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合格体験記 私の司法試験合格法

浅野 剛
明治大学法学部 法律学科 2012年卒業

1 簡単な経歴、法曹志望の動機

2008年明治大学付属中野高校卒業、2012年明治大学法学部卒業、2015年早稲田大学法科大学院修了。高校時代はバドミントン部部長でした。大学では法律相談部,ステップ英語会(英語サークル),シュラフの会(アウトドアサークル)に所属していました。司法演習は川地先生(民法)で専門演習は神田先生(民法)でした。
私が法曹を志望したのは中学2年の頃です。ちょうど進路について考え始める時期に司法制度改正の報道を見て自分にもチャンスがあるかもしれないと考え、志望するようになりました。中学から一貫して弁護士志望だったため,視野が狭かったなと反省することがあります。弁護士になって何をしたいかという視点を持っておくことは大事だと思います。
 

2 短答式の勉強方法

全科目(8科目)通じて、過去問そのものと肢別の両方をやりました。
商訴行政法は試験科目から外れましたが2週くらいしました。
間違えた問題は一元化教材にまとめて定期的に見返していました。
一元化教材は憲法は予備校の論文用テキストを使いました。芦部憲法がよいと思ったのですが知識の穴が多いため芦部ベースで色々補助してあり、表などもついた予備校テキストを選びました。憲法のみ百選をよく参照しました。憲法の短答は一つの判例についてかなり細かく聞いてくるので判旨をかなり丁寧に読む必要があります。すべての判例につきそのように勉強することが現実的でない以上憲法では安定して得点することはできないと割り切っていました。憲法を得点源にされている方は本番でこける可能性があるので他の科目もしっかりやった方がいいと思います。自分は刑法が安定して9割とれたので憲法はかなり割り切った勉強をしていました。
統治に関しては短答用に暗記カードを作ったりしていました。予備校に伝わるごろ合わせなどは馬鹿に出来ないです。暗記の効率が上がりました。
民法は予備校の短答テキストにまとめていました。民法は論文と共通するとよく言われますが今年の出題を見る限り、かなり細かい所を聞いてくるので短答プロパーの勉強をしっかりする必要があると思います。民法の短答対策はとにかく時間がかかるので電車の中などでコツコツ取り組む必要があります。
民法はたまに論文レベルの難しい問題があって,市販の解説が微妙なものがあるので,自分なりにしっかりと説明できるかを検証しつついい加減に解かないことが大事です。
刑法は予備校の論文用テキストを使っていました。短答用のテキストは刑法について体系別に並び替えられており使い勝手が悪い印象でした。細かい表などをコピーしてはりつけることで論文用テキストを流用でき、勉強時間短縮につながりました。刑法は比較的簡単なのでポイントをしぼってやればいいと思います。
総論は刑罰と罪数を押さえればあとは論文の知識で解けます。各論はそのまま論文の勉強の役に立つのでしっかりやりましょう。逃走罪などの短答プロパーなところはみんなできないので差がつきやすいです。
全科目に共通することですが,間違えた問題について完璧に理解できているのかが大事です。予備校本の解説はピントがぼけたものが多々あるのでわからなければ面倒くさがらずに基本書や調査官解説を参照すると実力が伸びます。調査官解説はタブレット型のパソコンを使うと参照が一瞬でできて便利です。
問題を解くときに,一元化テキストに一度間違えたらピンクのラインマーカーでアンダーライン,二度間違えたら塗りつぶし,三度間違えたらオレンジで重ねてアンダーライン,四度間違えたらオレンジで塗りつぶし,五度間違えたらボールペンで強調という処理をしていました。これで自分の苦手分野がはっきりするので,あまりに色が塗ってある分野は基本書をじっくり読むなどの対応をとることができます。
この点,市販の辰巳などの短答用六法は最初からカラフルに色塗りされている上に情報過多なので復習しづらくてしょうがないと思います。
短答は知識の穴を埋めていくイメージで勉強します。ある程度学習が進むと,一度正解した問題は再び解いても間違えないですし,逆に一度間違えた問題は思考を矯正しないかぎり何度でも間違えてしまいます。したがって,自分が苦手な部分を浮き彫りにしてそこを徹底的に繰り返す作業が必要です。その意味で予備校の短答六法ではじめから大量の情報が書き込まれ,カラフルになっているものはよくないと考えます。
 

