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合格体験記 私の司法試験合格法

井口 賢人
平成19年 3月 神奈川県立住吉高校        卒 業
平成23年 3月 明治大学法学部法律学科      卒 業
平成25年 3月 早稲田大学法科大学院(既習)   修 了
平成25年度   新司法試験(選択:知的財産法)  合 格
平成25年11月 司法研修所(第67期)        入 所
平成27年    弁護士登録(第一東京弁護士会)     

1 はじめに

 私は,平成25年に司法試験に合格しました。今回,合格体験記を執筆する機会を頂きましたが,試験の細かな技術論はもっと直近に合格された方の体験記の方が参考になると思いますので,私が受験生時代にどんなことを考え,どんな風に過ごしていたか等を書かせていただきます。
 これから試験を受けようとしている方はもちろん,法学部や法科大学院への入学を考えている方等にも,気軽な気持ちで読んでいただけたら幸いです。

2 法曹を目指すきっかけ

 もともと私は高校の頃からバンドを組んでおり,将来はギタリストになりたいと考えていましたが,大学に入ってバンド活動をしていく中で自分には音楽の才能が全くないことに気づきました。他方,法学部にいたことで,周りのバンドマン等から著作権等について質問されることや,出演料の不払い等の相談を受けることが多く,いっそのこと法律を仕事にしてしまおうと考え法曹を目指すことにしました。

3 明大法制研での日々

 明大では,3年生から法制研究所の司法研究室に所属していました。私が卒業してすぐに法制研のシステムが変わり,司法研は無くなってしまったようですが,同室では同級生と自主ゼミを組んで,明大OBの法曹の方や,法科大学院に進んだ先輩方に論文等の指導をして頂きました。
 この時一緒にゼミをやっていた同級生とは,お互い弁護士になった今でも友人ですし,このときご指導いただいた先生方には今でも明大法曹会等の様々な場面で大変お世話になっています。このときに学んだことや声をかけてくれた方々との関わりが,今の私にとって貴重な財産となっています。

4 厳しくも充実した大学院生活

 法科大学院に入ってからは,院の同級生と自主ゼミを組み勉強していました。具体的には,論文式試験の過去問を解き,その答案を互いに見せ合いながら,問題点や答案のダメな点を議論するというものです。同級生から答案のダメ出しを受けるのは悔しいこともありますが,この時に互いに歯に衣着せず議論をしたことが私の合格への糧となったことは間違いないですし,自主ゼミでの議論はとても楽しいものでした。このとき自主ゼミをやっていたメンバーは,後に皆試験に合格していますので,ゼミのメンバーにもかなり恵まれていたと思います。
 また,大学院の講義はソクラテス・メソッドを重視していたので,十分に学習をして講義に臨み,講師陣や同級生と議論を行えば,独学の何倍も判例や制度への理解が深まるもので,一つの講義を終えると小さな達成感や,法学を学ぶことへの楽しさを感じられるものでした。
 大学院での2年間は辛いことも多くありましたが,優秀な同級生と素晴らしい講師陣に囲まれて,とても充実した日々だったと思います。

5 勉強について

(1)全体

 私は,自主ゼミなどは学校で同級生と行いましたが,予習や自学する場面では,自宅に帰って音楽を聴いたりしながら勉強することが多かったです。万人に有効な方法ではないと思いますが,学校の自習室だと周りの学生が目に入ってしまって気になるタイプの人には良いのではないかと思います。
 音楽は色々試した結果,稲川淳二の怖い話を聞くのが一番落ち着くことに気付いたので,ウォークマンには常時200曲(?)以上の怪談を入れ,怪談を聞きながら勉強していました。

(2)論文式

 論文式については,色々な方が対策法を書いてらっしゃいますが,私は特に「事実」を多く抽出することと,事実の「法的評価」を丁寧に行う意識を持っていました。判例学習の際には,判例集の要約文ではなく原文(場合によっては下級審から。)を読み,「本件では,どのような事実が当事者から主張され,裁判所はそれをどう評価したのだろう。」とか,「下級審と最高裁で判断が分かれているが,なぜ判断が分かれたのだろう。」等ということを丁寧に検討しました。
 また,問題文を検討する際には,書いてある事実を「仮に,法律を学んだことの無い人だったらどう考えるだろうか。」という視点からまず虚心坦懐に見つめ,その後に「その事実を法的にはどういう意味に解釈すべきか,どのように評価できるだろうか。」ということを丁寧に考えるよう意識していました。
 司法試験は法律実務家になるための試験であり,法律実務家はまず何よりも事実を大切にします。法律問題である以上,法律論がきちんと論じられることは当然に求められますが,他方で,事実の抽出や評価が荒く,法律論ばかり分厚く書いてある答案には,なかなか良い点数はつかないはずです。

