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合格体験記 私の予備試験合格法

瀬戸 悠未

 

1 経歴

2013年 明治大学法学部卒業
同年   東京高等裁判所 裁判所事務官
2016年 東京地方裁判所 裁判所書記官(現職)
2020年 予備試験合格

 

2 予備試験の成績

短答式:憲法28、行政法26、民法24、商法19、民訴法27、刑法25、刑訴法23、一般教養24(173位)
論文式:憲法F、行政法D、民法C、商法B、民訴法F、刑法B、刑訴法B、一般教養C、実務A(総合得点234.23、417位)
口述式:121点、84位

 

3 予備試験志望の動機

 私は、2013年に明治大学法学部を卒業後、東京高裁の裁判所事務官として採用されました。2年間事務官を経験した後、1年の研修を経て書記官に任官し、この体験記を書いている現在(2021年5月)も東京地裁商事部で書記官をしております。
 私は元々弁護士を志望して法学部に入学したのですが、当時は予備試験制度も定着しておらず、司法試験を受けるには法科大学院へ進学することがほぼマストであったこと、三振制度があったこと、そして経済的な事情などもあり、上記のとおり就職しました。
 しかし、商事部で仕事をする中で会社法が面白くなり、よりステップアップしたいと考えるようになりました。また、この頃には予備試験が制度として定着してきた上、司法試験も5回まで受験可能になり、倍率の下降から狙い目と言われることが多くなりました。そして何より、20代が終わりに差し掛かる前に自分自身が何かを成し遂げたいと思い、予備試験受験を決意しました。

 

4 予備試験短答式について

⑴ 勉強方法

  私は短答式をおろそかにしていたのですが、答案練習会の先生に短答式の勉強を始めるようにご指摘いただき、軽い気持ちで過去問を見たところ、全く解けないことに気が付いて焦ったのは2020年2月です。
 もっとも、その後コロナ禍で試験が5月から8月に延期になり、結果的には半年間かけて短答式を合格水準まで持っていくことができました。
 勉強方法としては、まずは辰巳法律研究所の肢別本をとりあえず3回解きました。これで概ねなんとかなるとは思います。
 とはいえ、肢別本は○×形式なので、刑法の事例問題や穴埋め式の問題との相性は悪いです。そのため、肢別本のみで完結させず、法務省ホームページで公開されている過去問を解くなどして上記の問題にも対応できるようにした方が良いでしょう。
 また、民法改正分野は肢別本では不十分だと感じ、条文の素読や法務省の説明資料を参照しました。
 今だから言えることですが、短答をおろそかにしない方が良いです。予備試験は約4分の3の受験生が短答落ちです。また、ここでの知識が論文式ひいては翌年の司法試験論文式にも響いてきます。直前期には模試を受けてみても良いかもしれません。

⑵ 司法試験の短答式との違い

  司法試験と予備試験の短答式は、相当程度問題が共通しています。そのため、予備試験合格者で司法試験の短答式に落ちる人は殆どいません。科目数も予備試験が7科目+一般教養なのに対し、司法試験は3科目しかないため、予備試験合格者が普通にやれば司法試験短答式には難なく合格します。

 

5 予備試験論文式について

⑴ 勉強方法

  毎週日曜日の明治大学答案練習会でアウトプットを行いました。論文式のアウトプットは、上記答案練習会及び予備試験過去問分析のみを行い、結果的にはそれで足りました。
 具体的な勉強法としては、毎週日曜日に開催される答練の前週の平日5日間の仕事終わりの時間を使って、薄めの基本書を読む等のインプットを行い、答練で何も書けない事態を回避しました。平日でインプットが完了しないときは土曜日も使いました。一週間弱という短いスパンでインプットをすることは大変でしたが不可能ではありませんでした。
 論文式に関し、皆さまにアドバイスできるとすれば2点です。
 1点目は、インプットが不十分な科目であっても、なるべく答練に参加して多くの答案を作成することです。勉強の中で、分からない問題に向き合うときほど苦痛な時間はありません。その気持ちはすごく分かります。しかし「勉強には終わりがない」と言われているように、インプットを突き詰めるとキリがありません。
 本番では必ず分からない問題が出てきます。分からない問題に対処するための思考力・忍耐力を早いうちから培ってください。頑張って解こうとすれば、先生方が何かヒントをくれるはずです。
 2点目は、法的三段論法を早めに使いこなすことです。
法的三段論法とは「大前提(法規範)→小前提(具体的事実)→結論」というプロセスによる論法で、法律実務家が他人を説得するために最も重要な「お作法」です。このお作法を守らない者は、法律実務家とはいえないそうです。(事例演習刑事訴訟法第2版・古江頼隆)
 予備試験は時間的制約が大きいため、些末な論点まで法的三段論法をきっちり守ると時間切れになりますが、メリハリの付け方は慣れれば分かってきます。そのため、まずは三段論法を意識して答案作成するよう心がけると良いと思います。
 なお、大前提は基本的に条文や法の大原則から出発する以上、論述に際してはそこからなるべく離れず、虚心坦懐に事案を解決する姿勢を忘れないでください。

