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「合格体験記 私の司法試験合格法」

渡辺 知子

1 簡単な経歴

 出身大学:玉川大学文学部外国語学科仏語専攻
 2011年 明治大学法科大学院(未修コース)入学
 2014年 明治大学法科大学院(未修コース)卒業
 2014年 司法試験 不合格(総合1900番台)
 2015年 司法試験 合格(総合400番台)

2 法曹志望の動機

 私が法曹を志望した理由は、以前に中坊公平先生の著作を拝読して、中坊先生が豊島の産廃問題や森永ヒ素ミルク事件などで尽力されたことを知り、大変感銘を受けたからです。私も、人のために役に立つ仕事のできる弁護士になりたいと思い、明治大学法科大学院に入学しました。そして、在学中にはエクスターンシップで横浜の法律事務所に2週間お世話になり、弁護士の先生方の仕事を間近で拝見して、さらにその思いを強くしました。

3 はじめに

 私は、今回2回目の受験で合格することができました。1回目の受験では不合格となり、その結果を受けて勉強方法を見直し、科目ごとにメリハリをつけて勉強したことがよい結果につながったと思います。
 司法試験は、範囲が膨大で勉強量がとても多いので、短答と論文の勉強のバランスや、科目ごとのバランスをうまくとり、適切な方法で勉強することが大切であると思います。私は、様々な機会に、合格者の方、教育補助講師の先生方や友人に、勉強方法について相談していました。そして、自分に合うと思う方法は積極的に取り入れながら、勉強方法をその都度修正して、常に自分に適した勉強方法を模索するように心掛けていました。
もっとも、勉強方法は、その人の勉強の進み具合によって異なりますし、性格などによって合う方法も異なると思いますので、私の勉強方法も一つの例として、何かの参考としていただければ幸いです。

4 短答式の勉強方法

(1)1 回目の受験

 私は、元々短答があまり得意な方ではなく、模試でもあまり良い成績が取れていませんでした。そのため、短答での足きりだけは避けたいと考え、直前期にも毎日最低4時間は短答の勉強に費やしていました。特に直前期には、その分の時間をもっと論文対策に回せたらと痛感しましたので、短答が苦手な方は少しでも早めに勉強を始めた方がよいと思います。
 1回目の受験時に使用したのは、年度別に構成されている過去問の問題集でした。過去問は5~6回はまわしたのですが、1つ1つの肢について丁寧に勉強しておらず、間違えた肢についても問題集の解説を読んでいただけでした。その結果、足きりにはならなかったものの、予想通り合格ぎりぎりの点数でした。

(2)2回目の受験

 2回目の受験時は、分野別に構成されている過去問の問題集に切り替えました。その方が同じ分野について集中的に勉強できるので、ある程度の知識を習得するまでは、年度別の問題集を使用するよりも効果的だと思います。そして、一つ一つの肢について、理由づけも含めて解答できるかを意識しながら勉強しました。わからなかった肢については、1回目の受験時の反省をふまえて、今回はきちんと基本書や判例百選の該当箇所を勉強するようにしました。丁寧に勉強した分だけ時間はかかりましたが、同じ論点などについて、違う形で問われた際にも解答できるようにするには、このような勉強方法の方が適していると思います。また、短答の過去問で扱われている論点や判例は、論文でも出題されることがありますので、短答の勉強が論文の勉強にも生かされたと思います。
 さらに、何回か過去問を解いてみると、同じ肢で間違ってしまうことが多くありました。そこで、それらの肢については直前に見返すことができるように、まとめてノートに集約しました。
 これらの勉強の結果、今回の受験では、昨年より短答の順位を2000番くらい上げることができました。
5 論文の勉強方法

(1)1 回目の受験の反省点

 在学中から、自主ゼミなどで答案を書く練習はかなりやっていた方だと思います。8科目全てについて答案を書くゼミを行い、過去問の検討も行っていました。
ただ、アウトプットの時間を多くとりすぎてしまい、自分自身で知識を習得する時間が不足してしまったことが反省点です。3年生の後期には、伊藤塾の「ペースメーカー論文答練」を受けたのですが、今から考えると、自分は答練を受けるレベルには至っていなかったので、その時間を知識の習得に使えばよかったと反省しました。
 また、科目によって習熟度にバラつきが出てしまったことも反省点でした。1回目の受験では、50点以上をとれたと思えたのは憲法と刑事系の科目だけでした。そこで、2回目の受験に向けては、行政法と民事系および選択科目に集中的に時間を割くことにしました。

(2)勉強方法
 ア 憲法

 憲法は、在学中にかなり時間を割いて勉強しました。最初は法制研のゼミで簡単な問題の答案を書き、その後は自主ゼミで「事例研究 憲法」の問題も少し解きました。
そして、2年生の夏休みから、過去問の答案作成と検討を始めました。基本書や判例を参照しながら、時間をかけてその時点でのベストの答案を作成し、ゼミで検討するという方式で、8年分を2回解きました。初めの頃は答案を書くのに7~8時間かかっていたのですが、最後の方は2~3時間で作成できるようになりました。憲法は、他の科目と比べても書き方を把握するのが難しく、ある程度(合格ライン)の答案を書けるようになるまでには、一番時間がかかったと思います。
 今回の受験では、論文の勉強は、法務研での過去問の起案と検討のみにしぼりました。論文の勉強を制限した分、短答の勉強の際に論文のことも意識して勉強するようにしました。

