合格体験記 私の予備試験合格法
古田 雄飛
2018年11月 予備試験合格
2019年 9月 司法試験合格(合格順位54位)
(1)予備試験受験の動機
法曹を志望した動機については、すでに司法試験合格体験記に書かせていただいており、重複する内容となるためこの場では予備試験を目指した動機について語らせていただきます。
私は、法科大学院最終学年のときに予備試験に合格しました。そのため、予備試験合格による受験期間の短縮という予備試験のメリットを受けていません。しかし、私はその場合であっても予備試験は積極的に受けるべきであると考えていました。
なぜならば、私は予備試験が司法試験における自分の学習到達度を図る最も正確な指針であると考えていたからです。
予備試験の短答式の問題は、その年の司法試験の問題と同一の問題が多く出題されています(予備試験の方が、試験科目が多いので、司法試験と被るのは3科目だけになりますが)。また、予備試験の出題者採点者と司法試験の出題者採点者も基本的に同一です。
そのため、本番(司法試験)と同じ問題意識を持つ人々に、本番の水準を意識して、採点を受けることができます。そして、論文で採点を受けることで、本番に向けて自身の学習が不十分だった科目についても把握することができます。
上記の内容については私の推測も混じるため、どこまで合格との関係性があるかは定かではありませんが、予備試験合格者の司法試験合格率が非常に高い水準で推移していることをふまえると大きく外れていることはないかと思います。
予備試験の受験料は、17500円となります。短答試験に不合格の場合、論文式試験の採点はされないため、短答式試験のみの受験料となってしまいますが、論文式試験まで受けれた場合には、一般的な資格試験予備校の模試の受験料よりもはるかに安く、そして、司法試験と同じ採点者に採点してもらえます。
さらに、学部生の方であれば、予備試験は資格試験に該当するため、(現在は制度としてあるかは不明のため確認していただきたいですが)明治大学の資格助成金を利用することもできるため、実際にはさらに安く受けられることが想定されます。
本来の制度趣旨とは異なることは重々承知しておりますが、私個人の考えとしては、やはり予備試験を受験することは費用の面のほかに自身の学習の到達度を図る大きな指針となると考え、予備試験を受験しました。
(2)短答式試験について
短答式の勉強方法ですが、基本的には司法試験の短答と同じ勉強方法になります。すなわち、選択肢ごとに出題されているいわゆる肢別本を中心に、問題を解き、間違えた問題をつけて、次の周では間違えた問題のみを解くということを繰り返すというものです。
また、予備試験独特の注意としては、司法試験では憲法民法刑法の3科目だけですが、行政法刑訴法民訴法商法(と一般教養)が加わり、短答で解く問題量が多いということです。
そのため、問題集を全科目一周するだけでも相当な時間がかかります。したがって、予備試験の合格を本気で目指すのであれば、短答の勉強はかなり以前から計画的に進めていく必要があります。論文式試験には短答式試験に合格しないと受けることすらできないということを考えると、年明けからはかなりの勉強の比重を短答に傾けるぐらいでもいいように個人的には思います。
最後に、私は、個人的に一般教養が得意でしたので、一般教養の対策についても触れたいと思います。
まず、一般教養自体を科目として勉強することは効率が悪いのでおすすめしません。しかし、一年か二年分くらいの過去問は解いてみることを勧めています。
ここでは必ず英語の問題を見てみてください。そして、自分の実力でスラスラ解けるかどうかを判断してください。スラスラ解けると思えた人以外は、本番では英語の問題を完全に捨てる方が良いと思います。
予備試験の一般教養は、3つに分類できると考えています。1つは、現場思考(+義務教育レベルの知識)で解ける問題。2つ目がセンター試験レベルの問題。3つ目が大学レベルの専門知識を要する問題になります。
私自身は、致命的に英語ができないので噂レベルになりますが、予備試験の英語は、センターレベルを超え分類的には3つ目にあたる問題が多いようです。
一方で、予備試験の問題の中には、一見すると2や3の分類に思えても、丁寧に問題文を読むと(ある程度の推理は必要とされるものの)中学程度の知識で解ける問題が混じっています。
予備試験の一般教養である程度の点を取るためには、この分類1にあたる問題を如何に取りこぼさないかが重要になってきます。そのため、英語で得点できる自信のある人以外は、時間のかかる英語を完全に捨て、自分の知識で解ける問題がないかを選択肢一つ一つを吟味して時間をかけて見つけることが重要になってくると思います。
そのうえで、大学受験の経験などを通じて自分がセンターレベルの問題をどの程度解けるのかを判断し、おおよそ何点程度が本番に期待できるかを把握して、法律科目で何点取る必要があるかを逆算しておくべきだと思います。
(3)論文式試験について
「論文の解答用紙の裏表を間違えない。間違えた場合には、裏表逆と答案用紙に書く」これにつきます。予備試験の論文で一番重要なことです。絶対に忘れないでください。何故ここまで書くかといえば、私が実際に裏表逆に書いたド阿呆だからです。実際に裏表逆の答案であっても採点されないということはないかと思いますが、間違いに気づいた際には相当な動揺があります。
私は運よく最終科目である民事系でこのミスをしましたので、後の試験に影響を及ぼすことはありませんでしたが、やはり裏表逆で不安な日々を過ごすというのは非常に切ないものがありますので、間違いのないよう気を付けていただきたいです。
予備試験における論文式の勉強方法についてですが、個人的には定評のある問題集をやりこむことがいいように思います。
司法試験の過去問を検討するという方法もありますが、司法試験ではかなり問題文の量が多いので、予備試験対策という意味では短めの事実からきちんと法律論、要件検討を構成する能力を身に着けることを優先するべきです。そして、論文式試験終了後から、司法試験に向けて長文問題当てはめ能力を鍛えていくというルートを取った方が良いように思います。法解釈や判例の規範等、法律論の基礎的な能力については、予備試験と司法試験で異なることはありませんし、共通して試験対策の根幹をなすものですから、最終目標である司法試験との関係でも、まずは問題集などで基礎を身につけることが重要であり、予備試験対策という意味でも有用であると考えます。
(4)口述式試験について
気楽にいってください。9割受かる試験です。というメンタルが本番ではなにより重要です。口述試験ではある程度試験官が誘導してくれますので、ガチガチに緊張してしまい、試験官とコミュニケーションが取れなくなることが一番不合格の要因になると考えています。実際の合否の判定基準がどこにあるかを私は知りませんが、個人的には、民事は訴訟物を正しく言え、要件事実の説明ができれば受かる!刑事は構成要件間違えずに挙げられたら受かる!ぐらいの気持ちでいました。完璧に答えようという意識を持ちすぎない方がいいかと思います。
勉強方法についてですが、私は、民事については、新問題研究と大島眞一先生の完全講義民事裁判実務の基礎を繰り返し読みました。また、刑事については、構成要件事実をともかく復習し、口頭で説明できるよう勉強していました。
また、一度は模試を受けてみることをおすすめします。おそらく殆どの受験生が経験のない方式の試験ですので、全体の流れや雰囲気を味わえると、本番の緊張が和らぐと思います。
(5)まとめ
予備試験も制度が変わりあと少し経つと選択科目も出題されるようになるため、どれだけ私の合格体験記が役に立つかは分かりませんが、一人でも多くの方が予備試験そして司法試験に合格していかれることを願っております。
以上