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司法試験合格体験記 私の司法試験合格法

小長谷 保

 

〒417-0052
静岡県富士市中央長1丁目10番2号
小長谷・石野法律事務所
弁護士 小長谷保
 
TEL 0545-53-1363
FAX 0545-53-9798

 
 

 

合格体験記の登載にあたり

 私は、昭和57年度の司法試験に合格し、現在静岡県弁護士会に所属し、静岡県富士市にて活動しています。
今般、昭和57年当時の合格体験記がみつかったということで、そのまま登載するという話がありました。
 当時と今では試験制度も異なり私の体験記がどれほど役に立つものか疑問ですが、折角の機会ですので登載をお願いしました。当時も今も変わらないのは、司法試験は己れの人生の在り方に直結する試験であることと、それゆえ真正面から取り組まなければならない試験ということでしょうか。後輩の頑張りに期待します。

 

 

一、はじめに

 私は、短答式試験の受験を八回、論文式試験を四回、口述式試験を二回受験しました。
 最初の短答式試験にパスしたのは三回目、論文式試験は論文挑戦四回目にパスしました。第一回目の口述試験に失敗した翌年の短答式試験に通らず、背水の陣で臨んだ口述試験にパスすることで、ようやく受験生活にピリオドをうつことができました。
 私は、司法試験に合格するまで九年余りの歳月を費やしました。そこで本稿では、私の勉強法とともに、なぜ九年余りの歳月を費やしたかを自己分析した結果を記すことにしました。
 

二、勉強法

イ 短答式試験

「短答式試験は過去問を繰り返すことによって通る。」というのが受験生の通説です。私も勉強を始めてから、最初に短答式試験に合格するまで毎年過去間を解きました。とりわけ、はじめてパスした年は、危機感もあったせいか、過去問を、憲・民・刑とも五回ほど繰り返し解答を暗記するまでに準備しました。その後は、様子がわかったせいか、毎年一~二回ほどしか準備せず、もっぱら教科書を読みました。
私の経験から、短答式試験については、次のように考えています。
 

① 短答式試験に一度パスすると、短答式試験はそれほど恐るるに足りない試験であると思われます。しかし、常に短答式試験の前日までには確信の持てるだけの準備をすることが必要であって、少しの油断も許されない試験であると考えて臨むことが必要です。
私も途中二回失敗しましたが、その年は勉強不足であり、それゆえに消極的態度で陥んだことが失敗の原因となりました。

 

② 最近、短答式試験の傾向が変化しています。しかし基本的な姿勢は変わらないと思います。とくに憲法についての変化が著しいといえますが、かような場合、その合否は民法・刑法でいかに点数を稼ぐかにかかっています。難しいのは皆同じです。
自分の実力で解ける問題を確実に解答すれば、必ず解けるはずです。ただ従来の出題形式と異なりますから、出題形式に対する練習をしておくことは必要と思います。

 
ロ 諭文式試験

 論文式試験が最も難問といわれ、又各自の勉強のスケジュールが論文式試験を目標として組み立てられていることからも、その難関さが窺われます。私自身も、通るまでは一体どういう答案が合格答案となるのかが把握できず、皆目見当がつかない試験でした。しかし、現在では論文不合格者に成績が通知されることになり、この点でずっと楽になったと思われます。この通知を受けた諸君の中に、しばしば「あれでAなのか。」という声が聞かれます。実際、私自身も論文式試験にパスした時に「なんだ。あの程度の答案でいいのか。」というのが実際でした。この点は、ほかの合格者も同じ感想を述べています。そこで私なりに一体合格者答案というのは、どのような答案なのかを考えてみました。
 
第一.
 私が勉強をはじめて四~五年経過し、実力もそれなりについたと自負していた当時、合格者Y氏に「どうすれば合格答案が書けますか。」と質問したことがありました。
 Y氏は「『今日の天候は.』と聞かれたら何と答えるか?」との事例を引き出し、「『今日は晴れです。雨です。』と答えるだろう。これと同じことで、これを『天気という概念は,… … 』と答えたらおかしいだろう。」と言っていました。これは今考えると、とても重要なことです。合格答案を作成することの第一条件は問題に対し明確に答えることが必要です。何かを書けばいいという考えは誤りです。しかも問題に答えるに必要最小限の記述をすれば足り、それ以外の記述は、仮にその内容が正しくとも、問題に答えるという意味では不要であって、むしろ誤りと考えることが必要と思います。

