合格体験記 私の司法試験合格法
山田 まどか
明治大学法科大学院未修コース2012年卒
平成27年度司法試験合格
私は、2012年に明治大学法科大学院未修コースを卒業し、今年、4回目の受験で司法試験に合格いたしました。合格までに3回もの不合格を経ましたが、これから受験に臨まれる方々に、私の敗因分析が参考になればと思い、筆を執りました。
1. 大学入学から法科大学院卒業後、1回目の受験まで
私は、千葉大学法経学部法学科に入学し、体育会系弓道部に所属していました。冠婚葬祭以外は毎日、仲間と道場で練習し、大会や合宿などに追われていたため、学科の勉強は全くしていませんでした。試験前に友人からノートを借りて暗記して臨む、という姿勢だったため、「代理ってなに」レベルで大学を卒業しました。
私が大学を卒業した2009年頃は、法科大学院が出来てまだ日も浅く、法科大学院に入れば夢だった検察官になれるだろう、という浅い意識で明治大学に入学しました。法科大学院在学時はそれなりに勉強し、2年に上がる前から司法試験のことは意識し、過去問を解いたりしてはいました。しかし、そもそも刑法の構成要件がいえなかったり、代理の要件がいえなかったり、と基礎に問題があったため、過去問を見ていただいた弁護士の先生に「まだ解くのは早い」と言われたことを覚えています。法科大学院在学時は① 旧司法試験の民訴を解いて弁護士の先生に添削してもらうゼミ② 同じクラスの仲間たちと憲法・会社法・民訴等、問題を解くゼミ③ 重要判例を直近5年分ほどつぶすゼミ④ 新司法試験の過去問を解いて弁護士の先生に添削していただくゼミ等、様々なゼミをしておりました。ただ、今振り返ると、自分に択一を突破するほどの基礎力がない状態でゼミに臨んだため、意味がなかったと思います。また、④ については、自分の基礎力のなさが露呈するのが嫌で一人でやっていましたし、時間を図って解くこともせず、採点実感も読まず、という方法でしていたので、正直、意味がないゼミだったと、今ならわかります。
このような学生時代を送って初めての受験を迎えましたが、結果は択一足切りにあいました。
2. 1回目の不合格後、2回目の受験まで、そしてその発表
択一で足切りにあったときのメリットは、勉強を人より早く始められることです。しかし、デメリットは、論文で自分がなにを失敗したのかよくわからないことです。私も、このデメリットには悩みましたので、辰巳で過去問答練を受講しました。この過去問答練を受講したおかげで、添削や点数から自分が全体の中でどの位置にいるのかが明確になり、何の科目が合格に遠いか明確になりました。ですので、択一で足切りにあった方には、このような予備校の過去問答練を受講したり、合格者に過去問を添削してもらって点数をつけてもらう、という方法をお勧めします。
ほかの勉強方法としては、まだ7科目の択一があったときでしたので、「択一突破=最低限の基礎能力があること」と思い、択一の勉強を中心にしながらも、① 各科目ごとにやるべき演習本を決めて、それを友人たちと解いておりました。このゼミをやることで、アウトプットしながらインプットもでき、また7科目やっていましたので、1週間で7科目は触れられるというペースメーカーにもなり、良かったと思います。また、② 民法、会社、民訴、刑訴の判例百選を二人でつぶすゼミもしておりました。これは、お互いの担当を決め、自分の担当部分は、事案と判旨、学説の対立、判例の思考を15分ほど、口頭で相手に説明するというものです。口頭で説明するということは、その判例について理解していないとできないことですので、判例の理解や、派生事項への理解が深まり、これもやってよかったと思います。そのほか、③ 旧司法試験や新司法試験の過去問を起案して集まって添削結果を指摘しあうというゼミもやっておりました。このゼミにより、答案の書き方や癖を遠慮なく指摘してもらったので、勉強になりました。ただ、時間を決めずに、だらだらゼミをしていたため、一日つぶれたこともありました。時間は有限ですし、受験生同士で議論してもらちが明かないので、1時間で終わらす、というように時間に制限を設けてやればよかったと思います。
このように、2回目に臨む年はゼミ中心の生活をしながら、アルバイトもしており、時間が非常になく、ゼミにもたびたび欠席したりしていました。今振り返れば、自分でできることは自分でやればよかったですし、全科目にはまんべんなく触れたとはいえ、その深度がたりなかったな、と思います。
そして、2回目の結果は、択一は足切り+5点で突破したものの、論文が総合にあと4点足りず、2109番で落ちました。
3.2回目の試験の発表後、3回目の受験まで、そしてその発表
私の2回目の受験は、常に時間に追われ、心身ともに疲弊するものでした。今まで生きてきたなかで一番勉強した年だったので、「もう勉強したくない」という思いでいっぱいでした。そのため、試験終了の5月から発表の9月まで、たまに択一民法を解いたりするくらいで、全く勉強をしませんでした。また、成績が返ってきて、「あと4点なら来年受かるな」という安堵の思いと、「あんなに頑張ったのに4点すら取れないんだ」という絶望感にさいなまれました。自分の精神が非常に不安定になり、勉強しなくてはいけないという焦りや、バイトをしないと勉強もできないという現実的な問題から、何をしていいかわかりませんでした。年内までは再現を作って合格者にみてもらったり、自分が以前作った論証を見たり、択一をといたり、という受動的な勉強しかしていませんでした。はっきり言いますと、年内まで何の勉強をどんな意識で取り組んでいたのかわからないほど、勉強をしていませんでした。もう年齢もあがっているし、ほかの道も考えたほうがいいかもしれない、どうしようと自問自答していたら、あっという間に年末になっていました。
