合格体験記 私の司法試験合格法
竹之内 宏将
2017年3月明治大学卒業
2019年3月慶應義塾大学法科大学院修了
1.はじめに
私は、中学2年生の時に、検察官をモデルとしたあるドラマの再放送を見て、検察官になりたいと思いました。大学受験を意識する頃、司法試験の合格率の高い法科大学院をもつ大学に進学することを決め、明治大学の法学部に進学しました。そして、大学1年生の時から司法試験の受験を意識して勉強を開始しました。大学4年次に予備試験を受けるも(受かる気もなかったですが)落ちてしまったので、慶應義塾大学法科大学院に進学し、今年、既修コースを修了し1発で合格することができました。この6年間の間、予備校の講座をほぼ使わずに基本書をベースとして勉強してきました。この体験記が皆さんの勉強の参考になれば幸いです。
2.学部時代
大学1年次は、法制研に所属していましたが、授業の内容が合わなかったので、自分で勉強していこうと決めました。そこで、私が選択したのが、基本書をベースに知識をつけつつ予備校の市販している本の内容を修正していくという勉強方法です。具体的な勉強方法や使用した書籍については後述します。また、サークルの先輩から基礎的な論文指導を受けて、論文を書き始めました。
大学2年次は、法制研の授業を少し真面目にやっていましたが、ほとんど遊び惚けていました(笑)。
大学3年次から、バイトや遊びをしながらもしっかり勉強時間を確保するようにして、基本7科目を勉強しました。この時から、自主ゼミを始め、メンバーの1人が早期卒業で法科大学院を受験するため、ロー入試の過去問を解いていました。
大学4年次は、自主ゼミを続けながら、予備試験の短答対策のために短答パーフェクトを解いていました。メインは論文対策として、自主ゼミで論文をたくさん書きました。この時は、勉強時間は平均して10時間ほどだったと思います。
ロー入試の勉強は、趣旨規範ハンドブックに付箋に書いた論証を貼っていく作業をしていました。その際、基本書や百選等を使って、理由づけから丁寧に考えてまとめるようにしていました。論文を解く際は、問われている論点が何かは当然ですが、あてはめで重視すべき事実は何か、どのようにあてはめるかを意識しながら勉強していました。時間は無制限で書いていました。演習書を使うときは、答案構成10分と決めて頭の回転を慣らすようなことをしていました。
3.法科大学院時代
私は、ロー入試直後から前記自主ゼミで司法試験論文の過去問を解いていました。ロー入学後もこの自主ゼミを続けました。
また、法科大学院では、授業を大事にしつつ、基本書を読み趣旨規範ハンドブックをまとめる勉強法を継続していました。ただ、授業で教えられることを鵜呑みにすることなく、ちゃんと自分でも確認しながら修得するようにしていました。また、授業では正直無駄なこともあります。ですので、適宜、これは必要な情報、これは無視、というように自分で取捨選択していました。これは、先生によって教えるのが上手い下手がありますし、雑談が多い先生がいたりするので、時間を有効活用するために必要です。
前記自主ゼミはロー2年生の5月に終了したので、後期から新しくローの友達と自主ゼミを組みました。やることは全く同じでした。
勉強時間は、平均して12時間ほどでした。朝9時~夜22時過ぎまで学校の自習室で勉強していました。基本書を読むことを重視していたため時間がかかるので、勉強時間はこれくらい必要になるのかなと思います。
4.私の勉強法―基本書ベース
私は、基本書・参考書といわれる学者の方が書いた本を中心に勉強しました。基本書や参考書で得た知識を趣旨規範ハンドブックなどの予備校が出版しているまとめ本に書き込んで、情報の一元化をしていきました。
基本書の読み方は、基本的には、
①基本書を初めから最後まで素読(マーカーなど一切引かずに読む)する。
②重要なところ等にマーカーやアンダーラインを引きながら読む。
③3回目以降は、全体を読むなり、色の付いたところだけを読むなりする。
この流れで読んでいました。マーカーの付け方は、定義が青、趣旨や理由が緑、論点の結論がオレンジ、その他重要そうなところが黄色でした。百選など判例集は、判旨のうち論点の結論部分など特に重要な部分にオレンジのアンダーラインを引き、さらに上記の区別でマーカーを引いていました。こうすることで、3回目以降や問題演習の際に読むときに、どこに何が書いてあるかすぐ分かるので、時間短縮や意識した読み方をすることができます。
