木下 圭一 | 明治大学法曹会
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司法試験合格体験記 私の司法試験合格法

木下 圭一

 

〒104-0061       
東京都中央区銀座3-8-12  
銀座ヤマトビル5階      
弁護士法人エクセル国際法律事務所
TEL 03-5579-9431
FAX 03-5579-9435

 

略歴

 横浜市出身
 立命館大学法学部卒業
 旧司法試験受験
 明治大学法科大学院(既習)修了
 司法修習(67期)
 弁護士登録(東京弁護士会)
 隼あすか法律事務所を経て現事務所に移籍

 

司法試験受験に向けて

(1)はじめに

 私は、大学卒業後、旧司法試験受験を経て、法科大学院に入学しました。新司法試験は1回で合格できましたが、旧司法試験では、あともうちょっとで合格、択一で失敗等、合格しきれないところがあり、少々長い受験生活を送りました。旧司法試験受験時代、準備万端で臨んだはずの年に、力が入りすぎていたのか、択一試験の問題用紙を開いた瞬間に頭が真っ白になり最初の10問が0点で合格点に1点足りず不合格となったこと、それから勉強が迷宮入りするなどした経験があり、お話ししたいことは沢山あります。しかし、本稿は、後輩の皆さんへのメッセージとして、受験中常に座右においてほしいポイントに絞ってお伝えしたいと思います。

 
(2)5つのポイント

 私も、受験時代、諸先輩方の合格体験記や他の受験生の話を聞くなどして、どのような勉強方法をとればよいのか考えました。それに私自身の経験、合格後の後輩への指導等の経験を加味して考えると次の5つのポイントがあると思います。

 
  ①基本を大事にした勉強をして欲しい(勉強の質が大事)

 司法試験は、法律実務家(裁判官・検察官・弁護士)登用試験です。法律実務家は、法を解釈して適用することがその職務です。そのため司法試験は、法の解釈適用について基礎的能力が備わっているかを確認する試験です。
 法の解釈適用とは、条文の文言を出発点とし、文言の意義を定め、一義的に定まらない問題(いわゆる論点)について解釈により規範を導き、導かれた規範に事実をあてはめ結論を示すものです。この解釈適用は、法の趣旨をもとに行われます。
 それゆえ法律を勉強することは、条文の規定、趣旨を理解し、論点について解釈を行い、規範を導く過程を知ることです。そして、その規範にいかなる事実が該当するのか事実と規範のつなぎ方を知ることです。
 ここで「過程・つなぎ方を知ること」と表現したのは、司法試験の勉強は暗記ではなく、解答を導くための思考過程が重要であることを示したかったからです。もちろん、司法試験に合格するためには、基本的な条文・意義・趣旨・論点について記憶することが必要です。しかし、司法試験においては、基本的論点がそのまま出題されることもありますが、基本的論点そのままではなく少しアレンジした出題がされることが多いです。これに対応するためあらゆる論点をすべて記憶するとすれば、膨大な量を覚えなければならなくなり、それではいくら時間があっても足りませんし、ある意味不可能を目指すことになりかねません。そこで、日頃の学習では基本的な条文・意義・趣旨・論点に絞ってその思考過程を理解することに重点を置き、応用問題については演習問題を解く際に基礎概念から考える訓練をすること(これが答練を受ける目的です)が重要です。そうすることで相対的にではありますが勉強量(暗記量)を減らして、質の高い勉強をすることができます。
 なお、「新司法試験はあてはめ勝負である」として、基本的な法律知識の理解を疎かにしている人が多々見受けられました。新司法試験は、旧司法試験との対比において「あてはめ」が重視されていることはその通りですが、基本的な法律知識があってこそのあてはめですので、学習する際には両者のバランスをとるようにしてください。

 
  ②一定の勉強量を短期間にこなすこと(勉強量は少なくない)

 ①で、質の高い勉強をすれば相対的に勉強量を減らすことができると述べました。しかしながら、司法試験は、最難関の試験ともいわれているように、学習量は少なくありません。知識は、短期間に繰り返すことで身につくものですから、短期間に集中して一定量の勉強を行う必要があります。人によって差はありますが、少なくとも1日10時間の勉強を2~3年する必要があると思います。

