合格体験記 私の司法試験合格法
稲垣 政信
明治大学法学部法律学科2005年卒業
1.経歴と法曹志望の動機
私が法曹を目指したのは、多重債務者や中小企業の倒産を救う弁護士のテレビを観て、弁護士として社会の役に立ちたいと思ったからです。大学の講義では民法や刑法は難しく、司法試験を漠然と受けようかなと思っていた私には重い腰を上げるのに時間がかかりました。アルバイトばかりしていましたが、ようやく4年生の時に勉強を始め予備校にも通い始めました。卒業後は就職せずに旧司法試験を数回受けるも、短答式で不合格が続き、ロースクールに行くことに決め、法政大学法科大学院に既修者として入学しました。今年4回目の受験で合格できました。
2.短答式の勉強方法
旧司法試験に比べて現在の司法試験の短答式の問題は基本的な知識が問われることが多いため、基本書が読めてその意味が分かる段階になれば、肢別の問題集を解ける実力はついているはずです。私は短答式の過去問が掲載されている肢別の問題集を繰り返し解くことで実力が定着し、受けた4回とも短答式は通過しました。分からないところがあれば基本書にもどって確認すればよく、短答式のために基本書を通読するなどの時間が役に立ったという感覚はありませんでした。肢別の問題を、答えと理由が一瞬で答えられるまで解きまくることだと思います。また、自分の得意でない分野や論文式であまり問われないところ(憲法の統治・民法の家族法・刑法の刑罰など)は付箋を貼るなどして弱点を徹底的に無くすことで自信もついてきます。特に民法の短答式の知識は論文にも直結しますので、早めに8割以上の正答率を獲得できるまで実力をつけることが大事だと思います。試験本番が近くなれば肢別だけでなく、本試験同様(5肢から選ぶ・刑法の組み合わせ問題など)の形式の問題も解いて本番の感覚(時間配分・解く順番など)を持つことが必要となります。
論文式の勉強との兼ね合いとしては、頭の冴えている午前中から夕方は論文式、単純知識が問われる短答式は夜の1時間位という感じで並行して勉強していました。
3.論文式の勉強方法
基本的な演習書で問題の解き方を学んだ後は、過去問をやることだと思います。私は論文で3回落ちていますが、過去問をやることで科目ごとの答案の書き方や問題文の読み方、周りの受験生の合格答案の水準がわかるようになり、今年はそれによって合格することができたと思います。また、どんな問題が出ても一応の水準をどの科目でも書けるようにすることが大事かと思います。それには、自分の不得意な科目が何かに気づき、それを無くすことが必要です。また、時間をはかって実際に手を動かして書くことも大事です。これによって時間配分や問題文の読み方・解く順序など、本番と同じ状況を作り出せるため有益かと思います。論文式は、科目ごとに書き方や問題への対処の仕方がありますので、私は科目ごとに自分なりのルールを作って試験場に持っていき、試験開始直前に見返していました。基本書や演習書は、手を広げすぎずに何度も繰り返し、不足した情報は逐一追加していくことで時間の短縮にもなりますし、知識が安定します。
4.その他合格に役に立つと考えている方法
私は3回とも論文式で落ちており、論文式の改善が急務であると感じていました。それには、科目ごとに良い成績で合格した先輩に自分の答案を見てもらい話を聞くことが大事だと思います。そして、そういう先輩の話を素直に実践することが大事です。
また、本番の試験を常に意識することが大事だと思います。当たり前のことですが、基本書にマーキングすることやまとめノートを作ること、資料収集することが試験本番で求められているのではなく、①短答式で正しい正解を選べること、②合格答案を書けること、が求められています。不合格の続いた3年間の私の勉強方法は、このような形式的な勉強が多かったように思います。①と②ができるようになるには何が必要か、という観点から外れた勉強をすると合格に時間がかかるかと思います。
私はアルバイトをしていたため、今年の試験勉強を本格的に開始できたのは1月でした。今までで一番勉強時間を割けませんでしたが、逆に、ない時間の中で合格するためには何が必要かと真剣に考えて、①②から逆算して勉強し、今年合格できました。
ロースクール卒業後に専業受験生になれない方もたくさんおられるかと思いますが、限られた時間のなかでの勉強方法としてこの合格体験記が一助となれば幸いです。