明治大学法曹会 司法試験合格体験記
山村皐樹
2023年 明治大学法学部卒業
1 経歴
私は2023年3月に明治大学法学部を卒業し、4月から明治大学法科大学院に入学しました。そして2024年11月、法科大学院在学中に司法試験に合格しました(1回目)。学部3年生の4月から司法試験の勉強を始めたため、約3年半で合格したことになります。
2 司法試験の成績
憲法A 行政法A 合計115.85点 512位
民法B 商法B 民訴A 合計170.97点 584位
刑法A 刑訴A 合計127.68点 162位
経済法 64.53点 28位(648人中)
論文総合 479.04点 260位
短答 127点 976位
総合成績 965.32点 294位
3 短答の勉強方法について
(1)教材
使用教材は短答パーフェクトです。短答対策の教材はいくつかあるかと思いますが、私は他の教材と比較したことはありません。自分に合う教材を極めるという意識であれば、教材の種類は問わないと思います。
(2)勉強方法
繰り返し何度も解くというシンプルな方法です。得意な科目、分野は2周程度、苦手な科目、分野は4、5周と解きました。本番を想定して、一問1、2分程度で解くことを意識しました。間違えた問題に関連する条文の素読、結論を導くための理由の確認を繰り返し行い、知識を定着させました。
4 論文の勉強方法について
4. 論文の勉強方法について
(1)基本
私は、各教科で定評のある基本書を通読する、百選、基本書を照らしながら論証を作る、過去問を起案する、という3つの勉強方法だけを行いました。基本書の通読については、全教科の基本書の総ページ数を一周したい期間(例えば合計8000ページを2ヶ月半で読みたい)で割り、1日あたり読むページ数のノルマを決めるなどをしました。
(2)技術面
ア 論文で要求される力は、①論点が分かる②論点が拾える③論点が書ける、の3STEPだと感じました。自分が3STEPのうちどの段階が出来ないのかを把握して、勉強することが重要だと思います。
3STEPのうち、事前に準備しておくこと、すなわちインプットの必要があるのは①③の段階であると考えていました。
①の段階については、知識が不足していることを意味するので、基本書や百選を読み、定義、規範、規範を導くための理由・条文や制度の趣旨、根拠を1つずつ丁寧に確認しました。インプットの際には六法で勉強している論点に関わる条文を読み、条文のどの文言の解釈の話をしているのかを確認しました。
③の段階は、一見すると事前に準備する段階でないとも思えます。しかし、各論点の処理パターン、検討ファクターは決まっています。本番で、いちいち問題になる論点の書き方を1から考えて答案を作る時間はありませんから、自分が使うと決めた論証を確立させること(論証を導く理由も含め、何を検討するのかをしっかり理解しておく)、検討手順に従って自然に手が動くように答案の型を準備しておくこと、が非常に重要だと感じました。
もっとも、私は論証を丸暗記をすることはあまりありませんでした。各論点について、なぜ論点化しているのか(問題の所在)を理解した上で、重要なキーワードをいくつか頭に入れておくという方法をとっていました。論証丸暗記だと、試験本番で頭が真っ白になって何も出てこないという事態が起こる危険があると考えていたこと、時間の無い中で覚えた論証をそのまま書いていては時間が足りなくなること、出題の趣旨、採点実感で紋切り型の論証に対する指摘が再三されており評価を下げる要因になりかねないと考えこと、が上記のような暗記の仕方をした理由です。
②の段階については、練習をしないと、論点を知っていても短時間で論点を拾い切ることが出来ないと感じます。2時間を測り、緊張感を持って過去問演習を繰り返すことが必要です。
イ 加えて、多くの論点が散りばめられている論文試験を2時間で書き切るためには、メリハリのある論文を書かなければなりません。
そこで私が意識したのは、①どこに点数が振られているのかを把握すること②書かないと差がつく論点、書かなくても差がつかない論点を見分けることの2点です。