次に、こうして得た知識を趣旨規範ハンドブックなどにまとめる方法です。趣旨規範ハンドブックなど予備校が出版しているまとめ本は、まっさらな状態では全く使い物になりません。自分なりにいろいろ手を加えてまとめ本として完成させることで意味のあるものになります。修正する必要がない部分、つまり基本書等の記載とほぼ同じ部分は、そのままにして上記の区分でマーカーを引いたりしていました。基本書等の記載と異なり修正する必要がある部分は、シャーペンで斜線や横線を引き空いてるスペースに赤ペンで修正後の知識をメモします。または、付箋に書いた上で、該当部分に上から貼り付けました。論点の箇所については、多くの部分で、付箋に論証を書いて該当部分に上から貼り付けていました。結論と理由を簡潔にまとめられていて文章化するには一苦労すること、理由づけが理由として不十分なことから、自分で文章化した論証を貼り付けていました。上から貼ると元々の記載が見にくくなりますが、付箋さえ見てれば十分なので問題はありません。
付箋を貼り付ける際、その裏に、参考にした本の頁や百選番号等出典をメモしておきます。なぜなら、その論証を数か月後や1年後、司法試験直前期に見返したときに、論証が正しいのか不安になることがあり、その不安を解決するのに出典が書いてあれば短時間でその不安を解消することができるからです。
この方法は、演習書を使用する際にも行っていました。解説部分についてマーカーを引き、適宜趣旨規範ハンドブックにまとめます。
5.書籍類
ここで、私が使用した書籍類を紹介していきます。なお、ここに挙げている書籍の版は、改正民法対応前のものですので、ご注意ください。
⑴ 基本書
憲法 | 「憲法 芦部信喜」 |
行政法 | 「行政法 櫻井敬子・橋本博之」、「基本行政法 中原茂樹」 |
民法 | 「民法の基礎1 佐久間毅」、「民法の基礎2 佐久間毅」、「担保物権法 松井宏興」、「債権総論 中田裕康」、「基本講義 債権各論Ⅰ 潮見佳男」、「基本講義 債権各論Ⅱ 潮見佳男」、「家族法 民法を学ぶ 窪田充見」 |
商法・ 会社法 |
「リーガルマインド 商法総則・商行為法 弥永真生」、「リーガルクエスト 会社法 伊藤靖史他」、「会社法 高橋美加他」 |
民訴 | 「講義民事訴訟 藤田広美」、「リーガルクエスト 民事訴訟 三木浩一他」 |
刑法 | 「刑法総論 西田典之」、「基本刑法Ⅰ 大塚裕史他」、「基本刑法Ⅱ 大塚裕史他」 |
刑訴 | 「リーガルクエスト刑事訴訟法 堀江慎司他」 |
労働法 | 「リーガルクエスト 労働法 水町勇一郎」、「労働法 水町勇一郎」 |
⑵ 参考書・演習書
憲法 | 「憲法論点教室 曽我部真裕他」、「基本憲法Ⅰ 伊藤たける他」、「憲法の地図 条文と判例から学ぶ 大島義則」、「憲法判例の射程 横大道聡」、「憲法ガール 大島義則」、「憲法ガールⅡ 大島義則」、「憲法の急所 木村草太」、「えんしゅう本 憲法」 |
行政法 | 「行政法解釈の基礎 「仕組み」から解く 橋本博之」、「事例研究行政法 北村和生他」、「基礎演習行政法 土田伸也」、「実戦演習行政法 土田伸也」 |
民法 | 「事例で学ぶ民法演習 松久=藤原=池田=曽野」、「えんしゅう本 民法」 |
商法・ 会社法 |
「事例で考える会社法 田中亘他」、「会社法事例演習教材 前田雅弘他」 |
民訴 | 「解析民事訴訟 藤田広美」、「論点精解 民事訴訟法 要件事実で学ぶ基本原理 田中豊」 |
刑法 | 「刑法総論の思考方法 大塚裕史」、「刑法各論の思考方法 大塚裕史」、「刑法事例演習教材 井田良他」 |
刑訴 | 「事例演習刑事訴訟法 古江頼隆」、「捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講 佐々木正輝他」、「刑事公判法演習 理論と実務の架橋のための15講 廣瀬健二編」、「エクササイズ刑事訴訟法 粟田知穂」 |
労働法 | 「事例演習労働法 水町勇一郎」 |
⑶ 判例集
判例百選は全科目について使用していたので、それ以外について挙げていきます。
行政法 | 「ケースブック行政法 稲葉馨他」 |
民法 | 「民法判例集 総則・物権」、「民法判例集 担保物権・債権総論」 |
刑訴 | 「ケースブック刑事訴訟法 井上正仁他」 |
