合格体験記 私の司法試験合格法
竹内 香奈子
2013年 明治大学法科大学院卒業
1 はじめに
1、経歴、法曹志望の動機
私は、明治大学法科大学院未修コースを卒業後、4年目4回目である平成28年司法試験に合格しました。
私が法曹志望した動機は、立場や考え方が違うことから生じる争いを解決したいと思ったからです。争いを解決するための道具の一つとして法律が使えないだろうか、法律を使った物の見方や考え方でできるような者になりたいと強く思いました。
2、短答式の勉強方法
短答式は、辰巳法律研究所が出版している「短答過去問パーフェクト」を使って問題を解いた後、判例六法を使って復習をしていました。
まず、短答過去問パーフェクトで問題を解きます。問題を解く際は、結論だけではなく、条文・問題となっている文言等その理由づけまで頭に思い浮かべることを意識していました。
次に、結論・理由付けがあっていたかをチェックするために解説を読みます。短答パーフェクトは解説が充実しているので、解説を読んだだけで分かった気になってしまいます。そのため、一言で結論・理由付けを人に説明できるようまとめながら読んでいました。
最後に、結論を間違った問題・結論はあっていたが理由付けを間違った問題は、大事だと思う理由づけ等を判例六法の条文の近くに書き込みます。判例知識が問われていた場合は、判例六法に載っている判例をマーカーで印を付けます。
上記方法だと、短答で問われた条文・文言、理由付け、判例知識が判例六法に一元化されます。空いた時間に繰り返しこの判例六法を読むことで必要な知識を頭に叩き込んでいました。
もともと、短答は苦手で過去問を繰り返し解いているはずなのに、なかなか点数が伸びませんでした。しかし、①理由付けを意識して問題を解く、②問題を解くたびに判例六法で問われた条文・文言、理由付けをチェックする、ことを始めたら点数が伸びてきました。短答に悩んでいる人は、上記を参考にして勉強してもらえればと思います。
3、論文の勉強方法
(1)一年目の勉強方法(平成25年司法試験)
一年目は短答で足切りされないようにすることだけを考えていました。
論文の勉強はほぼせず、本番では分からな過ぎて時間が余ってしまいました。結果は、論文で足切りになってしまい、散々なものでした。
(2)二年目の勉強方法(平成26年司法試験)
二年目は、論文の勉強を本格的に始めました。
基本的知識を取得するため、予備校の基礎講座を聞き直しました。また、予備校の答練の問題を集め、ゼミで検討をしていました。ゼミ後に答練で問われた論点を基礎講座のテキストに一元化し、空いた時間に繰り返し読んでいました。
結果は、論文が3000番台でした。勉強方針を見直さなければと思いました。
(3)三年目の勉強方法(平成27年司法試験)
三年目は、主に過去問分析をしました。
まず、趣旨・実感を読んで、問われていること・書くべきことを把握します。次に、問題文のどの事実を着目し、どのように考えれば問われていることに答えられるかについて考えます。
趣旨・実感を読んだ後に問題文を読むと、意外と試験委員がヒントを出していることに気が付きます。例えば、急に詳しく状況を説明している段落や、なお書きで付け足されている段落です。本番では問題文と六法しかみることができません。初見の問題でもヒントに気が付けるよう、まずは過去問で練習をしました。
これまでも、過去問は解いていましたし、趣旨・実感は読んでいました。しかし、それは論点落ちを確認するために、答案と趣旨・実感を漫然と見比べるだけというものでした。「分析する」という目的をもって趣旨・実感を読むのと漫然と趣旨・実感を読むのでは頭にはいる内容が全然異なります。目的意識をもって趣旨・実感、問題文で過去問分析をすることはとても良かったです。
本番の問題を解いた実感としては、前年よりはできたが合格に届いているかまでは分からないというもので、実際の結果もその通りでした。
(4)四年目の勉強方法(平成28年司法試験)
【過去問分析】
平成26年まではすでに分析していたので、平成27年分だけ分析をしました。
【反省ノートでの自己分析】
答案を書くたびに反省ノートを作成して自己分析をしていました。
反省ノートには、①自分ができなかったこと、②できなかった原因、③改善するための方法、をまとめていました。特に②の原因では「なぜ?」を5回ほど繰り返して本当の原因を特定します。③では弱点克服のための具体的な改善方法を考え、その後の勉強で実践していました。
【まとめノート作り】
民法、商法、民訴法、刑訴法は百選を使って論証づくりをしていました。百選は多くの受験生が使用しており、基本的知識が詰まっている教材だと思います。百選を完璧に潰せば知識で負けることはないと思います。
まとめノートの作り方としては、まず、全体をさっと読んで、問題となっている条文、条文の文言を特定します。次に、事案の概要・判旨・解説をしっかり読んで、問題提起のきっかけになる事実、規範、規範の理由付け、あてはめで使われている事実、あてはめの考慮要素を特定します。あとは、上記を並び替えて論証を作成します。
論証づくりでは問題となっている条文と文言を特定することが重要です。どの条文が問題となっているのかが分からなければ論文で活かすができません。また、あてはめで使われている事実に着目することで、初見の問題文を読んだ際に似たような判例があったかどうかの判断が付きやすくなりました。
四年目は、落ち着いて問題文を読むことができました。論文の順位も上がり、無事に合格することができました。
4、その他合格に役に立つと考えている方法
(1)答案の自己添削
2月までは百選等でまとめノートを作成し、3月からは一日一通100分で過去問の答案を作成していました。答案を作成した後は、必ず自分で分析した趣旨・実感、問題文をもとに100点満点で自分の答案は何点くらいなのか、何が足りないのか、点数をとるにはどうしたらいいのか、に着目して答案の自己添削をしていました。
点数を意識しながら自分で自分を添削することで、論文で点数をとる意識を強く持つことができるようになったと思います。自分の思考手順は自分が一番知っています。自己添削は苦しいですが、やると必ず力がつくと思います。
(2)本番で落ち着くためにやっていたこと
今年の試験では落ち着いて問題文を読むことができました。本番で落ち着くために、合格者答案の写経、反省点の書き出し、をしていました。
【試験本番の机の合格者答案の写経】
本番直前は緊張で知識が頭に入りません。また、直前に見た知識に引っ張られてしまって見当違いな答案を書いてしまうおそれがあります。そのため、科目毎の休憩時間に合格者の答案を写経していました。
写経することで、自分が合格答案を作成するイメージを強くもつことができましたし、これで幾分か不安が飛んだ気がします。
【反省点の書き出し】
2時間の論文を作成するたびに、反省点・改善するための方法を書き出していました。書き出すことで、頭から切り離して考えることができ、気持ちも楽になります。
本番では必ず「失敗した!」と思うときがあります。この気持ちを切り替えて次の科目に挑むことが大事と分かっていても、なかなかできません。失敗したという気持ちを無理に忘れようとするのではなく、あえて書き出して向き合うことで、意外と頭を切り替えることができます。
5、最後に
司法試験に合格するためには、①過去問分析、②自己分析の二つが大事だと思います。①の過去問分析では、合格するために必要なことを把握します。②の自己分析では、自分の弱点を知り、①で把握した合格するためにしなければならないことを特定します。後はそれを淡々と実践していくだけです。私は三年目で過去問分析をし、四年目で自己分析をしました。この二年があったからこそ、合格することができたと思います。
私の勉強方法がお役に立てれば幸いです。後輩の皆さんにはぜひ頑張っていただきたいと思います。
また、振り返ると、家族、先生方、友人に支えられた受験生活でした。感謝の気もちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
(H28.10.22執筆)