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合格体験記 私の司法試験合格法

D.S.
第1 経歴

 私は、明治大学法学部卒業者で、2019年3月に明治大学法科大学院を修了し、令和元年の司法試験に合格しました。

 

第2 法曹の志望動機

 親族が法的問題に直面したとき、弁護士の方に助けていただいた過去から、自身が弁護士となって依頼者の方の法的解決に尽力したいと思い、法曹を志望しました。

 

第3 短答式試験

1 総論 

 全科目「司法試験短答過去問パーフェクト」(辰已法律研究所)を使用しました。
 短答試験については、必ず足切りを回避しなければなりません。なぜなら、短答で落ちてしまうと、論文試験の採点がされないため、論文試験で自分の実力を把握することが困難となるからです。
 まずは、正答率の高い(80パーセント~90パーセント台)問題は、肢の全てについて正解できるまで何度も解き直します。ここで、正解できるとは、何となくではなく、どこが正しくて、どこが間違っている肢なのかについて正確に指摘できることを指します。
 次に、中程度の正答率(50パーセント~70パーセント台)の問題、余裕があれば中以下の正答率の問題も同様に取り組みます。
 短答試験は、3科目なので、本番までに3周以上くらい過去問を回せれば、短答試験を突破できる実力はつきます。
 模試は、時間配分や現在の自分の実力の把握にとどめ、過度に意識する必要はないと思います。

 
2 憲法

 「逐条テキスト」(TAC出版、以下「書籍という」)を利用しました。
 当該書籍は、判例の要旨が長く記載され、統治分野も必要な記載(学説や概念など)があり、有益な教材です。
 使用方法としては、まず過去問を解き、間違えた肢に関する判例や知識に関する部分をマークして書籍に一元化します。この方法は、過去問を最初に解くため、過去問を回すという点で効率的といえます。
 一方、書籍の特定の分野(表現の自由など)を先に読んでから、過去問を解くという方法もあります。この方法は、先に知識を入れた上で過去問を解くため、時間はかかるものの、網羅的な知識の補充ができるというメリットがあります。
 憲法は、最新判例も問われることが多いため、判例の肢を正確に読んでおくことが重要です。前半の肢は正しいが、後半部分の肢が間違えという問題もあるため、注意していただきたいです。

 
3 民法

 「逐条テキスト」(TAC出版)を利用しました。当該書籍は、試験で出題された条文や判例、周辺知識がコンパクトにまとまっていて、有益な教材です。
 民法は、範囲が広く、親族、相続などに関して手薄になる受験生が多いと思われます。書籍を用いることで、親族や相続に関する条文や判例知識などを効率的にインプットすることが有益です。

 
4 刑法

 「判例六法」(有斐閣)と、「基本刑法」(日本評論社)、応用刑法(法学セミナー)を利用しました。
 まず、判例六法を用いて、条文(執行猶予など)や判例を押さえます。
 次に、基本刑法や応用刑法を用いて、学説の整理を行い、判例六法に一元化します。刑法は、学説の理由付けや帰結も非常に重要となるため、基本刑法や応用刑法の学説のまとめ部分が非常に参考になります。

 

第4 論文試験

1 使用教材 全科目共通

 出題趣旨、採点実感を全科目読み込みました。司法試験は、一応の水準以上を全科目確保すれば十分に合格できます。まずは、一応の水準を確保できるようにして、不良水準の答案を書かないようにすることが重要です。
 個人的には、採点実感の方を重点的に読みました。理由は、受験生が書くべき事項と、書かなくても差がつかない部分についての記述が豊富であり(最近の採点実感)、参考にしやすいからです。

 
2 選択科目、経済法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「独占禁止法」(商事法務)、問題集「論点解析経済法」(商事法務)です。
 テキストで行為類型の典型例、課徴金の計算方法などを押さえます。最近の経済法は、課徴金の計算なども問われるため、実務寄りの本テキストが有益だと思います。
 問題集は、解説がほぼ答案の形となっているため、読み込めば答案の基礎を叩き込むことができます。効果要件の事実の評価の仕方なども書いてあるため、とても参考になります。
 判例百選では、なぜ判例がその行為類型を選択したのかなどについて解説が詳しいため、有益です。

 
3 公法系
(1)憲法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「憲法学読本」(有斐閣)、問題集「憲法事例演習」(成文堂)です。
 判例百選で主要な判例の要旨、事案を押さえます。最近の憲法では、事件名の明示まで求められており、典型的な判例は判例百選で押さえておく必要があります。当事者がどのような立場の者か、どのような文脈で用いられた判例か等を意識して押さえてください。
 そして、テキストで憲法の基本的な概念を押さえます。各自由権の理由付けなどが豊富であり、答案の厚みが増します。
 さらに、問題集で、原告、反論、私見の組み合わせ方を勉強します。当該問題集では私見も述べられているため、一通りの事案の解決方法について学べます。

