予備試験合格体験記 私の司法試験予備試験合格法(3)
「考える勉強法」とは何か。法解釈の原点、「なぜ問題となるか。」3つの視点。
平成29年度予備試験民事訴訟法問題の参考答案を作成しました。
(令和2年4月27日追加執筆)
新銀座法律事務所 弁護士 門馬 博
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略歴
昭和24年生まれ
福島県立相馬高等学校卒業
明治大学法学部卒業(昭和48年)
明治大学大学院法学研究科財産法専攻終了(昭和50年)
昭和57年 旧司法試験合格 司法研修所37期 東京弁護士会登録 19300
明治大学法曹会副会長
明治大学法曹会事務局長(平成27年6月より)
平成29年7月から明治大学法曹会司法試験予備試験答案練習会幹事長
平成29年度予備試験答案練習会の基本テーマ「考える勉強法」による答案作成
(平成30年2月7日執筆)
前回合格体験記 司法試験予備試験合格方法において 27年、28年度予備試験民訴問題を執筆しましたが、続いて平成29年度予備試験民事訴訟法問題の答案を私なりに書いてみます。参考にしてください。今回も予備試験答案練習会の指導方針「考える勉強法」により書いたつもりです。なぜ問題となるか。条文上なぜ問題となるか。原理、原則からどうなるか。なぜ学説が分かれるか。法体系上どのように考えるか。定義からどうなるか。制度趣旨からどうなるか。なぜ利益対立があるか。三段論法からどうなるか。私が約40年前駿台法科研究室で教えていただいた「考える勉強法」を基に書きました。「原理(法体系)、原則、(制度)趣旨、条文、利益対立考えて、3段論法忘れずに、定義もしっかり覚えよう。」
明治の予備試験答練の受験生へ、是非本番で試してください。聞いたことのない問題、分からない問題が出たら、論点、判例はすべて忘れ、上記の呪文を唱えてください。必ず書けます。書けるはずです。論点をまとめる時もこの視点から考えてください。基本的事項の整理に徹することです。本番は、その場で考えること以外に合格はありません。本番に備え、解らない、不明な問題に備え毎日実践すれば早期合格が可能です。詳細な学説、判例など過分な資料は自ずと不要になります。分からないときは、慌てず関連する条文をすべて書き出し、原理原則からどうなるかを考え、常識上、理論上不都合、不公平があれば、制度趣旨に従い当該条文を指摘解釈して修正し、自説の不都合をカバーする理由を基本原理体系 利益対立からその場で見つけ出して3段論法に従い思った通りに書くのです。自分が、裁判官、検察官、弁護士になったつもりで自分の考えを書くのです。司法試験、予備試験とはそういうものです。どのような試験、仕事、問題でも自分で考えることなくして道は開きません。指導員はその道標を示す仕事にすぎません。
この勉強法は、実務でも通用します。いわゆる論点主義は合格と同時に消えてゆく運命にあるといつも思っています。
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考える勉強方法の原点。「なぜ問題となるか。」
(令和2年4月27日追加執筆)
今年も令和2年4月26日で第3回予備試験答案練習会が終了しました。本会の指導方針「考える勉強法」の基本をもう一度私なりに説明します。それは、法律問題に直面した時(いわゆる司法試験における法的論点について)なぜ問題となるかという思考の原点です。法解釈の原点です。全3回すべての問題、解説をほぼ読んでみました。これらの問題を一挙に解決するには、なぜ問題となるかこれを理解することなくして、又これを避けて最難関予備試験突破、早期合格はあり得ないと一層思うようになりました。明治大学、駿台法科研究室等で多くの人から学んだこと、教えていただいたことその指導方針が40年を経過し、本会に出席してさらに理解できるようになりました。司法試験予備試験において問題文があり、なぜ当該法律問題が問題になるかというとそれは簡単にまとめると3つの理由があることにある日突然気が付きました。
まず、第一は、「問題となる事実」があるからです。その事実がなければ、そもそも問題文にならないという事実です。答案にはこの事実の端的な指摘、これが不可欠です。最初の事実指摘の箇所に述べなければいけません。この指摘がない答案は致命的です。そもそも問題文を読んでいないと同じだからです。「問題となる事実」がなければ、極端に言えば学説も判例も存在しないからです。その問題となる事実があり法的紛争となっているのです。共謀共同正犯で言うならば、共謀者が、構成要件に該当する犯罪行為を行っていないという事実です。実行していれば共同正犯とすることに何の問題もありません。
第二は 条文上明らかに該当すると言えないという点です。これは、条文がないか、不明確か、交錯するかに分かれます。共謀共同正犯で言えば共謀者が条文上犯罪を実行したるといえるか抽象的で確定できないからです。法の支配の理念上当然の要請です。明確な条文なくして処罰することはできません。罪刑法定主義から当たり前のことです。答案上、これを端的に指摘することです。立派で大切な加点事由です。
第三は 背後に大きな守るべき利益の対立があるからです。これが最も重要です。対立する利益のどちらを重視するかにより判例学説が分かれます。ただそれだけのことです。どの利益を優先するかは、裁判所の裁判官、学者の全思想により異なります。重要判例、学説、有名な学者が存在するからではありません。従って、極点に言うと論文では学説、判例を暗記することは不要ということになります。この単純な利益の対立を理解すればよいのです。共謀共同正犯で言えば、被疑者、被告人の人権保障か、社会全体の法秩序の維持です。これが対立しているのです。大きく言うと判例は社会秩序の維持を重視し、学説は、被疑者、被告人の人権を重視する傾向があります。答案では、3段論法上規範定立の箇所に端的に指摘し、両方の利益を十分考えたという思考を述べれば合格です。この思考、考えの評価、点数は高いはずです。判例学説を紹介することは不要です。正確に書かないと減点の可能性があるからです。利益の対立は、憲法は、人権保障と公共の福祉、民法は 静的安全(権利者の保護)と動的安全(取引の安全)、刑法は前述。商法は 取引の安全債権者保護、と株主の利益保護と、経営者の利益、3者の利益保護です。訴訟法民訴(刑訴)は、原告、被告、裁判所、3者の利益保護、調整です(テミスの像はこれの象徴です。)。これを3段論法,規範定立の場面で対立する利益を法体系から端的に指摘することです。これで合格と思います。論点のまとめは以上の視点が不可欠です。簡単にまとまります。1.2年で、予備試験の壁を突破できると思います。原理(法体系)、原則論から必ず説き起こし、3段論法で上記3つの視点が述べられている答案が合格答案です。意外と高い点数が付くと思います。これが究極の合格法であり、明治大学で教えていただいたことです。