労働法 | 「ケースブック労働法 有斐閣 荒木尚志他」 |
⑷ 予備校の出版している本
「趣旨規範ハンドブック 民事系」、「趣旨規範ハンドブック 刑事系」、「1冊だけで労働法」、「択一六法 民法」、「択一六法 憲法」、「択一六法 行政法」。
6.科目別に。
⑴ 憲法
憲法は、出題趣旨と採点実感を読めば分かるとおり、基本的な知識に加え判例を意識した答案が求められています。ですので、参考書・演習書の項目で挙げた本を読んで、判旨の意味や判例相互の関係性などを理解することに努めていました。「憲法論点教室」は、憲法を勉強していてぶつかる疑問に答えてくれる本で、違憲審査基準の整理などに役立ちました。
「趣旨規範ハンドブック 公法系」が個人的に合わなかったので、先輩や友達からもらったまとめデータを利用して、自分なりのまとめノートみたいなものを作っていました。加えて「択一六法 憲法」を論文対策にも使用していました。
憲法は、司法試験の過去問が最良の演習になります。ですので、特に演習書を買うことはせず、過去問を3,4回回しました。その際、参考答案として、「論文過去問答案パーフェクトぶんせき本」と「憲法ガール」を使用していました。「憲法ガール」は判例を意識した問題検討、参考答案が記載されているので、判例の使い方や事情の拾い方などの参考にしていました。
⑵ 行政法
私は、大学では行政法の授業を一切履修していませんでしたが、行政書士試験を受験したので、試験勉強の際に、「サクハシ行政法」を4,5回通読しました。そのおかげで、行政法の基礎的知識を理解し覚えることができました。そこでの貯金がその後も活きてきて、ロースクールにおいては、「基本行政法」を使用しつつ判例の勉強を中心にしていました。
行政法においても、「趣旨規範ハンドブック 公法系」が個人的に合わなかったので、「択一六法 行政法」にまとめていました。「択一六法」は、条文・判例・定義などがコンパクトにまとめられており、メモできる余白があり、論証は付箋にまとめて貼り付けることができたので重宝していました。
問題演習については、まず使用したのが「基礎演習行政法」です。問題文が短く、解説が丁寧なので、初めて行政法の問題を解くのにお薦めです。3周ほど解いた後、物足りなさを感じたので、「事例研究行政法」を使用しました。問題文が司法試験と同様の形をとっており、個別法も司法試験との関係で重要なものを使用するなど、司法試験対策に最良の演習書だと思います。「実戦演習行政法」は予備試験の解説本です。短時間で消化できるので2周ほど解きました。行政法は、出題される論点が限られており対策しやすい科目ですが、難しいのが個別法解釈です。そこで、「行政法解釈の基礎 「仕組み」から解く」を使用しました。司法試験の過去問を使いながら、個別法解釈の方法を学ぶことができ、個別法解釈の苦手意識を克服できます。
司法試験の過去問は、平成30年~平成26年くらいを解きました。解き始めたのが遅かったため、勉強時間との兼ね合いでこれだけしか解くことができませんでした。ただ、それ以外の年度には軽く目を通して、どんな問題・個別法が出されているのかを把握していました。
⑶ 民法
上述の基本書ベースの勉強法を一番忠実に行っていたのが民法です。基本書を読んでは趣旨規範ハンドブックの記載と照らし合わせて、趣旨規範ハンドブックの内容を基本書の内容に書き換えたり、論証やメモを記載した付箋を貼って自分だけのまとめ本にしていました。その際、判例が出てきたら、百選や判例集で判例の事実及び判旨を確認しながら、正確な理解に努めていました。個人的に、条文があれば六法を引くのと同じ感覚で判例があれば判例集を引くみたいな感じでした。大学時代は基本書を読んで趣旨規範にまとめるだけで、ロースクール時代に判例をより意識した勉強にシフトしました。
⑷ 会社法
基本書は、大学時代は「リーガルクエスト」を使用し、ロー入試直後から、先輩の薦めで「会社法 高橋美加他」を使用していました。個人的に、条文の趣旨などを丁寧に書いている後者の方が好きでした。
「会社法事例演習教材」は、解答データを友達から入手したので、適宜論証を参考にしながら読み物として使用していました。読んだのは1度だけです。
