をかけてあげるということであり、その幅がそもそも近い場合には、評価は不要だと思います。
 
⑸ ベテラン受験生の勉強法
 定番の勉強方法は、過去を解き、出題趣旨・採点実感を見て、できなかったところを確認するという流れ作業です。ところが、この勉強方法は、何度もまじめに過去問を検討した人ほど、徐々に効果が薄れ、むしろ弊害になっていきます。すなわち、上記作業を繰り返すと、出題趣旨等の答えがインプットされてしまいます。そうすると、再び過去問を解くときに、無意識的に、そのインプットされた知識を前提に、結論がわかった上で答案を書くようになります。
しかし、こうした解き方は、初見の未知の問題にゼロベースで挑むという本番の状況とはかけ離れてしまっており、全く実践的な練習になっていません。それにもかかわらず、こうした答案は、出題趣旨に沿えているから、添削等で良好と判断されてしまい、順調であると錯覚してしまいます。そして、いざ本番、未知の問題に遭遇すれば、実践的な訓練をしていないことから、必然的に撃沈することになります。
 このような事態を防ぐため、過去問を何度も回した受験生は、過去問演習の仕方を変えなければなりません。上記の通り、出題趣旨の中には、できなくてよい応用部分が含まれています。こうした応用部分まで追って、完全な答案を目指すようになると危険です。大切なのは、過去問をゼロベースで思考し、基本部分と応用部分を見極めて、守りの答案が書けたかです。上記(1)のような思考ができているか確認してください。
 

4 気分転換

 前に進むのであれば、ストレス等に嘆くだけでなく、それを速やかに解消する手段を模索するしかないと思います。私は、頻繁に30分カラオケに行っていました。忙しくても行けるのでお勧めです。その他にも、スポーツ選手やオリンピック選手のモチベーション維持の方法を本で学んで試しました。聞くだけで、癒される、やる気が湧いてくるお気に入りの曲もできました。そして、何より、閉鎖空間に閉じこもるのではなく、様々な人とのつながりを大切にすることで、結果として、そうした人達に支えられていたのだなと改めて感じています。
 

5 最後に

 司法試験は、精神的にとてもつらい試験ですが、一方で、失敗を学んだり、自分の限界に挑戦する絶好の機会です。自分を大きく成長させる手段として味わい尽くす。このくらい前向きでいきましょう!頑張ってください!

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