合格体験記 私の予備試験合格法
藤瀬 淳
1 簡単な経歴、法曹志望の動機
平成28年 國學院大學久我山高校 卒業
明治大学 入学
平成30年 予備試験 短答合格(1613位) 論文不合格(1991位)
令和元年 予備試験 短答合格(1737位) 論文不合格(652位)
令和2年 明治大学 卒業
一橋大学法科大学院 入学
令和2年度 予備試験 短答合格(757位) 論文合格(248位) 口述合格(388位・119点)
自分は、祖父が副検事であったことがきっかけで法曹に興味を持ち、検事や弁護士の仕事を知るにつれて、自分に向いているのではないかと思うようになり、真剣に目指すようになりました。予備試験の受験については、自分がOBの方々等から指導を受ける際に、ほぼ全ての方に予備合格を目指すべきだと言われたこと、学部で予備試験対策講座が開講されたこと、周りに予備合格を目指す友達が多かったことなどが主な理由です。
2 短答式の勉強方法
短答式合格のためにやることは、過去問で知識・解き方を身につけ、模試で本番に慣れるということのみでよいと思います。逆にこれさえしっかりできていればほぼ確実に合格できるはずです。自分は過去問演習の教材としては、辰巳の短答過去問パーフェクトを使用しました。具体的には、初めて解く1周目は時間をかけてとにかく丁寧に取り組み、2周目以降はスピードを上げてできないところを重点的に解くという方法で、最終的には全問正解はもちろんのこと、各肢の正誤の理由が理解できるようになることを目指しました。ちなみに自分の場合は、毎年最低3周はパーフェクトを解きました。
また、一般教養科目については、特に対策はしませんでしたが、本番ではとにかく粘り強く、時間いっぱい使って、1点でも点数が上がるよう頑張ることを心がけました。具体的には、たとえ苦手科目でもとりあえず全ての問題に目を通し、確実に切れる肢を探し、少しでも正解率が高い問題に解答する、という解き方をしました。自分はこの方法で、3年連続30点以上得点できました。
3 論文の勉強方法
論文対策としては、過去問や予備校・法曹会の作成する問題を答練で解くことを中心とした勉強を行いました。過去問については、おそらく合格までに最低でも1回ずつは全年度の全法律科目の答案を書いたと思います。中には3、4回書いたことがある問題もあると思います。そして、これらの答案は学部が主催する予備試験対策講座や法曹会が開講するゼミ等で合格者のOBの方々に添削していただきました。予備校の答練は辰巳のスタ論や論文予想答練、全国模試を利用しました。辰巳の答練は、比較的採点表が細かく作られている点が良かったと感じました。なお、答練を受ける際には、書けなかった部分は基本書や百選でしっかりと丁寧に復習し、次に出たときは必ず書けるようにすることを心がけました。
まとめノートとしては、辰巳の趣旨規範ハンドブックを利用しました。まとめノートは、一から自作する人もいますし、アガルート等の出している論証集を利用している人も見かけますが、一から自作する時間やスキルが不足していたことや、アガルートの論証集は文章が完成されすぎており改良の余地が少なく自分には使いにくかったことなどから、自分は趣旨規範ハンドブックを改良しつつ使い続けました。
基本書については、正直なところ、ほとんど通読はしていません。通読したのは数冊のみです。周りには全科目2,3周通読しているという合格者が複数人おり、通読を勧められることもありました。しかし、自分は基本書を読むことだけに集中するということがなかなか続かず、通読しても全く身についている実感が伴わなかったので、自分には通読が向いていないのだと思い、通読は諦めました。その代わり、答案を書けるだけ書いて、その回数を増やし、そこで書けなかった場合には必ず基本書に立ち返り、丁寧に読んで理解することを徹底しました。この方法で、自分はかなり力をつけることができたのではないかと思っています。
以上の勉強方法の経験から、絶対にこれを使わなければいけないという基本書・参考書というのはなく、絶対に受けなければならない講座というのもないと思います。つまり、絶対的に正しい勉強方法というものはなく、結局自分に合った勉強方法を見つけ、それを積み重ねることが大切なのではないかと思います。何をすべきか迷っている人は、自分に合った勉強方法を探すのがいいのではないでしょうか。ただ、自分が今まで会った様々な合格者の方々に唯一共通しているものとして、何よりも過去問を重視していたということがあるので、過去問だけは絶対に重視して取り組むべきでしょう。
少し話が変わりますが、2回の不合格を経て3回目にしてやっと合格した身として、論文式試験においてもっとも重要だと感じたことは、とにかく事実を書くことです。というのも、不合格だった2回目の受験時と合格した3回目の受験時で身につけていた知識の量に差はあまりなく、一番変わったのが答案に欠く事実の量だと感じているからです。2回目の不合格後、合格者の「問題文中の事実は何も考えず全部書き写している」という言葉を信じ、自分も問題文中の事実は少しでも使えるものは全て書き写すことを意識しました。その結果、答練では安定して合格レベルの点数を取ることができ、本番でも昨年から大幅に点数を上げることができました。結局、採点者がいくら良い答案だと感じても、事実が書いてなければその分の点数をつけることはできないので、点が伸びないのだと思います。ですから、答案にはとにかく多くの事実を書くことが重要で、全ての事実を書き写すぐらいの意識で答案を書くのが良いのではないかと、これまでの経験から感じています。
4 口述の勉強法
