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合格体験記

永井 健三
 
四五六法律事務所
〒102-0094
東京都千代田区紀尾井町3-29
NGA紀尾井町ビル3階
電話 03-3221-1456
 
明治大学法学部卒業 1998年 旧司法試験合格
第1 はじめに

 私は旧試験の合格者ですが、旧試験も新試験も司法試験が求めるものは同じだと先輩に言われ、確かにそうかなと思い、何かの役に立てばと思ってこれを書いてます。読者の方は適宜取捨選択してもらえばと思います。

 

第2 勉強方法

1 基本書の読み方

 基本書については、一人の学者の本を何度も読め、という先輩もいましたが、私は、特に民法では、複数(2~3冊)の薄い本を並行して読むことが役に立ちました。
 複数の本を並行して読むと、どの本にも必ず書いてあることが頭に残ります。それは往々にして簡単な日本語のため、つい読み飛ばしてしまうようなものです。例えば、「民法は人の労力を目的とする契約類型を三つ用意している」という内容です。もちろん三つとは、雇用、請負、委任ですが、この三つがどういう関係にあるのかを把握することが民法の理解にとても有益です。このような争いのない簡単なことを正確に理解して、それを正確に積み上げることが民法全体の理解につながります。また、こういう思考方法は他の法律の理解にも役立ちます。【複数の薄い本を並行して読み、争いのないことを正確に積み上げる】
 そもそも民法の構造自体に争いはありません。論点の争いは、全体を構成する各パーツのとらえ方によることがほとんどです。いいかえると、動的安全・静的安全や意思自治をどこまで貫くかなどの利益考量を民法のどのパーツの組み合わせで行うかが民法の論点と思います(もっとも民法の全体構造そのものに批判的な論者が論点を混迷させていることもあるのでその点は注意)。だから、論点は、全体像を理解したうえで検討しないと意味がないと思います。【民法の全体構造に争いはない。論点は、利益考量をどのパーツの組み合わせで行うか】
 しかし、一人の学者の本だけを読むと、本によってはその学者が一番言いたいこと(自説)の記述に力が入っているため、読むほうもそこにとらわれて全体を把握できなくなる危険があります。勉強を始めたころの私がそうでした。こういう勉強をすると、ある論点について○○説はどうで××説はどうで、という議論には強くなるけど、これが進めば進むほど合格からは遠ざかると思います。司法試験はそんなことは聞いておらず、まず全体像の理解を聞いていると思うからです。
 なお、覚えるのではなく理解しろ、条文から考えろ、と言われることがありますが、全体像を知らない初心者が条文を読んだだけで理解するのは困難です。全体像がおぼろげながらでもわかってくると、条文から考えることもできるようになり、さらに全体像の理解も深まる、というのが私の経験です。【条文から考えるには全体像の把握が必要】
 そうはいっても、その理解自体も容易ではありません。その一助になるのが、択一の過去問です。私は、過去問を分野ごとに説いて、自分で解説が書けるくらい基本書を読み直すなどして(その時は詳しい基本書も読んだ)、法律の理解が深まりました。【択一過去問の利用】