⑵ 司法試験論文式との違い

  司法試験は予備試験の2、3倍問題文が長いです。途中で読むのに疲れてしまったり、重要な事実を読み落としてしまったりすることもあります。これは訓練するしかありません。ちなみに私は問題文を読みながら関係図を書き、事実認定に使えそうな部分は蛍光ペンでラインを引いていました。

 

6 口述試験の勉強方法

 合格者の皆さんが口をそろえて言うように、私も論文式に合格しているとは全く思わず、仕事中にもかかわらず驚きすぎて腰が抜けました。
 しかし、喜びに浸る間はほとんどなく、2週間後には口述式の試験が迫っていました。口述試験を迎えるまでの2週間は、最も心が休まらない2週間でした。寝ても起きても、口述試験のことしか考えられませんでした。なぜなら、口述試験に落ちたら来年は短答からやり直しであり、その場合にもう一度論文まで合格できる保証はどこにもないからです。

 
 口述試験までの二週間で行った勉強は以下のとおりです。
 ・答案練習会の先生方による口述対策
 ・予備校による口述模試
 ・完全講義 民事裁判実務の基礎<上巻>(通称:大島本)の閲読
 ・刑事実務基礎の定石の閲読
 ・口述試験再現集の閲読(2011年から2020年分まで、3回程度読みました。)

 
 私は実務家で民事執行・保全につき最低限は押さえていたため、この点について特別な対策はしませんでした。執行保全に不安がある方は「完全講義 民事裁判実務の基礎<基本編>」(上の<上巻>と違うことに注意してください。)の該当分野を読むとともに、論文式の民事実務基礎の過去問の見直しを行うことをおすすめします。
 なお、この間に論文式試験の結果が返ってきます。F評価が2個もあることに愕然としました。改めて口述試験には絶対に落ちたくないと思い、それが更にプレッシャーになりました。

 

7 口述試験とその後

 例年とは違い、口述式が真冬の1月に行われ、しかも私は両日とも午前組だったため寒すぎる体育館で自分の順番が回ってくるまでひたすら待機させられました。
 始まってしまえば、案ずるより産むが易しでした。もちろん、問題は難しいし事例は長いので最初はパニックになりますが、試験官は受験生を合格させようと積極的に誘導を出してくださるので、誘導に乗れば基準点(各科目60点)は取れる試験です。
 9割以上の方が合格できるので、論文式まで合格した方は細かいことは気にせず、自分を信じて思い切って受験して頂ければと思います。

 

8 基本書・参考書

憲法:芦部憲法、憲法Ⅰ基本権(日本評論社・渡辺康行 外)、事例問題から考える憲法、憲法判例百選
行政法:基本行政法(日本評論社・中原茂樹)、基礎演習行政法
民法:民法の基礎(総則・物権)、セカンドステージ債権法、債権各論ⅠⅡ(潮見佳男)、民法判例百選
商法:リーガルクエスト会社法、会社法判例百選、ロープラクティス商法、リーガルマインド手形・小切手法、リーガルマインド商法
民訴法:ストゥディア民事訴訟法、リーガルクエスト民事訴訟法、ロープラクティス民事訴訟法
刑法:基本刑法ⅠⅡ(大塚裕史)、伊藤塾試験対策問題集(論文2・刑法)
刑訴法:リーガルクエスト刑事訴訟法、事例演習刑事訴訟法、刑事訴訟法判例百選
民事実務:新問題研究要件事実、要件事実30講
刑事実務:刑事実務基礎の定石

 

9 終わりに

 これから受験される方にお伝えしたいのは、予備試験は辛い試験ですが数年を費やす価値はある試験だということです。昨今、法曹の人気低下が叫ばれていますが、それでも予備試験・司法試験は間違いなく文系最難関の試験であり、依然として法曹三者に高い社会的信用力があることは事実です。私も、予備試験に合格できたことは自分の中でものすごい自信になりました。
 最後になりますが、勉強期間1年強という短い期間で合格できたのは、この答案練習会の先生方を始めとする多くの方に支えられたおかげです。この場を借りて、改めて深くお礼を申し上げます。私自身はまだまだ未熟な人間ですが、答案練習会講師の先生方のように、人に勇気を与えられる法曹となるべく精進していきたいです。
 

以上

 

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