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Home > 司法試験合格体験記・予備試験合格体験記 > 星野 拓哉(予備試験)

合格体験記 私の予備試験合格法

星野 拓哉

1.経歴

平成26年 明治大学法学部 入学
平成30年 明治大学法学部 卒業
平成30年 司法試験予備試験 合格
令和元年  司法試験 合格
 
 私が予備試験ルートを選んだのは、大学入学前に紆余曲折があり、明治大学に入学したのが普通よりも遅かったため、なるべく早く司法試験を受けたかったからです。そのため、法科大学院進学は一切考えずに、予備試験一本に絞って勉強しました。

 

 

2.論文式試験の勉強法

 論文式試験では、①問題分析能力及び論点抽出力、②論述の正確性、③答案の構成やバランス、書くスピードなどの、いわゆる書き方の3つが重要になってきます。①は問題演習によって、②は日々の学習(正確な論述のためにはしっかりした理解が特に重要です)によって、③は答練などによって鍛えることができます。各自の勉強の進み具合よって、やるべきことも変わってきますから、自己分析した上で、やるべきことを決定することが大切です。以下では、私が行った勉強の流れを書いていきます。
 論文式試験に向けてのファーストステップは、インプットです。まずは基本7科目の基礎的な知識をインプットしました。この段階では、早く7科目を回し切ることを重視すると良いと思います(予備校の場合、7科目を1年間で回しきります)。完璧に理解したり記憶したりすることは、この段階では無理ですから、分からないところはひとまず置いておいて、先に先に進むことが大切だと思います。使用する基本書等も、いきなり重厚なものを使うのは、心が折れてしまう可能性があるのでおすすめしません。例えば、刑法の『基本刑法』シリーズや、民訴法の『基礎からわかる民事訴訟法』など、試験対策も重視している本を使うといいと思います。もちろん予備校のテキスト等でも問題ありません。もっとも、早く回すといっても、ただ読み飛ばしているだけでは何も頭に残らないので、制度趣旨や保護法益など、それぞれの法律の根幹部分に着目しながら読んでいくといいと思います。また、条文が出てきたときは、面倒臭がらず、必ず六法をひいてください。この段階から六法に慣れ親しんでおかないと、後で絶対に苦労することになります。私は、苦労しました。反面教師にしてください。
 ある程度基本的なインプットができたら、典型問題を網羅している問題集を使って問題演習をしました。フルスケールの答案例が載っているものがおすすめです。予備校に通っている人は、予備校で提供されるテキストで問題ありません。インプットが完璧ではないからと、中々問題演習をしない人も多いですが、やめた方がいいと思います。問題演習をしなければ、何をどこまでインプットしなければならないのかが把握できません。問題演習(アウトプット)をしながらインプットをするというつもりでやっていました。基本的には、典型問題集に載っている問題を解くために使う知識が、予備試験に合格するためにインプットしていなければいけない知識だと思います。予備試験といっても、出題の7割程度は基本的な問題(簡単な問題という意味ではありません)で構成されています。この問題で確実に得点できるかどうかが、予備試験の合否を左右します。したがって、細かい知識を増やしていくのではなく、基本的な知識をしっかり深く理解し、使えるようにすることを目標にしていました。
 問題集を初めて解くときは、中々解けないと思います。分からないものをずっと考えていても時間が勿体ないので、10分くらい考えて、どうにもならなくなったら、すぐに解説や答案例を見ることにしていました。その際に、いくつか気をつけていた点があります。1つ目は、ある論点がどの条文との関係で問題となっているのか、それは問題文中のどのような事実に着目すれば気づけたのかという点です。法律の論点は基本的には条文の要件を検討する中で出てくるものですから、論点は条文と紐付けされて頭に入れる必要があります。また論点となるということは、問題文中の事実にどこかすんなりと要件に当てはまらない部分があるということなので、それがどこだったのかを逐一確認するようにしていました。2つ目は、個々の論点の論述方法です。答案で論点として展開されている部分は、必ず法的三段論法によって書かれています。なんとなく読み流すのではなく、ここは規範の部分、ここはあてはめの部分、ここは結論の部分と、法的三段論法のどの段階の論述なのかを意識していました。これにより、法的三段論法の使い方を身に染み込ませました。論文式試験は法的三段論法ができていないと、全く点数が伸びてこないので、しっかりと身につけなくてはならないと思います。3つ目は、答案全体がどのような流れで書かれているのかという点です。個々の論点から少し視野を広げ、全体の流れを押さえて、答案の型を習得するようにしていました。憲法における三段階審査、刑法における構成要件・違法・有責の流れ、行政法における原告適格の書き方など、論文式試験には押さえておくべき答案の型があります。この答案の型、論述の大きな流れを意識することが大切だと思います。このような点に気を付けつつ問題演習を行っていました。もちろん知識があいまいな部分があれば、基本書に戻って確認をしました。最初のうちは、ほとんどすべての項目で基本書に戻ることになると思いますが、へこたれないでください。このように問題集と基本書を行ったり来たりすることで、アウトプットの方法を身に付けながら、必要な限度でインプットをするようにしていました。
 基本的なアウトプットができるようになったら、早い段階で予備試験の過去問を解き始めました。予備試験が求めているレベルや問題を解くスピード感は、過去問を解くことで一番身につきます。またよく分からない問題が出た時の逃げ方も、過去問演習なくしては身につきません。過去問はもったいないから最後までとっておくという人もいますが、なるべく早く解いて、予備試験のレベル感を掴むことが大切だと思います。私は、予備試験の過去問演習は自主ゼミを組んで、全科目全年度分行いました。答案を読み合うことで、自分では気づかなかった欠点や思い込みを正したり、他人の答案の良いところを真似したりすることができ、答案のレベルアップを図ることができました。
 さらにアウトプットの訓練として、答練も活用していました。家で問題を解いているのと、教室に来て70分で問題を解くのでは、やはり感覚が違います。答練によって70分の時間の使い方を体に染み込ませるようにしました。また、自分では適切な論述ができているか分かりにくい部分があるので、添削で指摘された部分はしっかりと直すようにしていました。
 最後に、予備試験特有の科目である法律実務基礎科目について少しだけ書きます。法律実務基礎科目の点数と論文式試験の合格率には強い関連があるので、この科目で良い点数を取ることが論文式試験合格のための重要なポイントだと思います。もっとも法律実務基礎科目は、民法・民訴・刑法・刑訴の知識に加えて、特有な部分を少しだけ足すだけで解けるようになるので、コスパは非常に良い科目です。まず民事に関しては、なんといっても要件事実です。これに関しては『民事裁判実務の基礎 入門編』で勉強しました。気を付けたことは、要件事実の丸暗記に走らないということです。要件事実は民法の条文から導くことができるものなので、なぜこの条文からこの要件事実が導かれるのかを理解するようにするといいと思います。その意味で詳しめの解説が載っている上記の本をおすすめします。最終的には訴訟物や請求の趣旨、請求原因事実などは頭に入っていなければなりませんが、まずは理解を優先するべきだと思います。刑事に関しては、勾留や保釈、公判前整理手続などが、法律実務基礎科目特有の事項です。刑事で必要な知識は『刑事実務基礎の定石』で勉強しました。必要なことがコンパクトにまとまっていておすすめです。法律実務基礎科目全体としていえることは、とにかく過去問で出たことが、繰り返し出題されています。民事だと保全や、準備書面の書き方、刑事だと公判前整理手続や勾留・保釈、直接証拠と間接証拠の区別などが毎年のように問われています。これらの超頻出事項については、過去問演習を通じて書き方も含めてしっかりと押さえておくといいと思います。