司法試験の過去問は、平成24年~平成30年まで解きました。会社法は平成26年に大改正があり、平成26年以前の問題は、改正前を前提に作られており、出題趣旨や再現答案を読む際に現行会社法でどうなるか注意する必要があって時間がかかるため、ほとんど解きませんでした。
⑸ 民事訴訟法
基本書については、「リーガルクエスト 民事訴訟法」、「講義民事訴訟」を同時並行で使用していました。両者はタイプが違うのでその時その時で必要な記載がされている方を使用するという感じです。
問題演習については、一番悩みました。丁度いい演習書が見つからなかったからです。「ロープラクティス」などいろいろありますが、どれもイマイチに感じてしまい、結果、「解析民事訴訟」を基に旧司を解くことにしました。これは、パソコンでちゃんとした答案を作っていました。民訴は特に定義や趣旨の理解などが難しく、答案構成だけでは十分な力がつかないと考えたからです。ただ、旧司の答案を書くのは時間がかかるのでパソコンで作ることで時間短縮を図っていました。
⑹ 刑法
大学時代は、西田や大谷、川端などの基本書を読みましたが、最終的には「基本刑法」に落ち着きました。それとあわせて、「橋爪連載」をコピーして読んでいました。今では、大塚先生の連載「応用刑法」があるのでそれを読むのも良いと思います。両方読む場合は、「橋爪連載」から読むと物足りなさを感じるかもしれないので、「応用刑法」から読む方がいいと思います。
「刑法事例演習教材」は最高の演習書です。4,5回は回しました。
平成30年度の司法試験では、形式変更があり、学説対立を勉強しておく必要が出たので、それまで勉強してきたことを学説も意識して丁寧に復習し直しました。もっとも、全ての学説対立を見直すのではなく、判例が確立しておらず論文で問われてもおかしくない論点を見直しました。令和元年司法試験の事後強盗罪は良い例です。このような論点を見極めるのは難しいですが、基本書・演習書などの書籍や司法試験の過去問に真剣に向き合うと分かるようになるかなと思います。
⑺ 刑事訴訟法
刑事訴訟法は、演習書が最も充実している科目ですので問題演習には困りません。大学時代に古江を使用し、ロースクール時代は「エクササイズ」を使用しました。どちらも3,4回は回しました。「捜査法演習」及び「公判法演習」はロースクール時代に参考書として使用し問題演習に使用していません。これらの本にしか書いていない細かい知識で試験対策に必要なものが書いてありました。多くが再現答案などを見れば済むものですが、個人的に正確な裏付けが欲しかったので使用していました。
⑻ 労働法
労働法をしっかり勉強し始めたのはロースクールに入ってからです。ロースクールの授業で「リーガルクエスト」と「ケースブック」を使用し、個人的に「水町労働法」で補い、得た情報を「1冊だけで労働法」にまとめるという勉強をしていました。適宜百選も使用しながら判例の勉強をしました。私の通っていたロースクールは労働法の授業の質がとてもよく、そのおかげで労働法の勉強は比較的楽でした。
「事例演習労働法」を使用しながら、各論点の論証の仕方、論述する順番などを勉強していました。解説がほぼ答案例のようになっていて、問題提起、論証などを色分けして囲うことで、どこに何が書いてあるか分かりやすくしていました。
7.試験対策
⑴ 短答式試験の対策
私は、辰巳法律研究所の出版している「短答過去問パーフェクト」と「単年版短答詳解」を何周も回していました。やり方は、年度別ではなく頭から解いていきました。解いて解説を読んだら、解説にマーカーを引くとともに択一六法の該当箇所にアンダーラインやマーカーを引くなりしてチェックを付けます。出題傾向を踏まえるために、年度、問題番号、肢も記載しました。例えば、平成29年度民法第15問肢エの問題だと「29-15-エ」になります。何度も間違えたり、正解したとしても消去法で正解した問題は、択一六法に付箋を貼っていました。出題傾向などを択一六法に記録しておくことで、電車内や試験本番の直前の確認等が楽になりました。刑法については、簡単な事実がありそれを基に〇〇罪が成立するかという問題が多いので、特にまとめ本を作ることはせずポケット六法の条文に線を引いたりしただけです。
短答過去問パーフェクトと単年版短答詳解は、6年間の勉強期間で5、6回回しました。単年版を使用したのは、毎年パーフェクトを買い替えるのは大変ですし、過去に解いた際の記録が消えてしまうのは困ると考えたからです。
⑵ 論文式試験の対策