(3)短答式

 短答式はとても苦手でした。しかし,大学院時代にそれを試験委員の教授に相談したところ,「短答の点数が悪いのは,勉強量不足だよ。」等と一刀両断され,ぐうの音も出なかったことを覚えています。
 ですので,短答については愚直に過去問等を解いて,分からないところは六法や判例集で調べていくしかないと思います。もっとも,闇雲に取り組むのでは試験に間に合いませんから,過去問を分析し,頻出の項目は厚く取り組み,難しすぎるところやたまにしか出ないところについては,軽く触れる程度にとどめるといった,勉強の濃淡は必要だと思います。
 なお,実務についてから,俗にいう「短答プロパー」の問題(本来は,そのような概念はないのですが。)に直面することが多くあります。短期消滅時効や多数当事者の債権債務関係等,分からないとかなり恥ずかしい思いをします。受験生はつい論文に目が行きがちですが,短答もしっかりと勉強した方が将来のためになります。ちなみに私は,短答が苦手なくせに,論文偏重の勉強をしていたので,後述する憂き目に遭います。

6 そして,全国模試…。

 気づけば試験2カ月前となり,私は全国模試を受けました。試験半年前から論文式の答練を受け,幸いにもそれなりの成績を残せていましたから,ここでいい結果を残して本番への弾みをつけようという気持ちで模試に臨みました。
 数週間後に模試の結果が返ってきました。その成績通知書には「論文A,短答E,総合F(不合格)(短答足切り)」等と書かれており,模試とはいえ足切不合格という結果に,思わず白目をむいたことを今でも覚えています。周囲には,「オバケの話ばかり聞いていたら,試験中に肢(足)が見えなくなっちゃって。」等とくだらないことを言っていましたが,心中は全く穏やかではありませんでした。それから本番までの1カ月半は,連日短答対策をし,過去問や問題集を解きながら必死で判例集と六法を読み込みました。今思えば,このタイミングで自分が短答に弱いことを思い知らされ,気を引き締めなおしたのが結果的に合格につながったのだと思います。

7 さぁ,試験本番!!

 遂に,司法試験の3日前となりました。試験のプレッシャーは非常に重く,当日までの3日間は食事もろくに喉を通らないばかりか,六法を開くと吐き気がするほどでした。そんな状態で勉強などできるはずもなく,虚ろな目で当時放送していた「宇宙戦艦ヤマト2199」をぼんやり観ながら,「今の俺,デスラー総統より顔が青白いんじゃないか…。」等とくだらないことを考えていたことを覚えています。
 しかし,不思議なもので試験が始まってしまうと緊張はどこかに行ってしまい,集中して試験に取り組むことができました。司法試験はかなりの長丁場ですので,この段階までくるとちょっとした実力の差よりも精神力と体力がモノをいいます。とにかく会場は異様な空気感ですので,それに負けないよう強い気持ちでいることが大事です。私は,試験の休み時間に空気に呑まれたり,周囲の受験生の声が聞こえたりするのが嫌だったので(「さっきの問題,あの論点出てたよね。」といった声に動揺してしまうので。),一切試験のことは考えずに稲川淳二の怪談を聞いていました。合格した友人も,同様の考えからか休み時間はひたすらパズドラに課金していたそうです(いずれも,あまりお手本になる話ではありませんが…。)。
こうして,何とか無事に試験に合格することができました(短答2112位/論文275位/総合307位)。

8 法曹を目指す皆様へ

 以上が私の司法試験合格までの道のりです。思えば,私の受験生活は様々な人に支えられて成り立っており,とても人に恵まれた受験生活だったと思います。そして,弁護士になった今でも,周囲の人に支えられて何とか業務を行っています。
明大の良いところは,明大出身者同士で支えあう校風にあると思います。明大のOB・OGは,受験生でも,法曹になっても,あるいは別の道に進んでも,皆様にきっと手を差し伸べてくれるでしょう。
 今,法曹志願者や法曹を取り巻く状況は,決して良いものではないかもしれません。しかし,法曹として仕事をすることの価値は,その困難な状況を踏まえても,なお上回るものだと思っています。この体験記が法曹を志す皆様の一助になれば幸いです。どうか頑張って自分の道を進んでください。

以上