 

 

3.短答式試験の勉強法

 短答対策については、過去問演習がすべてです。過去問を解く。間違えたところやあいまいだったところはチェックをして、普段使っている基本書等で確認する。少し時間をおいて、間違えたところを再度解く。このサイクルを繰り返しました。これしかやっていません。ただ、これだけだと芸がないので、少しだけ戦略を書きたいと思います。
 まず、短答の過去問演習はなるべく早く始めるようにしました。過去問演習だけでいいといっても、その過去問が莫大な量なので、早く始めないと解き終わらないおそれがあります。特に短答式試験を初めて受ける人や前年不合格だった人は、過去問を1周終わらせるのにもかなり時間がかかると思うので、夏くらいを目安に少しずつ始めるといいと思います。私は、前年に過去問を3月から解き始めて、全く終わらずに、短答で不合格になりました。その反省から、早めに対策を始めることにしました。
 次に、無理に高得点を狙わないようにしました。短答はやろうと思えば無限にやることがあるので、どこかで区切りをつけないと論文の勉強を圧迫してしまいます。予備試験では短答式試験の点数は、論文式試験の点数に加算されないので、合格すればいいやくらいの感覚でいました。異論はあると思いますが、少しだけ余裕を持って175点を狙うくらいでいいと思います。
 また、勉強の優先順位としては、①民法・刑法・民訴・刑訴、②憲法・行政法、③商法としていました。民法・刑法・民訴・刑訴については、口述試験で細かい知識が聞かれることがあるので、この段階で一度細かいところまでやっておくと、口述のときに楽になります。憲法、行政法については、短答の勉強をする中で重要判例を押さえておけば、論文の勉強にもなります。他方、商法については、短答プロパーの知識があまりに多すぎてコスパが悪い上に、論文であまり役に立たないので、優先順位は下げていました。
 一般教養については一切勉強しませんでした。現場で必死に解ける問題を探せば、必ず何問かはあるはずです。解ける問題を見逃さないようにすることだけ気を付けてください。理系の問題でも意外と常識で解ける問題が隠れているので、文系だからといって見もしないで捨ててしまうのは勿体ないと思います。

 

 

4.口述試験の勉強法

 口述試験は、ほとんど落ちない試験ですが、決して簡単な試験ではありません。論述式試験に合格した人たちが、胃を痛くしながら対策をしているからこそあの合格率なのであって、甘く見ていると大変なことになるので気を付けてください。
 論述式試験に合格したら、すぐに予備校の口述模試を申し込みました。模試のおまけで過去の口述再現がもらえる(伊藤塾はもらえます)ので、口述再現を手に入れてどのようなことが聞かれているのか、どのように答えたらいいのかを把握しました。もちろん模試自体も、口述の雰囲気を掴むのにとても役に立ちました。
 具体的な勉強としては、口述のために新しく知識を入れることはせず、今までやってきた民法、民訴、刑法、刑訴の復習をしました。口述再現の検討で聞かれることを把握したら、出そうな部分は特に集中的に行いました。基本的な要件事実については民事系の最初に必ず聞かれるので、訴訟物や請求原因事実、抗弁事実等までスラスラ言えるように精度を高める必要があります。また刑事では細かい手続きが聞かれることがある(私のときは、遮蔽措置が聞かれました)ので、刑訴の条文は規則も含めて、素読しておくといいと思います。

 

 

5.最後に

 予備試験は合格率だけ見ればとてつもなく難しい試験のように見えますが、実際に問われていることは基本的なことが大半です。高度な勉強をする必要はありません。条文をおろそかにすることなく、基本事項をひとつひとつ理解していけば、必ず解けるようになります。長丁場の勉強になるので、焦らず、楽しみながら、息抜きも忘れずに、一歩一歩勉強していってほしいと思います。

以上

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