明治大学法学部法律学科2009年卒
明治大学法科大学院(既修コース)2011年卒 H.M
平成27年度司法試験合格
1 はじめに
平成27年度の司法試験に合格したH.Mと申します。
私は、法科大学院を卒業した後、司法試験に3度不合格になり、一度、受験資格を喪失しました。その後、平成26年4月から、地元の県庁で一般行政職員として勤務しておりましたが、法改正により、受験資格の制限が法科大学院卒業後「5年以内・3回」から「5年以内・5回」に緩和され、再び、受験資格を得た今年度、4回目の受験で合格することができました。
2 法曹志望動機
小学生の頃、たまたま図書館で、「弁護士になるためには」といったタイトルの本を手に取り、弁護士は正義の味方であるということ及び司法試験は最難関の試験であることを知りました。その頃から、漠然と弁護士になることを夢見ていました。
そして、私が明治大学法学部に入学すると、知人や親戚から離婚、相続、交通事故、破産等に関する質問をよく受けるようになったのですが、大学に入りたての私の知識ではそのような質問に答えられるはずもありませんでしたし、法曹資格がなければ、実際に手助けをすることはできないと感じましたので、本気で司法試験に合格して、弁護士として人の役に立てる仕事がしたいと思うようになりました。
3 法科大学院在学中~1回目の受験
(1) 法科大学院2年
毎日の授業には出席していたのですが、あまり予習復習に力を入れておらず、成績はひどいものでした。先に合格した友人の多くは、法科大学院の授業の予習復習をしっかりと行い、優秀な成績を収めていることから、司法試験の早期合格のためには、法科大学院の授業の予習復習がとても大切であると考えています。
(2)法科大学院3年生
夏休み頃から、本格的に司法試験の対策を始めました。短答式試験については、配点が低いことから、合格者平均点を取ることを目標にしており、高得点は目指さないことにしていました。結果は、1回目から3回目の受験では、合格者平均を少し超えるぐらいの点数がとれました。
どのような勉強をしたかというとまず、短答式試験の過去問を解き、出題された条文及び判例について、判例六法に集約するという作業を行いました。その際、繰り返し出題されている問題には特に目立つように印をつけていました。そして、受験直前期である3月から5月にかけて、書き込みのされた判例六法を復習することにしました。法科大学院を卒業してからは基本的に、短答式試験の勉強は、判例六法を読み返すことしかしていなかったので、一度合格レベルの力をつけてしまえば力の落ちにくい試験なのではないかと考えています。
論文式試験対策については、友人数名とゼミを組んで、2時間の制限時間内に、過去問の起案を行い、ゼミのメンバー同士で添削・講評しあうということを行っていました。友人から自分の答案に対する貴重な意見をもらえる場であったはずなのですが、自分の考え方に固執し、友人の意見に耳を傾けなかったため、弱点を克服するに至りませんでした、謙虚に人の話を聞けば良かったと後悔しています。なお、一緒に答案を書いた友人の多くは私よりも早く合格しています。
このような中で迎えた平成23年度の司法試験でしたが、本番、途中答案を連発し、2100番台で不合格になりました。
4 2回目の受験
法科大学院を卒業してからは、昼間はアルバイトをして、夜に勉強をするという生活スタイルに変わりました。1回目の試験の結果があと数点で合格だったこともあって、次は合格できるだろうと油断しており、勉強を本格的に再開したのは年明けでした。
短答式試験対策は判例六法に書き込みをしていたので、それを直前に見直すことしかできませんでしたが、1回目の受験同様、合格者平均点を数点上回ることができました。
論文式試験については、1回目の受験直前はインプットに重きを置いた勉強をしていたせいで、答案を書くカンが鈍っていたという反省から、答案をたくさん書きました。素材は過去問と問題集、予備校の答練の問題を利用しました。多くの未知の問題に取り組めたのは良かったのですが、書きっぱなしにしてしまい、書いた答案についての反省を怠っていたような気がします。
このような中で受験した2回目の試験は2300番台で不合格になりました。選択科目(倒産法)が100点満点中33点と極端に落ち込んだことが直接の敗因でした。
5 3回目の受験
2回目の受験時の反省から、アルバイトは控え、両親に泣きついて生活費を工面してもらい、法制研究所の固定席を借りて毎日朝から晩まで勉強していました。
短答式試験の対策は1、2回目同様、直前の判例六法の読み込み以外行っていません。もっとも、3回目の受験時は初めて全国模試を受験したので、その復習はしました。なお、模試の成績はA判定でした。
論文式試験対策は、制限時間内に答案を書き、添削・講評しあうゼミに参加し、前回の反省から、復習に力を入れました。しかし、知識や内容面の反省に多くの時間を割き、試験に役に立たないような細かい知識ばかり追い求めていたような気がします。
そのような中受けた3回目の試験も2300番台で不合格になりました。刑事系が200点満点中70点と大きく落ち込んだのが直接の原因でした。
3回目の合格発表は、1、2回目の合格発表よりも自信があったので、法務省まで直接合格発表を見に行きました。自分の不合格と受験資格喪失の事実を知ったときは、ショックのあまり、掲示板の前から動くことができませんでした。そして、その日から約2週間後、住み慣れた東京から地元に帰ることになりました。
6 予備試験・最後の司法試験(社会人になってからの受験)
(1)予備試験受験
私は、平成26年4月に地元の県庁に一般行政職員として採用され、社会人としての生活が始まりました。当時は「法科大学院卒業後5年以内・3回」という受験資格制限があったので、私は平成26年度の司法試験は受験することができませんでした。しかし、どうしても法曹への夢を諦めきれなかったので、予備試験を受験しましたが、短答式試験は余裕をもって合格することができたものの、論文式試験でわずか、0.6点差で不合格となりました。