論文式試験の対策というか論文過去問のやり方ですね。私は、大学4年次のロー入試直後から自主ゼミで司法試験の過去問を解き始めました。だからといって、司法試験を解けるだけの力があったわけではありません。分からなくてもいいから問題を解くことで司法試験のレベルやそのレベルと自分の力との距離などを把握し、合格するために自分には何が必要なのかを知ることが目的の一つです。自分に解く力がないと考えて過去問を解くのを後回しにしていてはいつまでたっても過去問を解くことはできないでしょう。
1回目は、時間無制限で論証集や答案例を見ながら答案を作成していました。その際、ただ書き写すのではなく、なぜこの論点が必要なのか、問題に合わせて論証を変える必要がないのかなど考えながら書いていました。時間を計って書いたところでゴミみたいな答案しか書けず何の力にもならないと考えたからです。2回目も同様です。3回目で、時間を計って答案作成しましたが、論証集はガンガン見ながら書いていましたし、普通に時間オーバーしていました。
8.自主ゼミ
私は、大学3年次に同級生3人と自主ゼミを組みロースクール1年目の夏まで継続しました(自主ゼミ①)。その後解散したので、別の友達3人と自主ゼミを組み司法試験直前期まで継続しました(自主ゼミ②)。組む時のポイントは、自分よりも優秀な人を誘うことと遠慮せずに言い合える関係の人を誘うことです。前者は、そのゼミで自分が一番優秀だと成長しにくいからですし、後者は、遠慮して言いたいことが言えない場合自分や相手の答案を改善することはできないし、知識などが間違った方向性のまま修正されないからです。個人的に、自主ゼミは4人がちょうどいいと思います。1人休んでもゼミを行えるし、場所は確保しやすいし、日程調整がしやすいからです。
自主ゼミ①と②のやり方は同じで、司法試験の過去問を扱い、各自で問題を解いてきてゼミで答案の検討をするというものです。毎週1回行い、ある年の1科目(ex.平成18年の憲法)、つまり1問だけ扱いました。夏休みなど時間に余裕があるときは、週2回行い、1回あたり2問くらい扱いました。だいたい1問あたり2時間ほど議論していました。議論の内容は、学説対立を扱うのではなく、どういう答案が優秀なのか、この論点やあてはめはどう書くべきか、この論点のこういう理解は正しいのかといった点を議論していました。学説対立を議論したところで答えは出ないですし本を読めば済むことなので、気になる場合は事前に自分で消化してから自主ゼミに臨むようにしていました。
自主ゼミ②のメンバーは選択科目がバラバラだったので、私は選択科目については自主ゼミをしていません。自主ゼミを2つ掛け持ちするのは自分の勉強時間との関係で厳しかったからです。
9.アドバイス
私は、大学1年次からこの勉強法を行っており、のんびり時間をかけて行ってきました。ですが、もっと集中して本を読んだり、効率よくまとめ作業をすることで、予備試験に合格してより短期間で司法試験に合格することができたと思います。時間をかければ合格する方法ですが、遊びやバイトを犠牲にして勉強に集中することができる人は、この方法で私より短期間で合格することができると思います。
この方法は、ロースクールにおいても可能です。授業の予習・復習の際に、該当部分だけでも基本書を読みこれまで作ってきた論証の正確性を高めるという作業を、並行して行えばいいのです。授業や期末試験のための勉強をするのは無駄とは言いませんが、その勉強が司法試験につながるように意識して勉強する必要があります。
ロースクールに通っている人は、すぐにでも司法試験の過去問を解いてください。時間がない、解けるほどの学力がないという理由は論外です。常に時間はありませんし、司法試験を解けるほどの学力がついたと思える日はいつまでも来ません。解いているうちに力はついていき、最終的に司法試験に合格する力が身についています。司法試験の過去問は、最低3周は回しましょう。そうすると、ロースクール入ってすぐに始めないと解ききれません。
最後に、司法試験は、勉強ができるだけでは受かりません。メンタルも重要です。本番ではメンタルを崩してリタイアしていく人が何人もいます。自分のしてきたことに自信を持てるだけの努力をすれば安心感を持てますし、開き直って司法試験に全身全霊をぶつけることができると思います。皆さんが一発で合格できることを祈っています。