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合格体験記 私の予備試験合格法

水野 直

 

 2021年10月7日、令和3年の予備試験論文式試験の合格者受験番号一覧で自分の受験番号を見付けられなかった私は、途方に暮れていました。そんな折、自宅に届いた明大学報を読んでいると、明大答練の広告がふと目に留まりました。そこで、勇気を出してその門を叩いたところ、申込締切日を過ぎていたのに受講させていただけることになりました。これがきっかけとなり、私は、令和4年予備試験で最終合格を果たすことができました。その幸運と喜びに感謝しつつ、ここに合格体験記を残します。
 

1 私の履歴書

⑴ 経歴
  2004年 早稲田大学教育学部国語国文学科入学
  2005年 早稲田大学教育学部国語国文学科中退
  2005年 早稲田大学法学部入学
  2009年 早稲田大学法学部卒業
  2010年 明治大学法科大学院未修者コース入学
  2013年 明治大学法科大学院未修者コース修了
  2013年~2021年 司法試験5振、予備試験4回不合格(9回全て論文落ち)
  2022年 予備試験最終合格
 
⑵ 令和4年度予備試験成績

①短答式試験:憲法30、行政16、民法18、商法10、民訴19、刑法23、刑訴24、一般教養21、合計161点(2496位)
②論文式試験:憲法B、行政A、民法A、商法D、民訴A、刑法B、刑訴A、選択(倒産法)E、法律実務基礎B
総合得点288,45点(113位)
③口述試験:120点(223位)

 

2 短答対策

⑴ 基本方針
 短答では細かい知識が問われますが、これを全て覚え込む必要は全くありません。心なしか、細かい知識を潰す勉強をしていた受験生仲間は、かえって短答に落ちていた気がします。以下、本試験・予備試験短答を10回連続で通過した私が、短答という底無し沼にはまらなかった方法を具体的に教えます。
 短答の過去問で不正解だった設問の肢のうち、どの肢の正誤を正しく判断できれば正解できたかを分析すると、基本的な知識で正誤が判断可能な肢を正確に切れれば、ほとんどの設問で正解できることがわかります。当該肢は「生死を分ける肢」であり、その他の肢と区別すべきものです。生死を分ける肢は、試験委員が、短答の問題を練り上げる際、この肢の正誤がわかる受験生に点を与えようと決めたものなのでしょう。司法試験委員会決定(平成30年8月3日)が「短答式試験……の出題に当たっては,……基本的事項に関する内容を中心と」するものとしていることも、基本的知識を十分に固めておくよう試験委員が我々受験生に求めていることを裏付けています。
 以上の分析結果に基づき、我々受験生としては、基本的知識を十分に固めておくことの重要性を認識し、短答過去問を設問単位で解き、生死を分ける肢の正誤とその理由を確実に理解しておくべきことになります。私は、この方法で短答過去問を1周したところ、徐々に合計点が上がり、最終的には全科目で安定して8~9割の点を取れるようになりました。やはり、生死を分ける肢を正確に切ることさえできれば十分だったのです。この点を誤解し、細かい知識を潰しに行く対策を行ってしまうと、それだけで基本的な知識の反復がおろそかになり、かえって合格が遠のきかねません。短答は、法律の知識の濃淡を見極め、基本的な知識を切り分けて正確に理解している受験生を選別しているのです。

 
⑵ 私の具体的な解き方
 短答過去問を解く際は、肢ごとに、正解を「〇」、誤りを「/」、正誤不明を「_」と書きます。これで選択肢が一つに決まらなければ、次に、「_」の肢の正誤を判断し、その上に「〇」か「/」を書き足します。それでも正誤を判断できなければ、飛ばして次の設問を解きます。不正解だった設問については、生死を分ける肢の元ネタである条文や判例、学説に当たって理解し、記憶します。
 
⑶ 試験当日の記録
 私は、正解と判断した肢に「/」とチェックするという、未経験の表示の錯誤を連発し、民事系科目で過去最低点を更新しました。また、令和3年度予備試験では42点取れていた一般教養の点数が21点と伸び悩みました。ただ、憲法の満点や刑事系科目に救われ、足切りは免れました。

 