 
第二にこれは当然のことですが、実力が一定の程度に達していることが必要です。
とくに私がここでいう実力とは、第一の記述と関連して、問題に答えるにあたって、自己の記述が最小限必要な記述であるか否かを区別することが可能な程度の実力ということです。加えて実力というのは、ある具体的問題についてよくわからない場合「わからない問題だ」として冷静に受け止めることができるだけの実力です。
 この程度の実力は、三年ほど真剣に勉強された方であれば当然身につくものと思います。これに関して、ひとつの事例を紹介します。すでに合格され、現在裁判官をなされているI氏が、合格した年の商法の論文試験のことです。この年の商法に「約束手形と貨物引換証の異同について」という問題が出されました。この年、私も受験していましたが、問題を見て動揺してしまい全く書けませんでした。ほかの受験生も同様の様子で会場がざわついた状態となりました。これをみて、手形・小切手法が不得意だったI氏は「やった。これで手形・小切手では落ちないぞ。」と思って、基本事項のみ書いてきたということです。
 七科目全体を通して客観的に合格のレベルにあっても、十四通全部を完壁に書くことは不可能です。それゆえ、わかる問題とわからない問題とを区別し、後者をそれなりに処理するだけの実力と余裕が必要と思われます。
 
第三に、読みやすい答案であるということが必要です。同じ実力、知識のある者でも、文章の巧拙によって、読み手の評価に随分差が生じます。主語、述語とりわけ指示語や接続詞の使い方は大切です。論文式試験が書面審査である以上当然のことと思います。
 
第四に、答案構成の仕方について配慮した答案であることを要します。構成が良ければ論理が明快となりかつ流れのある文章となりますが、これが悪いと、せっかくの実力が読み手に理解されません。この場合、法的三段論法といわれる論理の組み立て方が非常に重要になります。どのような論理構成がよいかは、基本的には共通ですが、個々の問題によって大きく異なる場合があることは否定できません。しかし少なくとも、自分なりに説明、納得し、他人に支持されるだけの構成をした上で論述することが大切です。
 
 以上のことから、若千抽象的でわかりにくいと思いますが、これをまとめると、合格答案は、知識・実力という内容面と、構成、文章の読みやすさという形式面が合致してはじめて書くことができるものです。しかし、これは途方もない至難の業を要求するものではありません。すでに答案練習会で上位の成績を修めている人は、実力の充実とともに、形式面について配慮して欲しいと思います。

 
ハ 口述試験
 最近、口述試験での不合格が増え、従来と比較して難しくなっているといわれます。
 私も五十六年度の口述試験に失敗してきました。従来から「口述試験は態度さえ悪くなければ落とさない。」「試験官を笑わせれば大丈夫」という風評がありました。私は、これは間違いであると思います。口述試験も試験であって、あくまで法的知識、思考力を試すものです。試験官の質問に答えずに合格することがありえないのは自明のことです。といっても、口述試験が面接形式であるため、単に法的知識、思考力では測定しえない要素もあり、とくに緊張下の状態での試験であるため各人の性格や、会話の成りゆきでうまくいかないこともあります。しかし、前述のごとく法的知識、思考力を問う試験である以上、これにふさわしい準備が必要です。口述での質問は、比較的繰り返されている事項が多いので、論文試験後過去の口述問題を検討しておくことは非常に有益です。とかく論文試験終了後は気が緩みがちで、論文合格の発表があってから慌てるのが普通ですが、司法試験は口述をパスしてはじめて終了する試験です。過去の口述問題の検討をしておけば自信をもって口述試験に臨めることになり、これが同時に好感のもたれる態度を生むことになります。又論文試験にも有益です。是非、論文を受験された方は、夏の間に、過去の口述問題に目を通しておいてください。

 

三、最後に

 司法試験は、準備しなければならない範囲の広いことが特徴です。それゆえ、毎日の勉強の積み重ねが重要です。「継続は力なり。」という格言がそのままあてはまる試験だと思います。「自分は、合格するんだ」という信念を、静かに持ち続けて毎日を過ごすことができれば、おのずから開かれるように思います。決して易しい試験ではありませんが、それゆえに信念と情熱をもってぶつからなければならないと思います。

 

以上

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