合格体験記 私の司法試験合格法
山本 賢太郎
平成21年3月 函館ラ・サール高校 普通科 卒業
平成25年3月 明治大学 法学部 法律学科 卒業
平成25年4月 中央大学大学院 法務研究科(既習コース) 入学
平成26年12月 予備試験合格(論文81位、口述61位)
平成27年3月 中央大学大学院 法務研究科(既習コース) 修了
平成27年9月 平成27年度司法試験 合格(総合79位)
第1 法曹を志した動機
私が、法曹を志した動機は、身近な人が、労働問題で悩んでいるのを見て、このような人達を助けられる職種として、弁護士に興味を持った事と、専門家として、会社に従属しないで、仕事できる点に魅力を感じた点です。
第2 はじめに(勉強方法総論)
1. 初期の勉強方法の間違い
私は、結果的には司法試験に合格しましたが、初期の勉強方法の間違いに、学部3年の段階で気づいていなければ、合格するのは難しかったと思います。
私は、学部1年から3年の10月までは、論文を書く勉強をほとんどしておらず、ただ基本書を読む勉強しかしていませんでした。
そのため、3年の10月になっても、ロースクールの過去問どころか、予備校の問題集も全く解けなかったのです。
論文を書く勉強をしていなかったのは、知識が不十分な中で、書いても仕方がない(知識がないのに、書くのは怖い)と思っていたからでした。
しかし、このような勉強方法は全くの間違いでした。論文式試験で何が要求されているのかを分からずに、知識を入れても、本番で使えない知識のみが集積してしまい、効率の悪い勉強方法になっていました。
2. 修正後の勉強方法について
勉強方法が悪いことに気づいた後は、毎週必ず1,2通の答案を書いて、自主ゼミを行うようにしていました。
自主ゼミとは、数人が各自、共通の問題を書いてきて、お互いの答案を見せ合い、お互いの答案のいい点、悪い点を指摘し合うことで、お互いの論述能力の向上を図るものです。
自主ゼミのメリットは、2つあります。
ひとつは、勉強のペースメーカーになることです。
すなわち、毎週1通答案を書くため、自然とそのための予習復習をすることになり、勉強をコンスタントに行うことができます。法律の勉強というものは、量が多いため、自分のみでやっていると、途中でだれてしまうことが多いのですが、毎週自主ゼミがあれば、だれることなく、勉強できます、
二つ目のメリットは、自分の欠点、長所を発見できることです。
意外と自分の欠点というものは、自分では分からず、他人に指摘されることで、分かることが多いものです。たとえば、漢字間違いや、文章がつながってなく、論理の飛躍があること(A→B→Cと書くべき事が、A→Cになっている)などは、自分ではできると思い込んでいても、実は間違っていることが多いのです、。
欠点を直すことは、論理的で、よりよい文章を書くことにつながります。
また、他人の答案を見ることで、自分の実力の相対的な位置がわかり、各科目ごとに得意不得意が分かるので、各科目の勉強量も自分にあったものにすることができます。
このことで、過不足ない勉強ができ、無駄な勉強なく、合格することができるようになります。
いろいろ言いましたが、端的に言うと、私が合格したのは、自主ゼミを学部3年10月から司法試験の受験直前まで、毎週行っていたからだと思います(約、3年半、解いた問題-約300問)
3. ロースクール在学時の勉強方法
ロースクール在学時の勉強方法として、私が気をつけていたのは、ローの授業で事例問題が出た場合には、極力、答案を毎回パソコンで作成することでした。
ロースクールは授業の予習復習が多いため、結構難しいのですが、やるべきであったと思います。
授業の予習で、教科書を読んだり、答案構成のメモを作ったとしても、結局、司法試験では、文章を書くことが必要なため、その練習が十分にできないと、実力が十分につかないのです。
それは、学外で自主ゼミをする、予備校の答案練習講座をとるという方法でカバーすることも考えられます。
しかし、授業が忙しいのに、それ以外の勉強を行うことは相当疲れるので、私は授業でカバーできるところは授業でできるように、毎回答案を書いていました。
このことによって得られたメリットは2つあります。
一つ目は、勉強時間の節約になることです。
私の勉強方法は一見、予習の時間がかかるため、勉強時間が掛かるように思うですが、授業でできることは授業で解消していたため、授業外の勉強を少なく抑えることができ、最終的には他の人より、少ない勉強時間で合格できたのかと思います。
司法試験の問題を解く自主ゼミも長期休み以外は、週一回しかやらなかったですし、一日の勉強も多くて10時間、平均すると7,8時間くらいであったと思います。
二つ目は、ロースクールの授業を楽しむことができた点です。
