合格体験記 私の司法試験合格法
近藤 姫美
明治大学法科大学院 2013年卒業
70期司法修習生
(1) 簡単な経歴、法曹志望の動機
私は、明治大学法学部を卒業後、明治大学法科大学院の未修コースに進学しました。未修コースを選択したのは、学部時代出席が必要な授業以外には出席せず、優秀な友人のノートを丸暗記して乗り切っていたので、改めて勉強する必要があると感じていたからです。私は、ロースクール卒業後4回目の受験で合格することができました。大学入学以来両親とは縁を切っていたので、働きながら自分で家賃や光熱費等の生活費を捻出しながら受験していましたがやっと今年合格することができました。
法曹志望の動機は、幼少期に加害少年に感情移入してしまったところが原点です。幼少期に、両親・友人に恵まれなかった私は、小さい頃加害少年と似たようなことを思っていました。TVで連日コメンテーターや世論が加害少年を責めるような発言をしているのを子供心ながらに不思議に思っていたものです。ただ、私の場合は小学6年生以後によい友人や担任教師との出会いがあり徐々に変わることができました。私は、運よく加害少年にならなくてすみましたが、世の中には私のように良い出会いがある人間ばかりではありません。たまたま良い出会いがあったかそうでないかだけで人生が大きく変わってしまうのであれば、たまたま救われた私には、たまたま救われなかった人間を救う義務がある。そんな思いがあり法曹を目指すようになりました。
また、司法試験浪人中に司法試験を諦めようと思い公務員試験を受けている中で、若い女性が騙されて搾取されているという状況を目の当たりにしました。そのような女性を救いたいと思い奮闘しましたが、何の力を持っていない個人では限界がありました。そこで私はやはり司法試験を諦めるべきではない、恵まれない環境で育ってきた自分だからこそ法曹になった後救える者がいる、それができるのは私しかいないし、私の使命だ!と思い再び法曹になりたいという熱い思いを抱え今年受験するにいたりました。
(2) 短答式の勉強方法
実は、私は、2年目以降の司法試験の受験では「短答式試験はお遊び」「司法試験は実質3日間」など短答式試験をバカにしていました。しかし、私が1年目に受験した時は、実はなかなか足切り点を超えることができず直前の3月でも足切り点を超えない程に短答が苦手でした。
1年目の直前期に足切り点を超えられなかった人間が2年目以降なぜこんなにも短答式試験で余裕をかましていられるようになったのかというとそこには短答ゼミに1年費やしたという背景があります。
まず私は、短答式試験で足切りラインを超えたことがないメンバーを集めました。そして、1時間を1つのタームとしてそれを何回か繰り返すという方法をとりました。まず40分間で短答の問題を解き、40分経過したらゼミメンバーに自分がどこの範囲をやったか伝えます。そして残りの20分でその範囲から口頭で問題を数問出してもらいます。正誤と理由づけがあっていれば、その次のページに進める、間違っていれば再度同じ範囲を次のタームで繰り返しやる。また月に1回、学習進度をはかるために、予備校の模試を本番と同じ時間設定で解いて反省会をしました。
こういったゼミを繰り返した結果、なんと当初足切りを超えなかったゼミのメンバー全員がその年は短答式試験に合格することができました。そして、私は1年目の受験の時にがっちりとこのような短答の勉強をしていたため、2年目以降は短答式試験常勝組になることができました。
試験直前に短答式試験のことを気にしなくていいというのは精神的にも落ち着きますし、その分論文対策を直前まですることができます。このような私個人の経験からは、短答式試験はできるだけ早めに仕上げ、全く心配がないという状況に早めに持って行くことが司法試験合格の鍵であると考えています。
(3) 論文の勉強方法
私は、書けば書くほどよいというのをそのまま文面通りうけとった結果、1年目2年目は、週に12通論文を書いていました。結果、1枚10分程で書くことができるようになり途中答案には絶対にならないという能力と論理を飛ばさないという能力は身につきました。しかし、週に12通とかなりの量をしかもゼミの中で書いていたためかなり時間がとられてしまい、書くだけで復習する時間がとれず一度書いたはずの問題の内容が身についていないという事態が起こりました。
そこで3年目の受験の際は、思いきってゼミを全て切り捨て司法試験予備校で働いていた優秀な同期に答練で書いた論文を見てもらい、自分から他の受験生にコメントをするという時間や自信を持って書ける問題について答案を書くという時間をなくしました。また、司法試験予備校では司法試験の模試やロースクール入試、予備試験用の模試の製作に携わりました。仕事をする過程で、予備試験に現役で受かるような優秀な人がどこに点があると考えているかどこが重要であると考えているかなどが分かり、その点はととても学習に役立ちました。ただ、私はこの時点でよく論点をボロボロと落とすような人間であったため、3回目は2000番代という成績で終わってしまいました。
4回目の受験の際は、論点ぼろ落としを防ぐために、ひたすら1人で旧司の過去問や主要な問題集の答案構成のみをやっていました。答案もきれいに時間以内に書け、またどこに点が多く配分されているかなど分かっていたので、書けば書いたメイン論点についてはほぼ満点が与えられるという状況になっていたこともあり、答案はほとんど書きませんでした。
1回目は4000番代、2回目は3000番代、3回目は2000番代、合格した年は700番代と順調に伸びていることから、その都度敗因分析をして自分にあった勉強方法を自分なりに考えただただそれを機械のようにこなしたというのがよかったのだと思います。
(4) その他合格に役に立つと考えている方法がある場合はその方法
私がこの項目でお伝えしたいのは試験期間中、どんなことがあっても諦めずに、とにかく試験自体を受け切れということです。
実は私は今年の受験期間中、ストーカー被害に遭い試験当日にストーカーから殺害予告を受けていました。試験の直前期である4月5月は受験どころではなく、24時間起きているんじゃないかと思われるストーカーからの嫌がらせに対処するのが精いっぱいで実はほとんど勉強はできていませんでした。そんなこともあり、私の今年の目標は司法試験に合格することではなく、殺されないで司法試験の受験を4日間受けきることでした。
試験当日は、試験場の行き帰りに一番気を使いました。命がかかっているので試験会場へは金髪のウィッグを被りサングラスをかけ今まで着たこともないようなギャル服を着るなど変装していきました。本当に試験どころではなかったのです。
そのおかげだと思いますが、試験中は、完全に諦めていたこともあり「絶対に受かるぞ」と気負うことはありませんでした。また、誰かが入ってくればすぐに分かる司法試験会場は私にとって1人暮らししている自宅よりも安全で落ちつける場所でした。目の前にある試験の問題だけに集中していればいい、それは何をしていてもストーカーの恐怖におびえてなければならなかった数カ月を体験した私にはとても幸福な状況に感じられました。結果、過去のどんな試験よりも落ち着いて集中して試験に立ち向かうことができた私は合格をつかみとることができました。
この体験から言いたいことは一つです。その時にはどんなにダメだと思っていても、ふたを開ければかえってそれがプラスに働くということもあり得ます。だから、前の教科で失敗してしまったとか試験前日に何かしら不幸なことが起こって自分のメンタルがガタガタになってという出来事があても受験を断念するということは絶対にやめてほしい。それが合格体験記を読んでいるみなさんに私が伝えられる合格に役立つことです。
最後まで諦めないで頑張ってください。諦めないことが合格に繋がります。
(H28.10.12執筆)