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(設問1)について
(設問2)について
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平成29年度 民訴問題
(〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,1:1) 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。 【事例】 Yは,甲土地の所有者であったが,甲土地については,Aとの間で,賃貸期間を2 0年とし,その期間中は定額の賃料を支払う旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」 という。)を締結しており,Aはその土地をゴルフ場用地として利用していた。その後, 甲土地は,XとYとの共有となった。しかし,甲土地の管理は引き続きYが行ってお り,YA間の本件賃貸借契約も従前どおり維持されていた。そして,Aからの賃料に ついては,Yが回収を行い,Xに対してはその持分割合に応じた額が回収した賃料か ら交付されていた。 ところが,ある時点からYはXに対してこれを交付しないようになったので,Xか ら委任を受けた弁護士LがYと裁判外で交渉をしたものの,Yは支払に応じなかった。 そこで,弁護士Lは,回収した賃料のうちYの持分割合を超える部分についてはYが 不当に利得しているとして,Yに対して不当利得返還請求訴訟を提起することとした。 なお,弁護士Lが確認したところによると,Aが運営するゴルフ場の経営は極めて 順調であり,本件賃貸借契約が締結されてからこの10年間本件賃貸借契約の約定ど おりに賃料の支払を続けていて,これまで未払はないとのことであった。 〔設問1〕 下記の弁護士Lと司法修習生Pとの会話を読んだ上で,訴え提起の時点では未発生 である利得分も含めて不当利得返還請求訴訟を提起することの適法性の有無について 論じなさい。 弁護士L:今回の不当利得返還請求訴訟において,Xは,何度も訴訟を提起したく ないということで,この際,残りの賃貸期間に係る利得分についても請求 をしたいと希望しています。そうすると,訴え提起の時点では未発生であ る利得分についても請求することになりますが,何か問題はありそうです か。 修習生P:そのような請求を認めると,相手方であるYに不利益が生じてしまうか もしれません。特に口頭弁論終結後に発生する利得分をどう考えるかが難 しそうです。 弁護士L:そうですね。その点にも配慮しつつ,今回の不当利得返還請求訴訟にお いて未発生の利得分まで請求をすることが許されないか,検討してみてください。
【事例(続き)】 弁護士Lは,Xと相談した結果,差し当たり,訴え提起の時点までに既に発生した 利得分の合計300万円のみを不当利得返還請求権に基づいて請求することとした。 これに対し,Yは,この訴訟(以下「第1訴訟」という。)の口頭弁論期日において, Xに対して有する500万円の貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)とXの有す る上記の不当利得返還請求権に係る債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 第1訴訟の受訴裁判所は,審理の結果,Xの不当利得返還請求権に係る債権につい ては300万円全額が認められる一方,Yの本件貸金債権は500万円のうち450万円が弁済されているため50万円の範囲でのみ認められるとの心証を得て,その心 証に従った判決(以下「前訴判決」という。)をし,前訴判決は確定した。 ところが,その後,Yは,本件貸金債権のうち前訴判決において相殺が認められた 50万円を除く残額450万円はいまだ弁済されていないとして,Xに対し,その支 払を求めて貸金返還請求訴訟(以下「第2訴訟」という。)を提起した。 〔設問2〕 第2訴訟において,受訴裁判所は,貸金債権の存否について改めて審理・判断をす ることができるか,検討しなさい。
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(解説)
本問は、論点とは言えない将来の給付請求135条の問題です。条文の文理解釈を原理原則から説明し民事訴訟法の定義から利益対立を考えて書けば自ずと答えは出てきます。学説を忘れても書けるでしょう。すなわち、適正、公平、迅速、低廉という理想から「あらかじめ請求をする必要」の解釈を本番、その場でするのです。そして事実関係を当てはめれば答えは出ます。設問(2)も相殺の抗弁という古い問題です。これも同様です。民事訴訟の原則、定義(民事訴訟とは、私的紛争を公権的、強制的に解決する手続きであり、適正、公平、迅速、低廉という理想に基づき遂行される(民訴2条、民法1条)。)から理由を考える方法を参考にしてください。どのような問題でも対応可能と思います。民訴はどのような問題でも、すべて回答が同じ内容になるので不思議です。これが私の「考える勉強法」です。模擬試験と異なり本番では反対説暗記は不要。判例暗記も不要。自分の考えを書くのです。自説がしっかりしていれば自ずと反対説を思いつき批判できるはずです。司法試験委員は基本原則からの論理の流れを重視します。論点、判例を知っているかではありません。法解釈とはそういうものです。民訴の勉強法はすべての科目に通用すると考えています。試してください。
(平成30年2月7日執筆)