自分で答案を書いてくるため、授業の中、授業後の質問で、こういう考え、解答はどうですかと質問することができ、教授の言うことを受動的に聞くよりは、楽しく授業を受けることができるようになりました。
そして、自分の解答が教授に認められれば、うれしいですし、間違っていた場合であっても、間違ったこと自体が勉強になり、本番でミスしないようになるため、いいことづくしです。
私個人の意見としては、授業を自主ゼミのように使う感覚で授業を受けていました。
以上の授業の活用により、周囲より少ない時間で合格できたのではないかと思います。
第3 短答式試験の勉強方法
問題を解いて、問題の解説、条文、基本書を読むと言ったありふれた勉強方法しかしていなかったと思います。
短答式試験は一定の量を行うことが要求されるため、一日20問は必ず解くようにしていました(できない日も当然ありました)。
個人的には短答試験は苦手でしたが、もう少し早い時点(学部1,2年)からやっておくべきであったと反省しています。
第4 論文の勉強方法
1. 各科目に共通する点
1 論文を書く(特に各科目司法試験の過去問はすべて解く)
この点の重要性は、上述の通りですが、苦手な科目ほど沢山解いた方がいいと思います。私は、苦手であった憲法については、司法試験の問題を2回解きました。書くことで、苦手が分かるため、書いた方がいいです。
司法試験の問題を解く際には、出題趣旨(出題の意図)、採点実感(採点した人のコメント集)再現答案を読むことは必須です。
2 定評のある基本書、判例百選を読み、使えるようにすること
基本書は大事です。私が合格した理由は、基本書をしっかり読んだことにもあると思います。
なぜ、基本書が重要かというと、論文式試験においては、基本(原則、趣旨)から丁寧に書くことが求められているのですが、いわゆる予備校本は、知識自体は書かれているものの、論理的な文章になっていないため、これのみを読んでいると、論理飛躍した文章を書いてしまうからです、
一方、定評のある基本書は丁寧に、基本から、その論点で、どう考えるかが、論理的な文章になっているため、頭に入りやすく、本番で真似やすいのです。
判例百選(有斐閣)が重要な理由は、端的に言うと、司法試験で聞かれる判例は、大体、判例百選に掲載されている判例であるからです。
聞かれている判例を答えられることは、合格に最低限必要なことなので、その判例が書いてある百選を読むことは、必須です。
判例を読む際に、気をつけて欲しいことは、判例の前提となった事実はどのようなものかです。受験生にありがちなのが、判例の結論のみを覚えていているものの、問題でどう応用したらいいか分からないというパターンです。
それは結局、判例の事案を分かっていないため、判例の事案と比べて、今回の問題の事実が、適法、違法(合憲、違憲)、要件充足、不充足に働くのか判断できないのです。
よって、判例を読む際は、事実にも注目してください。
2. 憲法
(1) 使用した書籍
基本書 憲法学読本
参考書 憲法の急所、憲法上の権利の作法
判例集 判例百選
問題集 判例から考える憲法→特にオススメ
(2) 勉強方法
司法試験では、百選の判例をうまく使うことが求められるため、日頃の勉強で、判例の事案と、問題の事案の違いを説明し、論理的な文章を書けるようにしていました。その際には、判例から考える憲法がとても参考になりました。
3. 行政法
(1)使用書籍
基本書 憲法学読本
基本書 宇賀先生の行政法概説(但し、今は中原先生の基本行政法がオススメ)
判例集 判例百選
問題集 事例研究行政法 事案解析の作法
4. 民事系
民法は要件事実に沿って、請求権の要件のあてはめ、反論のあてはめ、といった形で論じられるように気をつけていました。
会社法は、条文を丁寧に拾うことが必須の科目であるため、教科書を読む際には、他の科目以上に条文を読むことを気をつけていました。
民事訴訟法は、司法試験で百選の判例の応用を聞くことが多いため、百選を何度も読み込み、基本書を読み、答案を書き、どうして、その判例がその結論になったのか、原理原則から説明できるかを勉強し、本番で、問題文の事実と判例の事実の違いを気づけるように勉強していました。
5. 刑事系
刑法も判例を読み、司法試験、ロースクールの授業の問題を書いていました。
刑事訴訟法も、同じですが、百選を2回ほど読み込みました。
第5 後輩に向けて
司法試験は大変な試験ですが、正しい勉強をすれば、難しい試験ではありません。正しい勉強をするためには、自分の努力も重要ですが、何よりも勉強仲間の協力が重要です。
一人の勉強では方向を間違う危険があるため、やる気のある仲間と一緒に勉強すれば、切磋琢磨しつつ、早期合格につながると思います。
皆さんが合格して、明治の法曹としてお会いできることを楽しみにしております。頑張ってください。
(H28.10月30日執筆)