 
  ③合格までやり抜く熱意・信念があること、努力できること

 ②で述べたとおり、司法試験の勉強量は少なくありません。そうであるのに、勉強を始めた当初は基本書を読んでもよく分からず途方に暮れることもあるかと思います。しかし、基本書を分からないままでも読み通していくうちに、ある時突然それまでに読んだあらゆることがつながって一気に理解が進むということがあると思います。私も、諸先輩方も、その経験をしています。
 その意味で、司法試験に合格するためには、少なくない勉強量をこなし、基本書に書いてあることが分からなくてもあきらめずに勉強を続けられることが必要です。そのためには、真摯な努力を重ね、合格までやり抜く熱意・信念が必要です。また、それは、法曹の基本的な資質として必要なことではないかとも思います。
 勉強はあくまでも自分でするものです。先生方は、アドバイスをすることしかできません。受験生自身が真摯に取り組んで初めてアドバイスが活きるのです。

 
  ④素直であること(他人のアドバイスを聞くことができる柔軟性が必要)

 ここまで、勉強の質が大事であり、少なくない勉強量を、やり抜く力が必要であることを述べてきました。そうは言っても、皆、最初からそれができるわけではありません。勉強方法に悩み、途中で挫けそうになることは、多々あると思います。そんな時は、周囲の人に相談し、アドバイスを受けることが、多少の時間を要する受験生活を乗り切るのに必要だと思います。
 また、勉強中、指導をしてくださる先生方や、一緒に勉強している友人から、演習問題の答案等について思わぬ指摘を受けることがあると思います。自分としては、正しいと思って作成した答案ですから、素直にその指摘を聞き入れることができないこともあると思います。指摘がされているということは、その答案に改善すべき点があるということですから、なぜその指摘がなされているのか、落ち着いてゆっくりと考えて欲しいと思います。この周囲のアドバイスを柔軟に受け止めることができると、勉強の質、答案の質が向上し、合格に近づくことができると思います。

 
  ⑤試験の特徴を知ること

 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という孫子の故事がありますが、司法試験についても当てはまります。①や④とも関連しますが、試験制度やどのような答案であれば合格点に届くのか等を知れば、やみくもに勉強することなく、しっかりとした方針に基づいて勉強することができます。
 旧司法試験の時代、古くは問題すら公表されていなかったそうです。時を経て問題が公表されるようになり、択一の解答が公表され、旧司法試験の末期になってようやく論文の出題の趣旨が公表されるようになりました。新司法試験では、出題の趣旨のみならず、司法試験委員の先生の採点実感まで公表されており、それを読み解けば論文試験の解答の指針が得られるようになっています。
 そのような情報を手に入れられる状況にあるのですから、試験の特徴について研究することが必要であると思います。

 
(3)最後に

 これまで述べてきたように、受験勉強には苦しさも伴うと思います。しかし同時に、勉強をしていく中で、分からなかったことが分かるようになる喜びが、それ以上にあると思います。司法試験に向けて、懸命に取り組むことは、他に代えがたい経験であると思います。受験生の皆さんには、主体的に、積極的に取り組んでほしいと思います。

 

民事訴訟法の勉強法

(1)はじめに

 明治大学法曹会・司法試験予備試験答案練習会において、民事訴訟法の出題を担当することになりましたので、簡単に民事訴訟法の勉強のポイントを述べたいと思います。

 
(2)民事訴訟法の特徴

 民事訴訟法は、民事法に関する手続の基本法であり、民法、商法等の民事実体法に定められた権利を確定し、実現するための手続を定めた法律です。実体法は、身近な経験からある程度イメージすることができますが、手続法は、それを経験することができず手続進行のイメージが掴めないことが民事訴訟法を難しく感じさせてしまうようです。
 また、民事訴訟法は、円環的構造と言われ、基本書の最初の方の項目と後の方の項目が関連しており、何度も基本書を読み通さないと理解できないなどと言われます。手続法ですから、最初と最後で一貫していなければならない部分と、手続の進行により変化する部分があるのは当然で、全体像を把握することが必要になっています。