3 論文の勉強方法

ア 総論
答案付の良問をできるだけフル答案で書いて実力者に見てもらうのが上達の早道です。そのためにはいくつかのステップを踏む必要があります。
まずは、基本的知識を入れることが大事です。とにかく問題を解きまくるというスタイルではいずれ壁にぶつかってしまいます。
テキストを読んで何が問題になってるのかがわかるレベルになったら、基本的なレベルの演習をすべきです。時間があるなら学者の本がいいですが、全科目でそこまでやる時間はないので、ローの期末試験や予備試験、旧司法試験過去問などを併用しました。
新司法試験過去問は直近四年くらいはなるべく早く答案を書くべきです。それ以前のものは後回しでいいと思います。
前年の9月くらいまでに基礎を固めてそれ以降は答練を受けました。大手と小さい所の2つで受けました。ローの期末試験がある場合はそこまでやる時間はないと思いますが最低でも一社は受けるべきです。
ここで重要なのは,偏差値を知ることと,未知の問題に対する処理パターンを確立することです。
特に,形式的問いに答えているか,時間配分や分量配分は適当か,三段論法が守れているかなどは基本ですが問題が難しくなるほどみんなできなくなるので重要です。
この時期は過去問や応用的な学者の演習本もやらなければならない上、短答対策も怠れないので忙しいです。やるべきことを絞るために学習状況を記録するノートを活用していました。やるべきことを書き出してスケジュールを組むことで心理的不安がかなり軽減されたように思います。
3月の模試以降は新しいことには手を出さず、復習に努めました。
なぜか法律書は年明けにかけて出版ラッシュがありますが,ここで新しい本を読んでも付け焼刃になってしまうので,12月以降は新しい本は買わないように心がけていました。
直前期はロースクールの教授からとにかく短答をやれといわれます。短答が悪いと論文を見てもらえないのはたしかですが、短答の足切りはかなり低い上、合否は論文で決まるので論文をしっかり勉強すべきです。
本番はとにかくいつも通りを心がけました。そのために日ごろから本番と同じA3の紙で問題を解いたり,勉強の合間に食べるものもいろいろ試してしっくりくるものを事前に決めておきました。忘れ物でもやもやするとよくないので持ち物リストと行動予定表などは作るといいと思います。自分は1年目電車が止まったので,2年目はホテルにしましたが快適でした。
 
イ 各論
(ア) 憲法

 憲法のキモは,判例の学習の仕方がわかっているのか,ということだと思います。憲法の判例の読み方は難しく,学説も複雑なので憲法の泥沼にはまって時間を浪費しないために憲法の学習は最後に回すべきです。出題趣旨や採点実感ではとても高度なことが書いてありますが,合格答案として要求されるレベルは案外低いので憲法が苦手なら割り切って勉強時間をかけすぎないことが大事だと思います。
テキストは毎年のように受験生の目を引くものが発売されていますが,正直決定版といえるものはないのでみんなが使っているもので勉強しましょう。憲法の本を買い込むことは絶対にしてはいけません。

(イ) 行政法

 行政法はわかりやすい本がたくさんあります。『基本行政法』(中原茂樹)と事例研究をやれば最低ラインには乗ってくると思います。救済法は訴訟要件を徹底的に暗記することで伸びますが,総論の本案の違法については問題演習をしっかりこなす必要があります。ちなみに『環境訴訟法』(越智敏裕)の行政法のまとめはよくできているので行政法が苦手なら一読を勧めます。

