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合格体験記 私の司法試験合格法

高村 実

 

はじめに

 令和元年9月10日、私は司法試験に合格した。これまでの入学試験を成功とは言い切れなかった私にとっては、24年の努力が実を結び、大輪の花を咲かせた気分である。否、執念が現実に形となって権化したともいえる。何より、机に座って紙や本とにらめっこするだけの勉強はしなくてもよい、あの張り詰めた会場の緊迫感を何度も味わわなくてもよいという解放感も大きい。
 さて、私の合格体験記に目を通す読者の方には、一つ注意しておきたいことがある。これから述べることを実行しようとする方がいるならば、くれぐれも無理のない範囲で実行してほしい。人それぞれ個性があり、向き不向きも人によって違う。そのやり方が自分に合うかどうかは、本人にしか分からないことである。したがって、参考にする分には構わないが、自分の能力や生活スタイルにあわせてカスタマイズし、決して鵜呑みにして突っ走るような真似はしてほしくない。この点を踏まえて読むよう願う。
 
 

1.筆者のこと

⑴ 経歴
  まず、筆者自身の経歴を簡単に紹介しよう。
 平成6年12月 出生
 平成25年3月 鎌倉高校卒業
 平成29年3月 中央大学法学部政治学科卒業
 平成31年3月 明治大学法科大学院卒業
 令和元年9月 司法試験合格
 
⑵ 法曹志望の動機
 人生は人の数だけ存在し、一人の人間が経験できることには限界がある。ましてや、離婚や犯罪については経験しない人の方が多数であろう。当事者に寄り添い、経験を享有することが、当事者の利益を最大限に引き出すことができるとともに、私の人生を豊かにしてくれるのではないかと思った。幼い頃はどこへ行って何を見ても何も感じることができず損をしてきた過去を持つ私が成長するために、法曹を志望した。
 
 

2.勉強方法

 私は、短答式の勉強と論文式の勉強というのをあまり意識していない。というのも、短答で問われる知識が論文で問われること、その逆のパターンもあると思ったからである。そう考えると、分けて考える場合の半分の手間と時間で済むわけで、効率が良い。そこで、まずは総論を述べた上で、特有の勉強方法を各論的に述べることにする。
 
⑴ 総論
 私は、授業がない限りは、平日の午前10時から午後5時まで自習室で勉強し、あとは自宅で勉強するという生活を過ごした。入学前のガイダンスで「セブンイレブン」(午前7時から午後11時まで)を提唱する先生もいたが、通学に1時間半もかかってしまう私が実行すると、睡眠時間が4時間採れるか絶望的になってしまう。午後5時は早すぎると思う方もいるであろうが、これにもちゃんと理由がある。人は寝ている間に直前に記憶したものから順番に脳が整理しているのだという。つまり、インプットしてから間髪入れずに寝るのが一番記憶しやすいのである。寝る前の暗記の時間を私は「記憶のゴールデンタイム」とか「記憶のバイキング」と呼んでいる。
 記憶するために私が使っていたのは、授業で配られたレジュメである。これが便利なのは、テーマごとにナンバリングされていて、内容がある程度整理されていることである。そこで私は、テーマをレジュメに書かれている順番通りに覚えて目次を作り、それから内容を覚えて深化させていく。つまり、頭の中で基本書を作っているのである。本番で実際に基本書を開くことができなくても、頭の中で探す分には何の問題もない。また、記憶する時は、目だけではなく、口や耳・手も使い、まさに五感の作用をフルに活動させるのである。直前の2カ月ぐらいは、ディスカッションルームに一人でこもって、ホワイトボードを使いながら、まるで教える側に立つ気分でインプットに拍車をかけた。
 一日ではなく、期間という長いスパンとして見た時、授業がある期間はインプットが中心で、長期休暇はアウトプットが中心であった気がする。というのも、定期テストで良い点数をとって単位を落とさないようにするために、知識を入れて完璧な状態で臨むからである。つまり、その後に訪れる長期休暇の間、時の経過によって知識が抜け落ちないように維持する作業を行っていることになる。ただ、民法は覚えなければならないことが多く、授業で全てをじっくり扱うことは当然不可能である。そのため、毎日「記憶のゴールデンタイム」を使って、民法の基本書を10ページ前後じっくりと読み込んでいた。授業期間中は、基本的にはそれと授業の課題をこなすぐらいで、過去問を解くのはどちらかといえば長期休暇が中心であった。
 
⑵ 各論
 まず、短答式の勉強については、TKCのサイト内の「基礎力確認テスト」や「過去問」の問題を解いたり、法制研究所の「短答特訓講座」を受けたりした。民法に関しては、大体消去法で対処できるが、憲法や刑法に関しては、全ての肢が分かっていないと点がもらえなかったり部分点しか入らなかったりする。そこで、憲法や刑法に関してはこれだけでは足りないと思った私は、問題集も使って補った。また、何回も間違える肢については、一問一答形式でWordにまとめ、本番直前まで手軽に確認できるようにした。
 次に、論文式の勉強については、結果的に選択科目も含めて10年分の過去問を、時間を計って解いた。2年生の夏休みから憲法・民法・刑法を中心に始めた。この3つについては入学試験である程度は全体的に理解しているはずであり、何よりも2時間以内に答案を仕上げるために、敵を知り、慣れる必要があったからである。作成した答案は、出題の趣旨や採点実感、予備校の出している優秀答案集を参考にしながら、客観的に修正を加えて、オリジナルの優秀答案を作った。なお、本番の1ヶ月くらい前に、論点が何で、この場合はどう書くかを大雑把に確認する形で、8年分をもう一回さらっと目を通した。
 10年も過去問を解けば、よく出る典型的な論点については、自然と書くことが固まってくる。ただ、何回やってもどう書けばいいか迷ってしまうような論点もあり、民法については頻出といわれるようなものがあまりない。そのため、これらに限って、基本書やレジュメを参考にしながら、論破といわれるものを作り、本番直前も確認するために見ていた。
 