 
2 短答試験の勉強法

 私のころの短答試験は、憲、民、刑各20問合計60問で、だいたい7~8割(42~48点)とれば大丈夫でした。なので、全問正解する必要がなく、したがって試験対策も教科書の全範囲を勉強する必要はありませんでした。
 司法試験が聞きたい内容は過去問を解けばわかるので、試験対策としてはその範囲をおさえれば足ります。例えば、民法なら、親族、相続の範囲で出題されるものはほぼ決まっていたので、直前の試験対策はその条文だけ抑えればよく、それ以上手は広げません。逆に頻出する箇所は絶対間違えないように正確に理解して、かつポイントとなる点はメモにして直前にそれだけを見直せば済むようにしました。例えば民法94条2項の第三者は過失が必要かというような点です。最近の問題を解いてないので恐縮ですが、かつての択一試験はこのようなあいまいな点の正確な知識があるだけで、他の選択肢が切れて正解に達する問題が多かったと思います。憲法でも、一見すると国会法の条文知識を問うような問題でも、基本的な憲法(判例)の正確な知識があればほかの選択肢に惑わされることなく正解に達することができる問題だったと思います。その点で、予備校の解説に「国会法〇条に○○と書いてある」とあって国会法の知識まで必要と思わせるようなものもありましたが、少なくとも私はその必要を感じませんでした。だから国会法の勉強などしたこともありません。【10の曖昧な知識よりも1の確実な知識】
 なお、私が択一の勉強で指針としたのは、ある人が言っていた「まんべんなくやろうと思うとまんべんなく不安になる。」ということです。択一は7~8割(60点中42~48点)得点すればよく、頻出箇所の知識が正確ならそれで7~8割は取れる、それ以上欲張ると失敗する、というのが私の択一試験に対する姿勢でした。そして7~8割のうち、民法は、頻出箇所を正確につぶせば9割(20点中18点)、刑法は8割(16点)くらいはとれるので、憲法は6~7割(12~14点)でよくて、わからない問題は全部2にしておけば確率的に何問かは正解になるので大丈夫、というくらいの感覚でした。そのくらいの感覚で択一試験の勉強も民法と刑法各論の頻出範囲に時間を割いていました。【頻出分野は絶対に落とさない。まんべんなくやろうと思うとまんべんなく不安になる。】

 
3 論文試験の勉強法

 論文試験の勉強は、過去問を書いて友人らとゼミをすることでした。互いの答案を読んで言いたいことが伝わらなかったり、論点の理解が間違っていたり、あるいは良い点を参考にして、論点の理解を深め、論文での展開の仕方を考えるなどしました。
 なお、ゼミで使う問題は過去問でした。答案練習会などの問題は題材にしていません。過去問をずっと解いていくと、司法試験が聞いている点はかなり絞られていて、同じことが手を変え品を変え聞かれており、それは本当に基本的なことの正確な理解を問う問題、という印象です(ちなみに、このゼミを組んだ人はほとんど合格しました。)。【過去問をやれば司法試験が聞きたいことはわかる】
 ところで、論文試験は時間内に一定量を書くことが必要です。その点で、その問題が本当に聞きたい論点に到達するまでの前提となる論点は簡単に片づけておくことも必要です。前提論点の記述に手間取っていると本丸に到達する前に時間切れとなる危険があります。そのため、典型論点は1~2行で簡単に書けるようにあらかじめ準備しておくことも試験対策としては必要と思います。
 私はこれを怠ったために、本丸まで行けずに時間切れになったこともままあったので、この点は四の五の言わずにとっとと準備しておくべきだったと反省しています。【典型論点は短く書けるように事前準備】
 少し話は変わりますが、私の知人で、憲法が苦手でいつも憲法の論文で失敗していたため、憲法はC答案でいいと開き直ってC答案ばかり集めて(昔は予備校が本試験のA答案、B答案、C答案、などを受験生に再現させて販売していた。)、「なんだ、この程度でいいのか」と納得して、それ以上のことを書こうとせず、それで合格した人がいました。それを聞いて私は、みんな工夫しているなあ、と思いました。【多くは望まない。受かるための工夫を】

 

第3 おわりに

 私が司法試験を始めたときは、まさか自分が受かるとは思わず、モラトリアムの隠れ蓑として司法試験を利用しているような状況でした。いろんなアルバイトをしていて、そっちに時間を使って勉強は適当でしたが、合格した年は何かスイッチが入って論文試験前の数週間でしたが自分でもよくやったと思うような試験勉強をして合格しました。ただ、合格してみると私よりはるかにハードな社会生活をしつつ合格している人も結構いて、自分は甘かったと反省しました。【モラトリアムの隠れ蓑では合格は難しい】
 当時の自分に何か言えるとすれば、もっとちゃんと向き合って真剣に努力しろ、早く受かったほうが世界は広がるし、面白いこともたくさん経験できるよ、ということかと思います。
 皆さんの不安や悩みのほとんどは、多くの合格者が同じように経験したことだと思います。司法試験はやり方を間違えなければ必ず受かります。ぜひ頑張ってください。【不安や悩みはみな同じ】

以上

 
 

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