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合格体験記 私の司法試験合格法

髙城 尚暉
2022年明治大学専門職大学院法務研究科既修コース修了者

 

1. 経歴

 2016年4月帝京大学入学
 2020年3月同大学卒業
 2020年4月明治大学専門職大学院法務研究科入学
 2022年3月同研究科修了
 同年司法試験合格 総合670位
 

2. 法曹への志望動機

 私は高校生のころから法曹になることを目指していました。当時は、漠然とかっこいいから等といった軽い動機でしたが、大学で法学を学びながら、福島原発訴訟の原告団やハンセン病訴訟等の社会的に弱い立場に立たされている方の話を聞くうちに、弱い立場に立たざるを得なくなった方たちに寄り添いたいと思うようになり、法曹になることを決意いたしました。
 

3. 短答式試験の勉強法

 私が短答式試験の対策を本格的に始めたのは、2022年1月ごろからです。短答式試験では、論文では出題されないような細かい条文の知識が問われることがあります(民法や憲法の統治など)。そのような問題には短期記憶力で対策するのがコストパフォーマンスがよいと思いましたので、受験をするギリギリまでは短答の対策というような勉強はしてきませんでした。
 短答式試験の対策としては、過去問を周回するという勉強をしました。各科目を全ての年度ごとに解きましたが、この肢はこっちの年でも出ていたなという頻出問題がありますので、そのような正答率の高そうな問題は絶対に間違わないようにする一方で、短答式固有の細かい問題の重要度は下げて解くといった、メリハリをつけた解き方をしていました。また、民法などは条文が重要になってきますので、判例六法を使って条文と当該条文に関係する重要判例の判旨をリンクさせて覚えるというやり方で短答式試験は対策をしました。
 

4. 論文式試験の勉強法

⑴ 論文式試験において求められているのは、法及びその解釈論の知識と理解と共に、具体的な事実関係を分析し、その事実に規範を適用する能力と論理的な思考力及び記述力です(令和2年度司法試験刑事系科目第一問出題趣旨より)。したがって、法規範の提示及び事実の適示・評価は車の両輪の関係にあります。時たま、規範の理由付けは不要である、新司法試験はあてはめ勝負である等という話を聞きますが、法の解釈論を疎かにしてはならないことは、司法試験の出題趣旨などからも明確であります。また、司法試験は実務家登用試験ですから、まず大事にすべきは条文であり、真っ先に理解するべきは判例が示した法規範です。そして、試験の答案で展開するべきなのは判例の法規範であることは言うまでもありません。
 
⑵ 次に、その法解釈論・規範はどのように勉強すればよいのかが問題となってきます。判例は特に理由付けをすることなく法規範を示したりするなど、舌足らずなときがあります。したがって、判例が示した法規範の文言をただ暗記しているだけでは、判例を正確に理解したとは言えず、表面のみしか理解していないことになります。また、特に憲法や行政法、民事訴訟法などは本試験で判例の射程が及ぶか否かを検討させる問題が出題されます。そのような問題に対して、覚えてきた論証パターンをただ書き写しているだけでは、判例をちゃんと理解しているのかと採点官に疑問を抱かせるのではないでしょうか。
 したがって、ここで重要なことは、判例の学習方法は、単に文言を暗記することでは足りず、判例の思考プロセスを分析し、その思考プロセスを理解することであると考えられます。
 
⑶ では、判例の思考プロセスはどう学べばいいのかについてです。これについては、基本書や判例解説などの文献を読み、論点に対して深く考察し、深い知識を身につけなければなりません。もっとも、基本書であれば何でもいいというとそうではなく、判例に対して内在的な分析を試みている基本書が望ましいのは言うまでもないでしょう。学者の先生方の執筆されたものは学問的に面白いのですが、前述のとおり、司法試験では判例が最重要であり、学説上の少数説を学ぶ優先度は低いです。したがって、司法試験の対策としては、判例に対する考察が多い基本書を利用するべきです。判例の分析があるうえで自説が述べられている基本書は、まさに学習効果が高いでしょう(後述する高橋宏志先生の重点講義民事訴訟法は重厚な内容でありますが、判例の分析および学説の整理がなされており、民事訴訟法の理解に大いに役に立ちました)。また、そのように自分の頭で考え、理解した知識は簡単には忘れないものです。ただむやみに暗記をするのではなく、一から自分の頭で考え、本物の思考力を身に着けるためにも、基本書での学習は重要だと考えています。
 
⑷ また、司法試験の過去問を解く必要性は非常に高いです。いくら法規範を理解したからといって、それが答案に書けなければ自己満足で終わってしまいます。また、本試験では、事実の適示及び評価、及び記述力も求められていることは前述した通りです。本試験の問題は、答案を作成するのに必要な事実関係しか記載されておらず、問題としては最高の素材です。したがって、過去問を解き、自分の法解釈の理解、事実の適示の仕方などを出題趣旨や採点実感などと照らし合わせて学習することで、本試験でも通用する文章力も同時に鍛えることができます。また、本試験では過去問と似た論点が出題されることがありますが、過去問を解いておけば、見たことのある論点ということで答案を書きやすいでしょう。もっとも、何度か出題されている論点については、他の受験生の完成度は高いといえるので、適当に解くだけでは足りず、出題趣旨や採点実感を読み込み、自身の答案の完成度を高めなければなりません。以上の観点から、過去問はぜひ一度は解くことをお勧めします。
 
⑸ なお、選択科目については、私は三年次から倒産法を履修し、そのまま選択科目として受験をしましたが、倒産法は条文が細かく、手続き全体を理解するのが精いっぱいで個別の論点に対する勉強まで手が回りませんでした。私の経験から選択科目については、二年次からの勉強をお勧めいたします。
 

5. 最後に

 よく言われるようなお話で大変恐縮ですが、法律の解釈学において条文は重要です。条文のどの文言の解釈をしているのかが分からなければ、地に足のついた解釈論は展開できません。したがって、普段の学習から六法を手元において、逐一条文を引くことをお勧めします。また、これも月並みな話ですが、司法試験は諦めないことが重要です。私は、本試験の一日目の出来があまりに悪く、二日目以降は試験場に行くのをやめようと思ったほど、ホテルの部屋で落ち込んでいました。しかし、二日目以降の問題は比較的筋を外さずに解答することができましたし、結果的に合格することができていました。試験は最後まで何があるか分かりませんから、最後の最後まで諦めず、全力で合格に向けて勉強に励んでいただきたいと思います。
 繰り返しにはなりますが、司法試験は暗記の試験ではありません、どうか暗記ではなく、自分の頭で考え、未知の論点に対応できる思考力を磨くことを意識した勉強を心がけていただきたいです。
 最後に、私が使用していた基本書類を列挙いたしますので、参考になれば幸いです。
 
 憲 法:新四人組、NBS、憲法判例の射程、精読憲法判例
 行政法:櫻井橋本、大橋、塩野、行政法解釈の基礎
 民 法:佐久間(総則・物権)、松井(担保物権)、中田(債権・契約)、リークエ(不法行為・親族)
 商 法:田中、紅白本、江頭
 民 訴:高橋概論、高橋重点講義、新堂
 刑 法:基本刑法、応用刑法、西田
 刑 訴:酒巻、判例講座刑事訴訟法。事例演習刑事訴訟法
 倒産法:伊藤、山本

以 上

 

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