①については、問題文で厚く事実が記載されている箇所、判例と事案をずらしている箇所、典型論点を捻ったような応用論点の論述をする際には、趣旨や根拠から記述し、丁寧に三段論法で答案を作ることを意識しました。一方で問題にならない論点はサラッと流す、時間が足りない場合は当てはめと規範を混ぜる形で記載してしまう、などメリハリをつけました。
②については、ある論点について周りの受験生が書いてくるのか、それとも誰も書けそうにないのかを判断することが重要だということです。難解な論点が出題された場合、正解筋を書くことは期待できません。したがってその論点に時間をかけたとしても点数は伸びませんし、他の受験生も同様に点数が入るような回答は作れないので差はつきません。一方で多くの受験生が高い精度で書ける論点は、若干曖昧な論述をするだけで、他の受験生に書き負けてしまいます。そのため高難易度の論点は、必要以上に時間をかけず、悩んだ形跡を答案上に残すことを目標にし、多くの受験生が書ける論点は、趣旨、規範、当てはめ、結論の流れを綺麗に示すことを意識しました。論点の難易度が自分で判断できない場合は、ぶんせき本を読んだり、ロースクールに教えに来てくださる補助講師の弁護士の方に確認して、相場感を身につけました。
(3)精神面
ア 論文の勉強で一番嫌だったのは、2時間を確保して解かなければいけないことと明確な答えが無いことでした。過去問のほぼ全ての年度を複数回解き、2時間で解き切るためのスピード感や、決めた方針からブレることなく、最後まで自信を持って論述をするという意識を養いましたが、この作業は根性で乗り切りました。
イ また論文は添削を受けることが必須ですが、出来ないところを人に晒すのは恥ずかしいですし、添削を受けるたびに大量の赤ペンが入った答案が返却されると心が折れそうになりました。慣れるまではとても辛かったですが、不合格になる方がもっと辛いと自分に言い聞かせることで乗り越えることができました。また赤ペンが入るほど合格に近づくチャンスをもらえたと前向きに考え、添削を受け続けることができました。
5 その他
早期合格を目指す上で、時間にはシビアに生活することを心がけました。
まず、自分の現状・課題を把握して、いつまでに何をどれだけやるのかを短期目標、長期目標に分けて、スケジュールを立てました。勉強をこなしていくうちに新たな課題が見つかるので、頻繁にスケジュールは更新しました。
次に、勉強時間を確保しました。ロースクールに進学してから司法試験までの一年半の間は、平日は7時20分登校、21時前下校、土日は9〜10時登校、20時半下校を継続しました。
最後に、勉強以外の時間を削りました。YoutubeやSNSのアプリは消し、学校にいる間はスマホをロッカーに閉じ込めました。また一年半は趣味の時間や友人等との時間は厳しく制限しました。早期合格のためには、何より勉強最優先で生活を送ることが大事だと思います。
6 最後に
司法試験はごく一部の天才だけが受かるのではなく、失敗を重ねながらすべき努力を着実にこなしていけば、十分に合格するチャンスがある試験だと思います。今、司法試験の勉強の真っ最中の方も、司法試験にチャレンジしようか悩んでいる方も、失敗を恐れず、たくさん起案して、たくさん指摘されて、その指摘をもとに全力で努力するということを心がけて、ぜひ合格を掴み取ってください!!
7 使用教材
・憲法
憲法学読本(メイン)
芦部憲法
・民法
民法の基礎(総則、物権)
担保物権法(松井宏興)
プラクティス民法債権総論
基本講義(契約、不法行為)
リークエ(親族、相続)
新問研・紛争類型別
・刑法
基本刑法(総論、各論)
応用刑法(気になる部分のみ)
刑法事例演習教材
・会社法
紅白本
・民訴
リークエ
瀬木民訴
・刑訴
事例演習刑事訴訟法(古江、論証の9割以上はこれを元に作成)
判例講座(捜査・証拠編のみ、気になる部分のみ)
酒巻刑訴(ほぼ読んでない)
・行政法
櫻井橋本行政法
行政法解釈の技法
行政法解釈の基礎
行政判例ノート
・その他
百選:民法ⅠⅡⅢ(親族を除く)、憲法ⅠⅡ(統治除く)、会社法、民訴、刑訴(古江本が取り上げていない論点のみ)
ぶんせき本
趣旨規範ハンドブック(自作した論証の一元化のために使用)
以上