 
(3)民事訴訟法の勉強法
  ①まずは薄い本で全体像を把握する

 前述のとおり、民事訴訟法は手続法であり、手続の全体像を把握する必要があります。そこで、まず初めに、薄めの本を何回も繰り返して読むことを進めます。そこでは、手続の流れと手続の各段階においてどのような論点があるかを把握してください。例えば、訴訟物という概念は、訴訟のテーマであり、民事訴訟の柱となる概念ですが、訴え提起段階においては二重訴訟の問題として、訴訟終結段階においては既判力の問題として、出現します。先ほど述べた円環構造の一例ですが、一つの概念が、他のどの段階において、どのような問題として出現するのかを知ることが、全体像を把握する近道になると思います。

 
  ②縦軸と横軸を意識する

 全体像を把握したら、次は基本書を読み進めていくことになると思います。このとき、闇雲に読み進めても、頭の整理がつかないと思いますので、縦軸と横軸を意識して、読み進めてください。民事訴訟法は、手続法であるがゆえに、どの段階の手続であるかを把握することが大事です。
 ここで、縦軸とは、≪訴訟物―主張―立証≫という訴訟のテーマ(原告の主張する権利義務の内容)による整理です。そして、横軸とは、≪訴え提起-審理-訴訟の終了≫という手続の段階による整理です。

 
  ③縦軸≪訴訟物―主張―立証≫についての一例

 まず、縦軸について説明すると、訴訟は、原告の訴え提起により始まります。原告の訴える内容(権利義務)が≪訴訟物≫であり、例えば「売買代金を支払え」というものです。訴訟物に関する問題は、処分権主義により規律されます。
 被告が訴訟物について争う意思を示す(答弁)と、原告は、自己の主張する訴訟物が存在することを示すために、法律要件に該当する具体的事実を主張することが必要です。これが≪主張≫の段階で、弁論主義の第1テーゼにより規律されます。
 原告の具体的事実の主張に対して被告は認否を行います。この被告の認否の内容によって、立証が必要になるか否かの振り分けを行います。この段階は、弁論主義の第2テーゼにより規律されます。
 そして、原告は、≪立証≫が必要とされた具体的事実について、証拠を提出します。この段階は、弁論主義の第3テーゼにより規律されます。
 このように、縦軸においては、各段階においてそれぞれ別の規律が定められているので、上から一つずつ順を追って、処理していくことが必要です。しかし、民事訴訟法が苦手な方は、各段階の区別がついておらず、それに伴いどの段階においてどの規律が適用されるかの整理ができていないことが多いようです。
 逆からいえば、この各段階とそれに対応する規律について整理ができてしまうと、あとはある意味システマチックに処理をすることができてしまうので、解答に迷うことがなくなり、民事訴訟法が得意となります。

 
  ④横軸≪訴え提起-審理-訴訟の終了≫についての一例

 次は、横軸についての説明です。訴訟は、原告が訴えを提起することにより始まり、裁判所において審理が行われ、判決等により訴訟が終了します。民事訴訟法上の各論点を学習する際には、この3つのどの段階の問題であるのかを意識して整理することが必要です。
 原告の≪訴え提起≫により訴訟が始まります。訴え提起の段階は、処分権主義に規律されるほか、その訴訟が適法な訴訟かどうかの問題(訴訟要件)もあります。例えば、二重起訴の問題は、この段階に位置づけられます。
 原告の訴えが適法であるとされれば、被告に対し訴状が送達され≪審理≫が行われます。縦軸の説明の中に出てきた弁論主義は、民事訴訟の審理の原則を定めたものですから、弁論主義の規律のもと審理が行われます。
 そして、審理が終了すると≪訴訟が終了≫するわけですが、この段階も処分権主義に規律され、請求の放棄・認諾、和解等は、処分権主義の問題です。また、判決が出されそれが確定すると既判力が生じることになります。
 なお、判決に不服があると上訴(控訴・上告)の問題になりますが、上訴についても同様に≪上訴提起-上訴の審理-上訴の判決≫の段階に区別して、論点を整理してみてください。上訴の利益の問題や不利益変更禁止の原則が、どの段階の問題なのか整理することができれば、一気に理解が進むはずです。
 このように横軸においても縦軸同様、段階の区別が重要になり、この区別を意識すると、各論点がシステマチックに処理することができるようになると思います。