口述の対策については、まずそもそも論文合格の可能性を微塵も感じていなかったので、合格発表後から着手しました。つまり、約2週間の期間しかなかったのですが、その間に民事の対策としては大島本と辰巳の民事実務基礎ハンドブックを、刑事の対策としては基本刑法とまとめノートである趣旨規範ハンドブック、辰巳の刑事実務基礎ハンドブックを何周もしました。それに加えて、合格者にやっている方が多かったので民訴と刑訴の短答パーフェクト1周分もしました。あとは模試を2回受け、過去問も各年2回ずつやりました。
以上の準備をして挑んだ結果、119点という結果でした。そもそも口述試験は、民事と刑事の2科目で二日間にわたって行われるのですが、各科目60点を基準として点数がつけられます。受験者の約半数に60点が、良かったら加点され61点以上、悪かったら減点され59点以下の点がつけられます(特に決められた幅があるわけではないのですが、ほぼ58点~62点の間だと思います)。そして合格点が119点です。つまり、自分は本当にギリッギリの合格でした。点数の内訳は発表されませんが、自分としては間違いなく民事59点、刑事60点の評価だったと感じています。決して、合格率が95%ほどだからといって油断していたわけではないのですが、受験者は全員論文合格者で、全員が必死に勉強して受験するわけですから、やはり甘い試験ではないのだと感じました。
実際に受験して感じたこととしては、とにかく緊張がすごいということです。具体的にいうと、自分は、刑事においては強盗の構成要件が出てこなくなり、民事においては何回も確認し、数十分前には覚えていたはずの催告解除の要件が出てきませんでした。普段であればありえないような失敗です。正直、本番では実力の半分も発揮できなかったと感じています。ただ、なんとか試験官の質問に対し沈黙することだけは避け、とにかく会話をすることを意識し、誘導に乗ることで、刑事に関しては正解にたどり着けたと思います。一方民事は、ミス連発でパニックに陥り、自分で正解にたどり着けませんでした。60点と59点の差はそこなのではないかと感じています。
この経験から、口述に関しては、いくら事前準備しても本番でそれを完璧に発揮することは絶対にできないので、本番でとにかく沈黙せず、試験官と会話することを心がけることが一番大切だということを伝えたいです。
5 その他合格に役立つ方法
ここまで、様々な勉強法を紹介してきましたが、結局一番大切なのは、自分の勉強を見てくれる人(合格者)を見つけることだと思います。それはOBでも、友達でも、予備校の講師でも、誰でもよいので、自分が今何をすべきなのか、適宜指摘してくれる存在が必要不可欠だと思います。幸いにも自分は、明治大学に入学した年に学部の予備試験対策講座が開講したり、2年次に法曹会の答練が開始されたりと、合格者に出会える機会が多数あり、そのおかげでこれまで勉強を見てくださった方々に出会えました。そしてその方々に、合格に必要な道筋を教えていただいた結果、予備試験合格までたどり着けたと感じています。これを読んでいるであろう皆様も幸いにして、明治大学法曹会の方々と出会える機会があるのですから、ぜひその機会を逃さず、自分の勉強を見てくれる人を見つけてみてください。
6 予備試験対策の勉強と他の活動・勉強の両立について
自分は大学在学中の4年間、体同連ラグビー部に所属して活動していました。周囲にはすごく驚かれましたが、自分としては中学時代から続けているラグビーは楽しく、絶対に続けたかったので、勉強時間が犠牲になるとしてもやめることはありませんでした。実際、ラグビー部の活動のために週末の勉強時間が確保できなかったりすることなどが多々ありましたが、おかげで非常に充実した学生生活が送れたと思っています。勉強に集中するのも良いと思いますが、一度しかない大学生活を楽しめるのは今だけです。勉強と両立することも決して不可能ではないので、学生生活を楽しむことも大切だと思います。
また、ロースクール入試と予備試験対策の両立についてですが、どちらも経験した身から言わせてもらうと、ロースクール入試は予備試験に比べてめちゃくちゃレベルが低いです(本当に驚くぐらい低いです)。そのため、本気で予備合格を目指して勉強しているのであれば、ロースクール入試に関しての心配は一切不要です。具体的にいうと、短答合格しているレベルであれば、慶応や一橋にも絶対合格できると思います。唯一気を付けなければならないのは、国立を受ける場合にはTOEICやGPAがある程度必要になることぐらいです。そのため、ロースクール入試に関しては何も心配せず、予備試験対策に集中すべきでしょう。
7 使用した教材
◆まとめノート
・趣旨規範ハンドブック(公法系・民事系・刑事系)
・アガルートの合格論証集(手形小切手のみ)
◆基本書・参考書・演習書
憲法
・芦部 憲法
行政法
・櫻井橋本 行政法
・基礎演習行政法
・行政法解釈の基礎
民法
・内田 民法(Ⅰ~Ⅳ)
・佐久間 民法の基礎(1・2)
・松井 担保物権
・潮見 プラクティス民法債権総論
・潮見 基本講義債権各論(Ⅰ・Ⅱ)
・リークエ 民法Ⅳ 親族・相続
商法
・田中 会社法
・弥永 手形小切手法
民訴
・リークエ 民訴
・高橋 民事訴訟法概論
刑法
・基本刑法(Ⅰ・Ⅱ)
・山口刑法
・刑法事例演習教材
刑訴
・有斐閣アルマ 刑訴
・古江 事例演習刑事訴訟法
民事実務
・新問研 要件事実
・大島 完全講義 民事裁判実務の基礎 入門編
・辰巳 民事実務基礎ハンドブック
刑事実務
・辰巳 刑事実務基礎ハンドブック
その他各科目、辰巳のぶんせき本やえんしゅう本を適宜使用しました。
以上