(ウ) 環境法

 大塚先生や北村先生の本が一般的ですが上述の越智先生の本がおススメです。個別法については他で補う必要があるものの非常にわかりやすい解説がされています。過去問の解説までされているのは本当にありがたかったです。越智先生は大塚先生・北村先生の指導を受けたということで両先生の本とも親和性が高い点も良かったです。
 今年は試験の傾向が大きく変わりました。様々な法分野からちょこちょこ出るようになりました。難易度は下がったと思うので選択科目で迷ってる方はおすすめです。

(エ) 民法

 なんだかんだで旧司法試験の過去問が最良の問題集です。しかし,いい解説がないので苦労しました。今だと事例で学ぶ民法演習という本がいいと思います。民法はとにかく演習,という方が多いですが,論点の深い理解が要求されている以上,テキストをしっかり読み込む作業も重要だと思います。今年は論文でも細かい判例がでました。知識でカバーすることが難しい以上,未知の問題の処理能力をしっかり鍛えておくことが重要です。

(オ) 商法

 総則はやりましたが,手形は捨てていました。今後も出ないと思います。会社法は意外と論点が少なく,同じところがしつこく出ます。ロースクールの授業などで具体的イメージを持つことが大事な科目だと思います。答案では訴訟要件をしつこく丁寧に検討することが重要です。

(カ) 民事訴訟法

 とにかく判例が大事です。全科目で一番判例を勉強しました。2015年の1問目は調査官解説を読んでいればばっちり書けるような問題であったように,調査官解説が大事です。また,百選もかなり試験委員から重視されているので解説は重要です。
 『読解民事訴訟法』(勅使川原和彦)という本を読み込んでいました。
 問題演習は過去問をやれば十分だと思います。アウトプットのやり方に独特のルールがあるので民事訴訟法が得意な人の指導を受けるといいです。

(キ) 刑法

 旧司法試験が役に立ちました。もっとも,今とは傾向が違います。今は事実認定がほとんど必ず出ます。
 論点の理解が難しいものがあって学者の論文を読み漁ったりしましたが,刑法の場合深い理解が問われることがない以上,こういう勉強は無駄になりやすいです。淡々と問題演習をこなすのがいいでしょう。
 自分は山口厚教授の講義を受けながら事例演習教材をこなすことで力が付いたと思います。

(ク) 刑事訴訟法

 刑訴は随分と遠回りな勉強をしてしまいました。科目の特徴として数少ない論点の深い理解が問われています。
 私は,ロースクール演習刑事訴訟法を解きましたがぴんと来ず,捜査法演習や法学教室の対談など分厚い本に手を出しながら井上正仁教授の授業を受けたことで完璧に混乱してしまいました。
 結局,古江先生の事例演習で頭の中がだいぶ整理されましたがこの本からやっていればかなりの時間が短縮できたと思います。
 伝聞に関しては,合格者でもよくわかっていない人が多いので得意な人を探して教えてもらうのがいいです。

 

4 その他合格に役に立つと考えている方法

弱点ノートを作りました。
模試や答練を受けた際、なぜミスをしたのか。どうすればミスをしないのかを科目ごとに一枚のルーズリーフにまとめていました。
試験の直前に色々見返すと,そこで見たことをそのまま答案に書いてしまう危険があるので、このようなものを作っておいて,試験前はそれしか見ないというような工夫が必要です。
また、自分の苦手な論点についてはまとめノートを自作していました。まとめノートの自作は効率が悪いのでやめたほうがいいと先輩から言われていましたが、これをすることで頭の中が整理されるのでやってよかったと思いました。例えば、会社法の株式の共有の論点は裁判例が入り組んでいるのでこのやり方は有効だと思います。
さらに、百選以外の重要判例のまとめファイルを作っていました。
特に重要な判例で百選に掲載されていないものについて、1~2頁の判例評釈を印刷して使用していました。百選は重要ですが,ここ数年を見ても百選以外からバンバン出ているので百選以外もやる必要があります。ただし,ケースブックのような判旨が全て載っているが、解説がないものは司法試験対策としては使わないようにしていました。

 以上
(H28.10.10執筆)

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