(2)最後の司法試験
法改正により、受験資格が緩和されたため、再び受験資格を得た私は、仕事の傍ら、司法試験の勉強をしておりましたが、仕事が多忙で、勉強に集中できない時期もありました。また、夜は仕事で疲れ切っていて勉強ができない日が多かったので、朝5時に起きる生活に切り替えて、勉強時間を確保しました。昼休みも職場で30分程度勉強していたと思います。さらに、仕事が終わって家に帰ると、横になってしまい、そのまま寝てしまうことが多かったので、直接家に帰らず、カフェで1時間程度勉強していました。試験勉強においては勉強時間の量よりも、勉強内容の方が重要だということは当然のことですが、時間は有限であるので、使える時間から可能な勉強内容の計画を立てました。
短答式試験については、平成27年度から7科目から3科目になるということでしたが、時間がなかったので、平成25年及び平成26年度の過去問を解いて、判例六法に書き込みをするということを行うことしかできませんでした。
論文式試験については、これまでの試験で全て、大きく点数が沈んだ科目があったことから、全ての科目でそこそこの点数、具体的には100点中50点を取ることを目標にし、法務省の発表している出題趣旨及び採点実感を読み込み、合格者の再現答案の分析をしました。その結果、合格者の答案には私の答案と違って、以下のような特徴があることがわかりました。
・思考の流れがわかりやすい。
・未知の問題に対して、自分なりに考えたことを分かりやすく表現できている。
・規範を定立する際に、理由が書かれている(たとえ短いものでも)。
・配点が高そうな問題点とそうでない問題点について、論述の分量のメリハリがついている。
・過去の出題趣旨及び採点実感で指摘されていたことが答案に反映されている。
・上位答案でも、出題趣旨及び採点実感に完全に沿っているわけではない。
・途中答案が少ない。
・設問に答える姿勢が強い。
・意味不明な記述が少ない。
これらのことは言われてみると当たり前のことですが、私は当たり前のことができていなかったことに気が付き、自分の答案を修正するための勉強をすることにしました。
そして、自分の答案を客観的に分析する必要があったので、友人(明治大学法学部卒・平成26年度上位合格)に答案の添削を頼んで、コメントをもらっていました。答案に対するコメントには厳しいものが多く、時には自信を失いそうになりました。しかし、自分の合格のためにあえて厳しいコメントをくれた友人の期待に「合格」という結果で応えたかった私は必死に食らいつき、自分の答案が劇的に変化したという手応えを感じることができました。常に友人が私に言ってくれたことは、知識は十分に足りているので、その知識を使ってしっかりと考え、考えたことを答案に表現することが大切だということでした。
このような勉強をして迎えた最後の司法試験は、短答式試験144点、論文式公法系約105点、民事系約165点、刑事系約110点、選択科目(倒産法)約55点で、総合順位は900番台で合格することができました。
(3)社会人の受験について
上記のとおり、社会人受験生は時間がないので、ほかの受験生よりも不利な点がたくさんあります。しかし、司法試験に合格するためには、勉強量より勉強の質が重要であると思うので、今振り返ってみると、さほど不利ではなかったと思います。それどころか、行政実務を通じて、毎日条例や規則を運用するだけでなく、条例や規則の制定にも携わっていましたので、司法試験の役に立つこともたくさん経験させてもらいました。行政職員としての激務をこなし、司法試験に合格できたことは大きな自信になりました。
また、私は、職場の上司・同僚のサポートがあったので、とても恵まれた環境にあったと思います。司法試験は中日も合わせると5日間に及ぶ試験なので、5日間連続で仕事を休まなければ受験することができないのですが、職場の上司・同僚が気持ちよく送り出してくださったので、必ず「合格」という結果で応えたいと思っていました。
7 最後に~これから受験される方へ~
平成27年9月8日16時過ぎに法務省のホームページで自分の受験番号を見つけ、長かった私の司法試験受験生としての生活は終わりました。澄んだ青空が涙で少し霞んで見えました。
私はこれまで、両親・先生方・職場の方、友人など、多くの方に支えられてきました。今後も感謝の気持ちを忘れずに、人の役にたてる法曹になれるよう、日々努力していきたいと思います。
また、私が司法試験に合格できたのは、明治大学法学部と法科大学院の環境のおかげであると感じています。施設等も重要ですが、素晴らしい先生方、先輩方、友人たちに必死に食らいついているうちに合格できました。
そして、私が司法試験に合格するまでには大学受験の浪人時代、法科大学院卒業後からの浪人時代、公務員時代とたくさんの苦労がありました。そのような中でも、司法試験を辞めたいと思ったことは一度もありませんでした。仮に今年不合格になっても、予備試験を受験して、再び司法試験を受験しようと思っていました。司法試験合格方法の一つの例として、上記のように長々と書かせていただきましたが、司法試験の合格のために最も大切なことは、「諦めないこと」であると考えています。司法試験はとても難しい試験です。今、大学又は法科大学院での勉強に行き詰っている方、不合格を経験し、来年度の司法試験の合格を目指されている方、仕事をしながら受験勉強をされている方、合格したいという気持ちが強い方ほど今はとても苦しい時間を過ごされていることと思います。しかし、その苦しみを乗り越えたとき、これまでの人生の中で最も美しい景色が広がっているはずなので、司法試験に合格し、法曹になるという夢をどうか諦めないでください。
以上