そして、年末から年明けにかけて、友人とともにレックのセミファイナルを解きましたが、このとき5月の試験以来、はじめて時間を計って問題を解きました。解いた結果、①まず、答案の書き方がさっぱり思い出せないこと② 判例の言い回しなど、覚えてしかるべき条文や趣旨や規範がさっぱりでてこないことに気が付きました。このときはじめて「自分が来年受かるには、まず、去年の5月の自分の実力にまで戻し、そのあとさらに4点以上獲得できる実力にしないとならない」ことに気が付き、非常に焦りました。
その後、私は、時間がないため、とりあえず② を解消しようと、自分の論証を回しまくったり、友人から入手した予備校の問題をひたすら解く、という勉強をして、本番に臨みました。
本番では、何の問題が聞かれているかそもそもわからず、「あの問題ね」とわかれば条文や規範は出せても、規範を丸暗記して吐き出しただけなので、規範をあてはめで全然使えず、筆が止まる、という現象が起きていました。ですので、本番でしたが、私は「今年は絶対おちるな」と確信しました。
結果は、論文合格にあと46点足りない2412位となり、2回目で悪かった公法系、選択科目は上がったものの、良かった民事系刑事系が2回目より合計79点も下がっていました。
3. 3回目の発表後、4回目の受験まで、そしてその発表
3回目の本番が終わった後、不合格を確信していた私は、3回目の敗因は、「論文の発表まで全く勉強せず、5月に最大値に持ってきた実力が非常に下がってしまった→それをとりもどすため、論証丸暗記の勉強に偏り、頭が固くなり、かつ自信がなくなっていたため、争点から逃げ、自分の知識にひきつけたためだ」と分析しました。
そして、まず、① 本番後、論文発表までの間は、択一民法をつかって、最低でも民法の基礎力が落ちないようにしようとしました。具体的には、辰巳の過去問を使って、一肢一肢、すべて理由をつけて答えられるようにじっくり勉強しました。この勉強は時間がかかりますが、その後択一で安定して8割が取れるようになりましたし、民法が不出来な私には、人とちがうことを書くことが減りました。そして② 論文発表後は、年末までに合格レベルに持っていくことを目標に、ア 特別指導(弁護士との1対1のゼミ)とイ 法務研の過去問答練をメインに据えて勉強しました。
アでは、過去問添削を通じて、自分の癖の指摘、争点から逃げずに自分の思考を答案に示すためにはどのような勉強をすべきか、教科書や百選をどう使うか、といった点から指摘をしていただきました。先生には「浪人生に多い論証丸暗記型で、受かりにくい」「民法は全然だめだから来年受けなさい」等、非常に厳しい指摘をいただきましたが、これにくらいついたおかげで、未完成ですが、自分の敗因と真正面から向き合えたと思います。
イでは、週2回、時間を図って2通書き、弁護士の方に答案添削をしていただきました。みんなで時間を図って書いたため、時間の使い方や自分の癖がはっきりわかりましたし、添削や講評を聞くことで、合格答案不合格答案の具体的なイメージ、採点実感の読み込みの重要性や自分の位置がわかり、非常に有意義でした。
その他の勉強方法として、アルバイトの合間に、択一をじっくり解いたり、いままでまったくしてこなかったのですが、教科書を通読して、点でしか入っていなかった知識を横
でつなげたり等、していました。この期間は、百選を読み込んだり、年明けからは毎日1通は過去問を解く等いろいろしていましたが、頭には常に自分の敗因を置き、この敗因をつぶすには何の勉強が必要かといった点から勉強していました。
そして本番、憲法がさっぱりわからなかったり、民法の最初の設問でひとりあさっての方向にいったり、民訴で集中力が途切れたりといろいろありました。しかし、今年たてた目標である「争点から逃げない。自分の知識にひきつけない。思考をしめす」答案を全科目でなんとかできたため、結果はついてくるだろう、落ちたらまた思考力を上げる勉強をするだけだ、と思っていました。結果は、3回目のときより、合計139点あげ、総合1410位で合格しました。
4. これまでを振り返って
私は4回も受験し、ほかの合格者の方々よりかなり苦戦しました。ですが、合格に一番必要なことは、答案に何を書いたか、ではなく、どう書いたか、つまり採点者が書いてほしいとおもうところに真正面から取り組み、自分なりに考えた結果をきちんとわかりやすく示して、思考過程を伝えることだと思います。とくに浪人が長いと頭が固くなり、論証を張り付けたり、自分の知っている知識にひきつけたりしてしまいがちです。合格の仕方は人それぞれですが、落ち方は大体決まっています。これから受験に臨む方は、しっかり自分の敗因と真正面から向き合い、それをつぶす勉強を日々続けて、心を強くもっていれば、合格できると思います。
受験生の方の早期合格に、私の不合格体験が参考になれば、と思います。