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司法試験合格体験記 私の司法試験合格法

武田 敦
明治大学法科大学院未修者コース2016年卒業
卒業後、二回目で合格

 
 

第1.法曹志望動機・経歴・入学前後の学習状況

 私は、中学生の頃、素朴な正義感から検察官になりたいと考え、早稲田大学法学部に進学しました。大学時代は、アルバイト中心の生活を送り、法律の勉強はほとんどしていなかったため、法曹になることを諦め、就職活動をしていました。しかし、周囲の人からの応援もあり、一念発起してロースクール進学を決め、明治大学ロースクールに未修者として入学しました。
 ロースクールに入学したものの、大学時代に法律の勉強をほとんどしていなかったため、当初は即時取得や意思表示など基本的な法律用語すらわからず、法律用語辞典を横に置いて、わからない用語が出てくる度に調べながら勉強をしていました。
 また、ロースクールの授業(講義)をペースメーカーとして、各科目の全体像を掴むことに努めるとともに、一年次の夏から自主ゼミを始め、教育補助講師の先生の指導の下、アウトプットを意識していました。

 

第2.司法試験の勉強方法

(1)ゴールと現在地の把握

 司法試験に合格するための勉強方法は、合格者の数だけあると思います。しかし、どの勉強方法も司法試験合格というゴールに向かっているというベクトルは同じだと思います。このベクトルがゴールに向かっていない勉強方法は、合格への遠回りになってしまっているおそれがあります。そこで、是非意識してもらいたいのが、ゴールと現在地の把握です。
 ゴールと現在地の把握といっても、様々な内容があると思いますが、ここではいくつか紹介したいと思います。
 ゴールの把握としては、合格答案の具体的なイメージを持つことが重要です。合格答案といっても相対的なものですので、具体的なイメージを持つこと自体大変だと思います。しかし、できるだけゴールに直結する勉強をするためにも、合格答案の具体的なイメージを持つように努めることは重要であると思います。
 出題趣旨・採点実感を分析して、どのような能力が要求されていて、それをどのように試そうとしているのかなどといった点を把握したり、どのような答案が「優秀・良好」で、どのような答案が「不良」なのかを確認することは、合格答案の具体的なイメージを持つために有用であると思います。また、合格者や先生に答案を見てもらいアドバイスをもらう中で「これくらい書けていれば十分合格答案だよ。」と言われることもあると思いますので、それも参考になると思います。
 現在地の把握としては、自分の能力の把握することが重要です。過去問やロースクールの演習授業の課題などを解くことで、勉強の進度や理解度を把握し、それにとどまらず、自分の文章力、記憶力、どれくらいの速さで文字を書くことができるのかなどをできるだけ客観的に把握することが有用だと思います。
 私は、自主ゼミやロースクールの授業、定期試験などにおけるインプットとアウトプットを通して、比較的文章力はあるが、単純な暗記をする記憶力がなく、問題分析と文字を書くスピードが遅いということがわかりました。一年・二年次のロースクールの定期試験では、問題分析・答案構成に60分かかってしまい、答案作成時間が60分しか確保できず、答案枚数も3枚ほどしか書けませんでした。
 そこで、論点を数多く丸暗記するのではなく、全体像と論点の体系的位置づけを意識しながら、基本的な事項をしっかり理解し、基本的な事項から論点にたどり着けるようにするなどして、覚える事項をできるだけ少なくするという方向で勉強をしました。もちろん絶対的に覚えていなければならないことも多くありますが、理解することで頭に残りやすくなります。
 また、思考プロセスを形式知として持つことも意識しました。ここでの思考プロセスとは、前述の基本的な事項から論点にたどり着くための道筋というイメージで、法律要件・法律効果、法的三段論法、原則・例外などを意識してまとめていました。このような事前準備をすることで、問題分析や答案構成のスピードが速くなり、途中答案もほとんどなくなりました。
 このように、把握した現在地からゴールに到達するためには何が必要かということを考えながら、勉強をすることが重要であると思います。なお、ゴールと現在地の把握は、更新し続ける必要があります。

 
(2)目的意識を持つこと

 司法試験の勉強をしているとよく「基本書を何度回すか。」「判例百選は必要か。」「どの演習書をするべきか。」「過去問は何度もするべきか。」などといった話をすると思います。
私は、基本書や判例百選を読むこと、演習問題・過去問を解くこと自体が重要なのではなく、これらから何を得るかということが重要なのだと思います。
 例えば、「基本書を3回は読んだ。」と言っても、ただひたすら文字を眺めていたのでは意味がないと思います。基本書や判例百選を読むときは、それを読んで何を得るかということを意識する必要があると思います。そして、何を得るかによって読み方も変わってくると思います。
 全体像を得るという目的であれば、細かい論点は読み飛ばしていいと思いますし、むしろ細かいところまで読み込んでいたら時間がかかる割に全体像も細かいところもよくわからなかったということになりかねないと思います。そもそも、全体像を把握するのであれば、分厚い基本書ではなく、薄い入門書でもいいと思います。
 個別論点を理解するという目的であれば、一から基本書を読む必要はなく、全体像を意識しながら、該当箇所をつまみ食いするように読めばいいと思います。その際には、アウトプットを意識して、同じような問題が論文で問われた場合にどのように書くかを考えながら、場合によってはまとめながらインプットすると、論文で使える知識が身に付くと思います。
 演習問題や過去問を解く場合にも、問題形式を把握するのか、答案の型を身に着けるのか、実戦練習をするのかなど目的によって取り組み方が変わってくると思います。
 何を目的とするかは、自分の現在地からゴールにたどり着くためには何が足りないか、ということを意識してください。
 このように、闇雲に勉強をし続けるよりも、目的意識を持ちながら、自分に足りない部分を補うように、メリハリをつけて勉強することが重要だと思います。

 

第3.その他

 勉強面以外では、健康管理が非常に重要であると思います。直前期に体調を崩してしまい、勉強ができない日が続くと、精神的にも不安になってしまいます。後悔しないように、日頃から健康管理を意識してください。
 万全の状態で試験に臨めることはほとんどないと思いますが、少しでも万全の状態に近づけるためにも、健康管理を意識することは有用であると思います。
 

第4.最後に

 前述したように、司法試験の勉強方法は無数にあると思います。今回ご紹介させていただいた勉強方法は、私には合っていましたが、他の人には合わないかもしれません。もし、少しでも取り入れてみようかなと思ったときは、是非試してみてください。合わないときは他の方法を考えてみてください。
 抽象的なことばかり書いてしまいましたが、来年以降受験する皆様が自分の勉強方法を確立するうえで、少しでもお役に立てれば幸いです。
 試験本番までは非常に不安な日々が続くと思います。しかし、試験が終わるまで、あきらめずに合格を勝ち取ってください。

 

以上

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