 

3.その他

 私は、選択科目として国際公法を選んだ。毎年選択者が少ないマイナーな科目で、詳しくは知らない方が多数であろうから、別個に項を設けて述べる。また、模試の使い方・本番の過ごし方についてちょっとしたこだわりがあるので、その点についても触れる。
 
⑴ 選択科目
 先にも述べたとおり、私は政治学科卒業であり、学部生の頃は国際政治を中心に履修し、勉強していた。こうした背景もあって、国際公法であれば司法試験を有利に戦えると思ったのである。現に憶測が的中し、72点もとって国際公法は2位になった。
 おっと、少し自慢が入ってしまった、ご容赦。確かに、今までに比べれば問題が簡単な傾向にあるが、正直よほど自信を持てるような事情がない限りは、おすすめしない。条約を国内裁判において適用できるか否かといった国際人権法分野以外は、実務において使う機会がないというのもあるが、他にも他の科目と重複する所がほとんどないために、関連させ難く理解に時間を要したり、現在の国際情勢をある程度把握しておく必要があったりする。例えば、私が合格した年の問題に関していえば、環境保護団体は、オーストラリアの反捕鯨団体「シーシェパード」と似ており、これが「海賊」にあたるかが問われたように感じた。私は普段から新聞を読んでいたので、すぐにピンときた。こうしたことから分かるように、多少なりとも国際政治について弁えていなければ、選択科目に割く時間が多くなり、足かせになりかねない。
 勉強方法は、基本7科と同じなので割愛する。一方、みんな読んでいるといわれるような基本書がなく、何を読んで学習すればよいか分からないという方もいるであろう。そこで、私が使っていた物をいくつか紹介する。私が基本書として使っていたのは、杉原高嶺氏の『基本国際法』であり、辞書として使っていたのは、同氏の『国際法学講義』である。前者で要点がまとめられており、足りない部分や理解の浅い部分を補う形で後者を使っていた。判例の勉強は基本百選で足りるが、私が使っていた当時は2011年までの判例しか掲載されておらず、それほど判例は増えないため更新するまでのスパンが長い。そのため、杉原高嶺氏の『国際基本判例50』の新しい判例の部分を図書館で印刷するなどして、アップデートしておく必要はある。また、ポケット六法には、本番で参照できる条約のうち掲載されていないものもあるので、毎年買い替える必要はないが、条約集は必携である。
 
⑵ 模試・本番
 模試で私が意識していることは、自分の素の力を知ること。だから、前日は、次の日の教科を避けた。むしろ、勉強しないという選択肢もあった。ゴールは、模試でいい点をとることではなく、司法試験に合格することであり、どうせ司法試験が近づくにつれて付け焼刃をするのである。100%又はそれ以上の力を出して模試の結果が良くなかった時、それ以上の力を出すことは簡単なことではない上、どこが理解できなかったのかを把握するのが難しい。逆にありのままで挑んで結果が出なかったとしても、自分は成長するだけでこれを下回ることはないと思える。本気を出せばもっと伸びると思えるだけでかなり余裕が生まれる。
 特に、直前の模試は、本番と同じスケジュール・同じ会場でできたので、会場への行き方、休憩時間の過ごし方、前夜の使い方等を含めて時間を綿密に織り込んでシミュレートする機会にした。こうすれば、近くのコンビニは混むから、ちょっと遠めの所まで行こうとか、トイレの混み具合を勘案してどれだけ時間を作れるのか、想定外を最小限にすることができる。正直、内容としては大失敗してもよかったのであるが、民事訴訟法が全体で17位と意外と良かった。少し自慢が過ぎてしまったが、赤の他人にこのような評価をされたことで、論文式に関しては自信がついたのは確かである。
 事前にシミュレートしたおかげで、ほぼ問題なく試験に集中できた。本番は、事例からどういう問題かを読み取るために、ひらめきが必要であると思ったため、知識を維持しながら脳を柔軟かつフレッシュにしようと考えた。そのため、まず一夜漬けは絶対にせず、むしろ通常より30分早く寝た。私が試験を受ける際のルーティーンみたいなもので、一夜漬けをしても記憶量が増えるわけないと思っているので、一度もやったことがない。また、試験の合間に10分程度昼寝をした。偏差値の高い高校では昼寝の時間があるくらい重宝されているらしいが、昼寝をすることで疲れて脳の動きが鈍い状態からリフレッシュできる。
 
 

おわりに

 自分で体験記を書いてみて分かった合格の秘訣は、やり込むこととよく寝ることの二つだけであると気付いた。最初に断るほど大変でもなかった。だが、これも最初に述べたことだが、効果には個人差がある。他の体験記と比べて特殊であることは一目瞭然であろう。
 ただ、唯一共通していることを挙げれば、最後まで諦めないことであろう。人生何があるか分からないのと同じように、一科目失敗しても他の科目で挽回できる可能性だってある。「できる」か「できない」か、分からない状態で「できない」と決めつけるのは、怠慢である。だから、読者の方には、最後まで諦めずにやり遂げ、走り抜けてほしい。そして、早くあの解放感を味わってほしい。こっちの世界は自由だぞ~。

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