 
(2)行政法

 主な使用教材は、ケースブック行政法(弘文堂)、テキスト「基本行政法」(日本評論社)、問題集「事例研究行政法」(日本評論社)です。
 ケースブック行政法は、論文向けに重要といえる基本的な判例が網羅されており、非常に有益です。冒頭の概要で、各分野の基本を押さえることもできます。 
 基本行政法では、処分性や原告適格などの処理手順、さらには基本判例の射程まで学習できるため、この一冊で十分です。
 事例研究行政法では、上記で学んだ知識や判例を用いて具体的な事例の処理を押さえます。コラムなどに有益な記述があることも多く、ゼミや補助講師の方を頼り、全部回しておくのが理想です。

 
4 民事系
(1)民法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「入門民法」(有斐閣)、「民事裁判実務の基礎」(民亊法研究会)、問題集「事例で学ぶ民法演習」(成文堂)です。
 判例百選で主要な判例を押さえます。判例の射程を聞いてくる問題が出題される可能性もあるため、基本判例を押さえることは試験対策として有益です。
入門民法は、全範囲がコンパクトにまとまっており、全体像を把握するのに最適です。自信がない分野は、各自の基本書(民法の基礎など)を適時参照すれば足ります。
 さらに、要件事実を問う問題に対応するために、民事裁判実務の基礎を読んでおくとかなり有益です。基本的な要件事実(賃貸借や売買など)について押さえておけば、論点しか押さえていない受験生と差をつけられます。
 問題集は、解説が丁寧なので、解説を読み進めることで基礎的な知識を確認できます。もっとも、旧民法対応なので、その点は注意してください。

 
(2)商法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「会社法」(弘文堂)、問題集「事例研究会社法」(日本評論社)です。
 まず、判例百選で主要な判例を押さえます。株式や組織再編の基礎的な判例の理解が問われる問題が出題される可能性に備えます。
 次に、当該テキストは、なぜそのような仕組みになっているかなどについて詳しく理由付けされており、論文試験にそのまま流用できるので非常に有益です。
 当該問題集は、問題数こそ少ないと思われますが、丁寧な解説がなされ、あてはめも具体的に示されており、とても有益です。
 なお、商法総則、商行為法及び手形小切手法は、「商法総則・商行為法」(有斐閣) 第8版と、「基本講義 手形・小切手法」(新世社)を最低一読すれば万全です。

 
(3)民事訴訟法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「リーガルクエスト民事訴訟法」(有斐閣)、問題集「ロジカル演習民事訴訟法」(弘文堂)です。
 まず、判例百選で主要な判例を押さえます。民訴は、基本的な判例の理解とその射程を問うことが多いので、判例百選は必須といえます。
 次に、テキストで、基本的な原理原則などを押さえ、判例や通説以外の有力説も押さえます。民訴では、判例、通説以外の見解で書くことも求められる可能性があるため、当該テキストは非常に有益です。
 問題集は、上記テキストと相性が良く、判例通説及び有力説を用いて、具体的事案の解答例もついているため、非常に有益です。

 
5 刑事系
(1)刑法

 主な使用教材は、テキスト「基本刑法」(日本評論社)、問題集「ロースクール演習刑法」(法学書院)です。
 テキストでは、基本的な概念や具体的事例の処理方法も掲載されているため、非常に有益です。
 問題集は、判例通説だけではなく、有力説の理由付けや結論も記載されているため、直近の出題傾向にも対応できるため、極めて有益です。
 上記テキストと問題集は、学生の視点に立ち、答案作成の注意点も書いてあるので、試験前に何周かできれば理想です。

 
(2)刑事訴訟法

 主な使用教材は、判例百選、テキスト「リーガルクエスト刑事訴訟法」(有斐閣)、問題集「事例演習刑事訴訟法」(有斐閣)です。
 テキストは、基礎的な概念や理由付けが詳しく書いており、伝聞の記述も分かりやすいので非常に有益です。
 問題集は、自説だけでなく、他説の帰結や批判などを広く押さえられるため、直近の出題傾向に最も合致しています。
 判例百選で基本的な判例を押さえることが重要です。さらに判例百選の解説は、判例の行間を埋めるものであり、とても有益です。

 
6 論文が書けるようになるためには

 初見では、合格答案を書くのは困難だと思います。
 そこで、まずは、合格者の再現答案を見て、実際の合格者の記述の相場を確認します。2ケタなどの上位答案は、レベルが非常に高いので、中位くらいで自分も書ける分量のものを目標とすれば理想だと思います。
 次に、一度時間を計って、実際に答案を書いてください。そして合格者の添削を受け、自分の欠点を客観的に分析してください。出題趣旨や採点実感、基本書などは、自分の欠点を補うためのものです。

 

第5 最後に

 司法試験は、合格者も減らされており、非常に壁は高いと思ってしまうことがあります。しかし、正しい方向性で努力を続ければ、合格することが可能です。私自身、決して秀才ではなく、本番でも多くの失敗をしています。
 司法試験は、失敗を少しでも減らすために努力するという意識で勉強すれば、プレッシャーも小さくなると思われます。
 皆様が司法試験に合格し、法曹として活躍されることを心より願っております。

以上

 
 

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