 
  ⑤その他補足

 これまで、どの段階の手続かを区別して整理することが大事であることを説明してきましたが、先の説明にも出てきたように、縦軸と横軸が相互に関係することが民事訴訟法をより難しく感じさせているのだと思います。結局これについても縦軸、横軸それぞれの各段階の整理をすることが理解への近道になると思います。
 また、上記の説明は、一つの概念モデルであって、実際の訴訟において、この順番通りに問題が生じるわけではありません。訴訟の途中で初めて問題になってけれども、この問題は概念的にはどの段階の問題だ、というような位置づけをしなければならないことも難しさの一因だと思います。しかし、これも基本的な段階の整理ができていれば、慣れの問題だと思いますので、まずは基本的な理解を進めてください。
 その他の点については、答練等の機会にお話しできればと思います。
選択科目について

(1)はじめに

 選択科目の選択方法について、色々なことが言われていますので、一言触れたいと思います。
 私自身は、実務で役に立つか、自分の興味があるかという点から考え、法科大学院の入学前に、倒産法か租税法を選択することに決めていました。その理由は、民事上の財産の移転が起こると、ほぼ必ず課税がされるので、実務家になった際これを適切に判断するため(というより、問題点に気付いて、確認したり、税理士の先生に依頼をできるようにするため)租税法を学んでおきたいと考えました。
 しかし、租税法は、テキストや問題集、予備校の講座が少ないので、明治大学の租税法の先生の評判を聞いてから、最終的な決定をしようと考え、民事訴訟法が得意(好き)だったこともあって倒産法を候補に残していました。
 結局、租税法を選択し、租税法演習ご担当の今村隆教授のおかげで、租税法は得意科目になりました。

 
(2)選択のポイント

 選択科目を選ぶ際のポイントとして、①合格後の実務で使える、②科目の難易、勉強量の多寡、③その科目に興味があること、があげられることが多いと思います。この3つのポイントにはどれもそれぞれ理由があると思います。

 
  ①合格後の実務で使える

 倒産法・労働法は、多くの事件に関係するので、弁護士として必須の科目であることは間違いありません。しかし、その他の科目を実務で使わないかというと、必ずしもそうではありません。私は、これまで実務において、国際公法を除く7つの法律が問題となる案件に関与しました。司法試験は、通過点ですから、合格後、色々な法律の知識が必要になります。そのすべてを最初から勉強しておくことはできないので、長い目で見れば決め手にはならないように思います。ですので、登録後すぐに活躍したいから倒産法・労働法を選択するというのも良いですし、他の科目を選ぶのも良いと思います。

 
  ②科目の難易、勉強量の多寡

 勉強量が相対的に少ない科目があることは確かです。国際私法、経済法、租税法が比較的少なく、労働法、倒産法は分量が多いと言われているようです。
 労働法は、身近であり取っ付きやすい科目ですが量が多いと言われます。反面、どの論点も論理構造が同じなので、コツをつかめばそんなに大変ではないという意見もあるようです。
 租税法は、難しいのではと聞かれますが、基本的な考え方を理解してしまうと、システマチックに処理できるので(民訴と同じことをいっていますね)、個人的にはそのようには感じませんでした。
 すべての科目について説明することはできませんが、相対的な問題であるので、それぞれの受験戦略、将来的な展望により決めてよいと思います。

 
  ③その科目に対する興味

 私は、これを重視すべきだと思います。上述のとおり、私は、①②は決め手にならないと思っています。加えて、選択科目は、司法試験科目の中で唯一自分が選べる科目です。その意味で、自分が好きな科目を選び、その科目を楽しく勉強することが、必須科目の勉強の息抜きになると思っています(現に私はそうでした)。

 
(3)やはり主体的・積極的に選んでほしい

 司法試験受験に向けての項でも書きましたが、司法試験の勉強は、それぞれが主体的・積極的に行って意味を持つものであると思います。受験戦略上分量の少ない科目を選ぶ、好きな科目を学びたい、実務家になった後すぐに活躍したい、それぞれの選択の理由は、それぞれだと思います。しかし、自分の選択を信じて、その科目を勉強することが、選択科目の勉強のモチベーションにつながると思います。その意味で、選択科目の選択も、同じく主体的・積極的に行ってほしいと思います。

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