合格体験記 私の予備試験合格法
K.M.
1 経歴・法曹志望の動機
2017年 明治大学法学部 入学
2021年 東京大学法科大学院既習コース 入学
同年 予備試験最終合格(短答617位、論文98位、口述73位)
法学部に入って大学生活を遊んでばかりで終わるのはもったいないなと感じ、法曹会主催の予備答練などで弁護士先生からいろいろなお話を伺ったりしたことなどがきっかけで弁護士になりたいと考えるようになりました。
2 短答式の勉強方法
短答式試験について、私は論文よりも短答に苦手意識があったので、本番の5月に向けて、3月末ごろから短答の勉強一本に専念しました。
具体的な勉強法として、曖昧な知識をできるだけ確実なものにすることが大事なので、確実な知識を着実に増やせるように、予備校本や基本書等の通読、条文の素読を通じてインプットを重点的に心がけました。
次に、アウトプットについて、H18年度以降の司法試験・予備試験の短答過去問がまとめられた辰巳法律研究所の短答過去問パーフェクトを7科目分使用しました。本番までに全科目3周ほど回し、ミスをした箇所に付箋を貼るなどしてさらに複数回解くといった具合で回していました。特に会社法の短答については苦手意識が強く、他科目よりも多く問題演習を行いました。また、ミスした箇所は判例六法に一元化し、条文の素読時に確認できるようにしておきました。
短答は、一般教養との兼ね合いもある上、自分がどれくらいの実力があるか、自分の立ち位置を把握することが難しいので、勉強は最低限にとどめることなく、上位合格を目指すくらいで勉強するのがちょうど良いと思います。
3 論文式の勉強方法
論文については、基本的なインプットは短答で固めていたので、演習(答案構成・起案)を何度も行うことにこだわりました。予備校の論証集を用い、ある程度の規範などを頭に入れた後は、予備校の答練などを受講し、限られた時間内で合格レベルの答案を書く練習を行っていました。
また、答練と同時並行で予備試験の過去問を実際に起案していました。予備試験は、始まってから10年経過しており、過去問の蓄積もかなりあるところなので、1度起案し、傾向を分析したり、合格者の再現答案と自分の答案を比較することで、自分が合格するために足りない要素を見つけることができました。論文本番の問題については、基礎的な論点は書けなければいけないのは当然ですが、現場思考を求めているような論点も出題されます。後者のような論点の場合、その後の出題可能性が高いというわけではないので、「1度答えを見て納得したら再度過去問の答案構成をするときに問題の所在を把握できればいいや」という気持ちで乗り切っていました。そのため、過去問の2周目のとき、現場思考レベルの問題は起案をあまり行わず、答案構成にとどめていました。
また、私は前年に惜しい順位で論文式試験に不合格となっており、合格レベルに達するにあたり時間的に余裕があったので、少しハイレベルな参考書でのインプットも行いました。具体的には、『憲法判例の射程』、『事例演習刑事訴訟法』、『事例で考える会社法』などです。
最終的に2021年の予備試験に合格することができたのは、実際に答案を書くという演習を重ねたことによって、答案を書く盤石な基礎が出来ていたからだと思います。
4 口述試験の勉強方法
まず、論文が終わってから論文の合格発表までは3ヶ月ほどあります。その間、特に勉強は行いませんでした。というのも、今まで予備試験に向けて勉強する長い期間が終わり、論文の合格発表があるとその後口述→司法試験まで勉強する期間が再開するので、一度リフレッシュしようと思い、1人旅したり、ワクチン接種会場でアルバイトしたりしていました。休める期間はここくらいしかないので、思い切って休むのも1つの手段だと思います。
そして、論文の合格発表があり、2週間後の口述試験の対策をすることになりました。
まず、民事・刑事ともに口述試験の再現を全年度チェックし、傾向と対策をおこないました。不合格者の口述再現を読みましたが、「これくらいの出来でも落ちるのか。」と少し戸惑うものもあり、必死に勉強するハメになりました。
民事については、序盤でほぼ必ず出題される訴訟物・請求の趣旨・請求原因事実を間違えないように言えないとそれだけで印象が悪くなってしまうとわかったので、とにかく大島本上巻に載っている内容をたたき込みました。既に論文の実務科目の対策で大島本を使っていたのである程度インプットはできていましたのが幸いでした。
次に、刑事については、財産犯などの頻出犯罪の構成要件は叩き込まないとまずいとわかったので、暗記カードで構成要件を暗記しました。また、刑事の最近のトレンドとして、実体法の細かいところまで聞かれていることがわかったので、論文の規範を再確認し、基本刑法Ⅱを何周もしてインプットしました。
これらのインプットに加え、過去の口述再現を参考に、友人に実際に問題を出題してもらい、声に出して回答する練習も何度か行いました。文字で読むことと声に出された内容を把握することはかなり異なり、慣れるまでなかなか苦労しました。実際に声に出す練習はやっておいた方が良いと思います。
また、予備校の口述模試も複数個受験しました。その際、声が小さいことを指摘されたり、もう少し自信をもって回答するように言われ、自分の分からなかった弱点を知ることができました。
論文発表から口述までの2週間は本当に緊張がひどく、体重が5kgほど減りました。ただ、試験会場で他の受験生の大きなため息が聞こえたり、何度もトイレに行く他の受験生を見たりして、緊張しているのは自分だけではないことを再確認し、少し楽しみながら口述試験本番を迎えることができました。
口述試験本番では、初日の民事において、緊張から訴訟物を十分に言えないミスをしてしまったりしましたが、主査の誘導にしっかり乗って答えを重ねていき、なんとか乗り切ることができました。
5 その他基本書、参考書等。合格に役に立つと考えている方法
予備試験(特に論文)については、現場で事実を拾って妥当な評価をして結論を導くことがとても大事だと思います。そのため、基本書や予備校本などでインプットを一通り済ませたら起案を何度も行って事実の摘示・評価を練習することが大事だと思います。知識は最低限ないと合格できないのはもちろんですが、知識量ばかり重視してしまうのもあまり宜しいことだとは思いません。そのため、演習を積むことが合格への近道だと思います。
【使用参考書等】
『憲法判例の射程』
『事例研究行政法』
『事例で考える会社法』
『ロープラクティス 民事訴訟法』
『事例演習刑事訴訟法』
『刑法事例演習教材』
『民事裁判実務の基礎 上巻』(いわゆる大島本)
『基本刑法Ⅰ・Ⅱ』 など
以 上