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合格体験記 私の司法試験合格法

星野 拓哉

 

1.経歴

平成26年 明治大学法学部 入学
平成30年 明治大学法学部 卒業
平成30年 司法試験予備試験 合格
令和元年  司法試験 合格
 
 私は、予備試験に合格した翌年に司法試験に合格することができました。そこで、この体験記では、予備試験の最終合格発表から残り約半年でどのような勉強をしたのか、ということを書きたいと思います。時間がないので、手を広げることなく、本当に必要なことだけをやるという姿勢が大切です。予備試験までの勉強法については、予備試験合格体験記に書いていますので、そちらを御覧ください。

 

 

2.短答式試験対策

 短答式試験対策として特別にやったことはありません。予備試験に比べると、試験科目も下四法がなくなり、憲民刑の3科目になるので、負担はかなり減ります。データ上も、予備試験合格者は司法試験の短答で落ちることはほぼない(毎年数名のみ)ので、あまり心配していませんでした。論文式試験対策を中心に勉強していました。
 ただ、安心すぎて何もしないと、足元をすくわれることになりかねません。3月に各予備校の司法試験模試が開催されるので、そこまでに全体を1度復習して、模試で短答の合格点を確保することをひとまず目指しました。後は、直前期に短答プロパーの知識(統治や民法の細かい条文知識、刑法各論の細かいところ)を詰ることで、十分に合格することができました。

 

 

3.論文式試験対策(基本7科目編)

 論文式試験対策として、新しく入れなければならない知識はないと思います。予備試験段階で身に付けた知識で十分です。なので、新しく問題集を買ったり、基本書を買ったりすることはしませんでした。曖昧な部分や理解しきれていなかった部分を確認するにしても、今まで使ってきて慣れ親しんだ教材を使用しました。新しいものをやっている時間はないと思います。
 論文式試験対策としてやるべきことは、司法試験の形式に慣れるということです。予備試験と比べると、司法試験は問題文の量が圧倒的に多く、事実関係の把握や分析に手間取ることになります。問題文中のあてはめに使える事情の量も多くなりますから、これまで以上にあてはめで点数を稼ぐという姿勢も必要になります。また民訴法の判例射程問題など、予備試験ではあまり聞かれることのなかった形式の問題も出題されます。さらに、司法試験の問題は誘導が多いので、上手く誘導に乗りながら方向性を間違わずに解答する技術も必要です。このような司法試験特有の問題形式に半年間で慣れていかなくてはなりません。もっとも、これは新しい知識がいるということではなく、今持っている知識をどのように司法試験に対応させていくかということです。なので、司法試験の形式に対応するということに、半年間注力しました。
 具体的に何をしたかというと、過去問演習です。司法試験の形式に慣れるのであれば、司法試験の問題を解くのが1番です。最初は2時間で解き終えることすら難しかったですし、内容面でも論述が明後日の方向に行ってしまったりしていました。そこで、1問解くごとに、どこで手間取って時間がかかってしまったのか、手間取らないようにするにはどうすればよかったのか、あてはめに使える事情はすべて使えているか、誘導に上手く乗れているか、どうすれば上手く乗れたのかなど、意識的に考えながら復習しました。漫然と解いているだけでは得られるものが少なくなってしまいます。この作業を意識的に繰り返していくことで、段々と2時間で合格答案を作ることができるようになっていきました。司法試験の問題を解くのに必要な技術はすべて過去問から習得するという意気込みで、過去問演習をしていくといいと思います。
 過去問演習をした際には、再現答案を検討もセットで行いました。再現答案の検討によって、合格答案のイメージを掴むようにしました。出題趣旨や採点実感などには、試験委員が書いてほしかったことが挙げられていますが、これを現場ですべて答案に書くことは絶対に不可能です。それにもかかわらず、これを全部書かなければいけないと思ってしまうと、勉強の方向性を大きく誤ることになりかねません。何をどの程度書けばいいのかというイメージを再現答案から学ぶといいと思います。再現答案を検討すると、A答案でさえ、天才的なことが書いてあるわけではなく、受験生ならば思いつくはずの当たり前のことが当たり前のように書いてあるだけだということが分かります。当たり前のことをどれだけミスなくこなせるか、これが受験生の目指すべき方向だと思います。
 また、過去問で出題された分野については、基本書等にも戻りながら、理解を深めるようにしました。しっかり勉強している受験生であれば、過去に問われたことがある分野が再度出題された場合には、きっちり点数を取ってきます。この部分の理解があいまいだと、書き負けてしまいます。刑訴の伝聞証拠や、行政法の原告適格や裁量などのように、繰り返し出題されている分野はもちろんのこと、1度でも出題されているものについては、しっかり理解するとともに、論述の仕方まできちんとマスターするようにしました。
 このように、基本7科目については過去問を中心に据えた勉強を行いました。過去問も、私が受験した時点で13年分ありました。これを7科目やるとなると、それだけでものすごい量になります。したがって半年間でやれることといえば、予備試験段階で身に付けた知識を忘れないようにしつつ、過去問演習で司法試験の形式に対応するということが限度かなと感じました。

 

 

4.論文式試験対策(選択科目編)

 選択科目については、テキストの薄さに惹かれ、国際私法を選択しました。選択科目の勉強を始めたのは予備試験の最終合格後からだったこともあり、ロー生には敵わないだろうと考え、最低限足切りには引っかからないようにという目標設定をしました。今考えれば、あまりにも目標が低すぎるので、せめて受験生平均を目指すべきであったと反省しています。
 勉強方法については、アガルートアカデミーの国際私法の講座を受講しました。20時間弱で国際私法全体を勉強することができるので、おすすめです。国際私法の講座をやっている予備校はあまりないので、私の周りではアガルートの講座を受講している予備試験合格者が多かったです。
 一通り知識を入れた後は、過去問を3年分解いて、答案の型を身につけました。国際私法は、検討順序、答案の書き方がほぼ一定なので、これについてはすぐに身につくと思います。その後は、テキストを読んで知識を固めることに集中しました。
 私がやった選択科目対策は以上です。時間に余裕がなく過去問を全年度分解くということもできませんでした。先程散々過去問の重要性を力説していたのにお恥ずかしい限りです。結局、勉強不足がたたり、選択科目については非常に悪い点数でした。当初の目標どおりといえばそうなのですが、もう少し点数を取りたかったところです。
 選択科目の勉強を、予備試験の最終合格発表後から始めると、かなり時間的にタイトになってしまい、やるべきことがやりきれない事態になってしまいます。予備試験の論文式試験が終わった後から少しずつでも勉強を始めていれば、もっとしっかり対策できたのかな、と今となっては思います。

 

 

5.最後に

 司法試験は、肉体的にも精神的にも厳しい試験です。体調をしっかり整えることも試験のうちです。失敗した科目があっても、引きずらずに、目の前の問題に集中してください。1、2科目失敗したところで十分に挽回可能ですし、自分で失敗したと思っていても意外に良い評価がつくことも珍しくありません。とにかく今やるべきことをひとつひとつこなしていくという意識を持ち続けてください。
 予備試験合格者は、予備試験合格の時点で基本的なことは身についていると司法試験委員会にお墨付きをもらっているので、相当なアドバンテージを持っているといっていいと思います。その力をキープしつつ、過去問演習で司法試験の形式に慣れていけば、司法試験は十分に合格可能だと思います。自信を持って、ただし慢心することなく、頑張ってください。

以上

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