合格体験記 私の司法試験合格法
渡辺 智己
2008年法学部法律学科卒
1 はじめに
みなさまはじめまして。この度合格いたしました渡辺智己です。私は、2004年に明治大学に入学、その後学習院大学法科大学院を2012年に卒業し、今回5度目のチャレンジで司法試験に合格いたしました。合格後約1か月が過ぎて筆をとっておりますが、この間多くの方に5回目のプレッシャーはすごかったのでは?と問われます。しかし、4回目以降の受験は制度改編の結果得られたおまけみたいな認識でしたし、特に今回は無理だろうとの諦めの方が強かったので、何らのプレッシャーなく試験に臨めました。結果的には、無欲だったことにより設問に真摯に向き合うことができ、幸運をもたらしたものと考えております。
2 勉強方法について
私の司法試験合格法とのサブタイトルですが、なぜ合格したのかいまだに判然としませんので、ここでは私の勉強方法を述べることとします。
まず、論文式に関してです。いわずもがな論文が書けないと合格には至りません。もっとも、すべての科目すべての事項を完璧にする必要はなく、ある程度の点数をそろえられれば十分に合格点に達することはご承知の通りです。一つくらい不可に近い科目があってもなんとかなります。
では、どうすればある程度の点数をそろえられるか。基本的には広く浅い知識を持っておくことが肝心であると思います。試験問題はかなりの長文ですが、各所にヒントがちりばめられています。そのヒントに気づくためには広く浅い知識で、しかも確実なものが必要になります。
そして、そこで求められている知識というのは、端的にいえば、条文、意義、趣旨、要件、効果です。これらを確実に習得していればよいのです。その習得方法は、過去問を解こうが解くまいが、予備校を利用しようがしまいが、一人で勉強しようがゼミをやろうが、なんでもよいと思います。
とはいえ、よい論文が書けても短答式で合格点に達しないと採点されないので、短答式はしっかり勉強しておく必要があります。
短答式に関しては、「過去問を繰り返す」ということで十分であると思います。時間に余裕がある方(ロースクールの1・2年生など)は、すべての肢について理由を考えてつぶしていくことがよいと思います。私の認識では、短答式は、小さな論文試験のようなものです。肢を読みながら止まることなく理由と結論が導き出されるレベルに達すれば、論文式はそれを表現すればよく、大きな点数の落ち込みはないかなと思います。(もちろんそう単純ではありませんが、少なからずこのような側面はあると思います。)
時間のない方については、正解の肢だけしっかりと導き出せるように訓練すればよいと思います。民法に関しては、しっかり理解していないと曖昧な肢も多いように感じられます。でも3つくらい正確に理解していれば、何とか正解の肢を導き出すことは可能だと思います。
ただ、時間のない方にも有用なことは、論文で問われるような分野や事実が多く書かれている問題(単なる条文知識を問うものではない問題)については、事実を条文にあてはめる訓練の素材になると思いますので、すべての肢をしっかりと検討することをおすすめします。
3 本番での考え方
司法試験に複数回落ちた方の中には、問題文のこのあたりが怪しいのはわかる。そして、問われたことに答えているつもりだけど、点数が伸びないという人がいるのではないでしょうか。怪しいポイントがわからないようであれば、それははっきりいって勉強不足です(もちろん上位合格者も答えられない点もありますので、単純に勉強不足とは言い切れません。合格ラインに達するという意味では、という趣旨です。)。択一やら何やらで最低限の知識を学びましょう。
さて、本試験で怪しいポイントを発見した。どう考えればよいでしょうか。あくまで感覚的なものになりますが、怪しいと思っていわゆる論点検索に走ってしまうのは逆効果だと思います。今までの記憶から答えを探してしまうからです。本試験の問題は、ご存知の通り既存の問題集等とは異なり一ひねりされています。しかし、そこで問われているのは法解釈です。そして、法解釈の根底にあるのは、条文、意義、趣旨、要件、効果ですから、まずこれらをしっかり考えましょう。そして、淡々と怪しいポイントと思しき事実を評価しあてはめれば、ある程度の答案にはなります。
そう考えると、事前準備は、条文、意義、趣旨、要件、効果の正確な理解になります。ぜひ苦しんでいる方は、条文、意義、趣旨、要件、効果を徹底的に検討し、定着させてください。ちなみに、合格後何名かの答案を拝見する機会に恵まれましたが、多くの場合、要件の検討が不十分のものが多いです。それらは、この辺が怪しい、この条文のような気がする、というようなあやふやなままなんとなく書いている印象を受けました。ここ数年の司法試験は問うていることはシンプルなように思います。要件をしっかり想起し、あてはめる意識を強くもってください。
私は、5回ほど司法試験を受けさせていただきましたが、4回目以降は本当に苦痛でしかなく、回数が増えたからしょうがないからとりあえず試験を受けようというくらいのモチベーションでしかありませんでした。なので、あきらめなければ合格できるなどとは言えません。
受験回数を重ねた方はお分かりと思いますが、論文本試験中に誤りに気付いたり、はたまた混乱をきたしたりすると、言葉にできない絶望感に苛まれます。しかし、一科目失敗しても十分に取り返せますし、論点落としなどみなあります。次に現れる問題に無心で取り組みましょう。一問ずつ一科目ずつの積み重ねが少しずつ合格への道を拓きます。
4 終わりに
とかく複数回不合格となると自分の勉強方法が本当に正しいのか疑心暗鬼になることもあると思います。私は、自分の勉強の方向性に間違いはないとの思いは少なからずありましたが、やはり本当に正しいのか不安になったこともあります。私は予備校が水に合いませんでした。しかし、今年は予備校に行くかどうか本気で悩みました。結果的には、予備校に数十万円を費やすよりは、予備校に行かずに落ちた方が納得すると思い、自分のノートを整理することと昨年合格した友人とのゼミしかこの1年はしておりません。しかし、自分のやり方を貫いたことが効を奏し合格できたと思っています。
やり方は人それぞれです。結果が出れば、全ての方法が正解です。悩んでいる方は、いろいろな方に話を聞きこれだと思う方法をとにかく懸命にやりぬいてください。
長くなりましたが、私がみなさまに伝えたいのは、①条文、意義、趣旨、要件、効果を大切に!、②自分の勉強方法を信じて鍛錬することが合格への最大の近道だ!、ということです。結果が全てです。頑張ってください。
私の大して中身のない体験記を読んでくださったみなさまが合格されることをお祈りしております。