3 論文対策

⑴ 基本方針
 予備試験の総本山は、論文式試験です。したがって、持てる資源(時間や予算・気力・体力等)は、論文対策に重点的に充てるべきです。具体的には答練ですが、これを十分に積んでいる受験生の数は、実際はそれほど多くなさそうです。とにかく面倒くさくて腰が重い、1通起案するのに時間がかかる、書くのに疲れる、答案添削の辛口コメントを読んでヘコむ等、答練に心理的障壁があるのは確かです。ただ、論文式試験を通過した合格者達は、皆さんこれを乗り越えて来ました。なお、予備試験では、2日間で計10通の起案を仕上げなければなりませんから、起案慣れは必須です。
 私は、起案に慣れるため、明大答練にエントリーしました。これに当たり、一度でも起案の提出又は講義への出席を怠ったときは、試験から潔く撤退することに決めました。結局、一度も休まず、全ての回で起案を提出しました。初めのうちは、不出来な答案を添削されるのは恥ずかしかったことから、出題されたテーマについて色々と調べてから起案していました。ただ、試験当日も未完成な状態で試験に臨まざるを得ない以上、普段から未完成な状態での起案に慣れておく必要があると思い直しました。それからは、答練は、間違えるために行うものという意識で取り組み、起案はさっさと仕上げてしまい、足りない知識は、その後の見直し段階で入れるようにしました。フル起案は、明大答練とゼミの課題を使い、週2回行いました。こうしていくうちに、最初は抵抗がありましたが、段々と起案に慣れていきました。ただ、恥ずかしながら、提出期限を過ぎたことがしばしばあり、明大答練の皆様には、ご迷惑をおかけしました。この場をお借りし、お詫び申し上げます。
 短答後の5月下旬から7月上旬までの論文直前期には、令和3年から平成29年までの5年分の本試験・予備試験の全過去問(選択科目は令和3年から平成18年まで)を、直近の年度から順番に解き直しました。解き直し方は、試験まで時間的余裕がない一方で、場数を踏んで経験値を高めたかったため、1問につき30分で答案構成し、30分で見直しをするという方法で行いました。重要かつ基本的なテーマは、基本書を読み込み、理解を深めました。

 
⑵ 試験当日の記録
 試験当日は、予備試験を点取り法律起案ゲームとして捉え、1点でも多く稼ぐため、現場判断を最優先にしました。以下、試験当日、私が実際に行った現場判断を2つ挙げます。
 一つ目は商法です。私は、商法の設問1の後半部分で、ある人物の地位を誤解したまま論述を進めていたことに気付き、設問1の解答を1ページ分削除しました。その結果、設問1の半分ほどしか解けず、使用した解答用紙の分量は1枚半、設問2は白紙となりました。この時点で、時間のかかっていた民法と併せて150分を費やしていました。3科目210分の持ち時間に照らせば、民訴を解き始めるべき時間に差しかかっていました。そこで、商法は思い切って捨て問とし、民訴を解くことにしました。幸い、民訴の方は、解き直したことのある平成28年本試験の焼き直しだったため、特に引っかからずに解くことができました。その結果、民法と民訴でA評価を頂きました。一方、商法は、F評価を覚悟していましたが、D評価を頂くに止まりました。商法は難問だったようで、少しでも書ければ点が付いたようです。
 二つ目は憲法です。争議権がテーマのレアな問題であることが一目でわかったため「今年は憲法でやりよったな試験委員!」と心の中で叫びながら、ひとまず、行政法から解き始めました。行政法は典型的な問題でしたが、内容を充実させることを目指し、85分使い、解答用紙の4枚目を数行残して書き終えました。憲法は、労働基本権が憲法上保障されている趣旨と、団体行動権として争議権が保障されていることをはじめとして、三段階審査を意識して書き、問題の法律の項目ごとに一言ずつ批判を加えて、解答用紙2枚半ほどで違憲の結論を出しました。その結果、行政法ではA評価を頂き、憲法では、粘りが功を奏したのか、B評価を頂きました。

 

4 口述対策

 民事実務対策として、大島本2冊(入門編・上巻)、紛争類型別、伊藤塾の口述再現集を読み、弁護士職務基本規程の頻出条文を見ました。刑事実務対策としては、伊藤塾の口述再現集を読み、問われた条文をチェックし、刑訴分野の公判前整理手続の条文と証人尋問の条文、弁護士職務基本規程の頻出条文を素読しました。模試は、伊藤塾のものと、明大答練の先生主催のものを受けました。当日は大変緊張しましたが、模試で先生方から教わった当日の態度と振る舞い方を実践できたことと、考査委員の誘導が予想よりも丁寧だったおかげで、用意された質問を全て終え、基準点の120点で合格しました。
 

5 予備試験受験生へ

 予備試験最終合格者は、受験界隈で神扱いされています。確かに、極めて優秀な合格者はいますが、その一方で、E・F評価を何科目か取りながらも合格している人が相当数います。したがって、極めて優秀な人でなくても、ボーダーラインを超えることは可能です。実際、私が試験対策として行ったのは、主に明大答練と本試験・予備試験過去問の答案構成、その見直しだけでした。結局、条文と判例をしっかりと理解し、起案に十分慣れておくことが合格の王道であるように思われます。
 この合格体験記が、予備試験という名の大海原を航海する受験生のどなたかにとって、最終合格という目的地に迷わず到達するための羅針盤になったとすれば、それにまさる喜びはありません。

以 上

 

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