 イ 行政法

 行政法は、在学中に自主ゼミで過去問の答案作成を8年分と、「事例研究 行政法」の答案作成を行っていました。ただ、1回目の受験時までに「事例研究 行政法」の問題を全て検討することができず、十分な準備ができていなかったと思います。そのため、1回目の受験では、訴訟選択を間違うという失敗をしてしまいました。
 今回は、答案の書き方はある程度大丈夫だと思えたので、答案構成だけにしぼって、事例研究 行政法」の第1部と第2部の問題を2回検討しました。特に、訴訟選択を間違えていないか、訴訟要件を全て挙げられているか、総論の論点を落としていないか、を意識するようにしました。

 ウ 民法

 民法については、一番苦手意識があったので、1回目の受験後すぐに勉強を再開しました。基本から徹底的にやり直そうと考え、基本書と判例100選を通読して、まとめノートを作成するという勉強をしました。
 配点が大きいので、民事系で点数が伸びないと合格は厳しいと考え、今回はかなり民事系の勉強に時間を割きました。上記のような勉強は時間がかかり、しかもすぐに成果がでないように思えますが、私の場合は結果的に実力向上につながったという実感があります。

 エ 会社法

 会社法は、リーガルクエストの基本書と判例100選を通読して、やはりまとめノートを作成しました。その後、「ロースクール演習 会社法」という問題集を使用して、答案構成だけにしぼって全ての問題を解きました。問題集は、定評のあるものであれば何でもよいと思いますが、あまり手を広げずに、1冊つぶしておけば十分だと思います。
また、どの科目でも条文はとても重要ですが、会社法では、条文を探すのが大変なので、意識して素早く引けるようになっておく必要があります。したがって、普段から、勉強の際には特に条文を意識して勉強していました。

 オ 民事訴訟法

 民訴については、友人からすすめられたリーガルクエストの基本書がとてもわかりやすかったので、それと判例100選を通読して、やはりまとめノートを作成しました。判例100選だけを通読するよりも、基本書と判例100選を並行して通読することで、判例もより理解しやすくなり、記憶の定着もしやすかったと思います。
 ただ、本当は「ロースクール民事訴訟法」の検討をしたかったのですが、時間が足りずに、Unitを2つしか検討できませんでした。今回は、アウトプットの時間があまりとれなかったのが反省点です。

 カ 刑法と刑事訴訟法

今回は、刑事系については、現状維持できるように、法務研での起案、週1回のゼミのための起案とその復習、及びまとめノート作成に勉強をしぼりました。
 刑法は「事例演習教材 刑法」を、事前に答案作成して、ゼミで週1回検討しました。ゼミで検討しきれなかった問題については、答案構成のみにしぼって検討しました。
 刑訴は、辻脇先生の総合指導の授業で扱われた問題について、その起案と復習を、週1回のゼミで行いました。
刑事系の科目については、ある程度のアウトプットの練習が必要であると考えます。なぜなら、公法系と民事系については、5頁の答案でも50~60点は取れると思いますが、刑事系に限っては7~8頁は書かないと50点以上とるのは厳しいと思うからです。限られた時間で、それだけの量の答案を書ききるには、やはりある程度の訓練をした方がよいと思いますし、時間短縮のためには、論証については自動筆記できるくらいのレベルにしておいた方が良いと考えます。
また、特に刑事訴訟法については、制度や条文の趣旨にさかのぼって、自分の言葉で論じることが求められますので、100選の判旨を丸暗記するだけで、内容をきちんと理解せずに論証を吐き出すような答案は、あまり点数が伸びないと思います。私は、趣旨・規範本をベースに、ほとんど論証を書き換えて、自分で納得できる内容のまとめノートを作成していました。
6 情報の一元化

1回目の受験時には、時間が足りず、情報の一元化ができなかったことが反省点でした。そこで、今回は趣旨・規範本をベースにして、まとめノートを作成しました。そして、法務研や自主ゼミで勉強した内容などを、その都度まとめノートに反映させるようにしていました。そして、このまとめノートを使用して、電車の中で暗記をするようにしました(往復で約1時間半)。最低限の要件や定義などは、やはり暗記しておく必要があると思いますので、きちんと暗記の時間も設けた方がよいと思います。
 司法試験の本番では、このまとめノートと、分冊した判例六法のみを持っていきました。

7 その他

(1)受験当日について

 司法試験当日は、多くの受験生が緊張などで普段とは異なる状態になってしまうと思います。少しでも普段の状態に近づけ、緊張せずに受験することができるように、私は次のことを実行しました。

ア 会場に慣れておくために、受験までに模擬試験などの機会を利用して、何度か受験会場を訪れる(私は、五反田会場に5回は行きました)。
イ 当日の時間の使い方などをシミュレーションしておく(朝は早めに会場近くに行くようにしていましたが、会場近くのカフェは受験生であふれおり、私は落着いて勉強できなかったので、模擬試験の機会を利用して、空いているカフェなども探しておくとよいと思います)。
 私の場合は、以上の結果、1回目も2回目の受験でも少し緊張した程度で済み、持っている力は十分に発揮できたと思います。
また、本番では、今まで考えたこともない問題が出されたり、普段より答案構成に時間がかかったりして、「もう無理だ」と感じることもあるかもしれません。しかし、そういう問題の場合は多くの受験生も同様に感じているはずですので、最後まで決してあきらめず、制度や条文の趣旨に立ち返って論じることができれば大丈夫だと思います。

(2)受験後について

 司法試験後は、なるべく勉強を継続した方がよいと思います。勉強から遠ざかって数か月のブランクが空いてしまうと、勉強を再開するのに時間がかかることもありますし、元のレベルに戻すだけでも一定の時間が必要となってしまうと思います。
 私の場合は、1回目の受験の感触で合格は難しいと感じましたので、勉強量は減りましたが、主に民事系の勉強を継続していました。そのおかげで、合格発表の翌日からすぐに本格的に勉強を再開することができました。
8 受験生の方へ

 司法試験は、日々の勉強の積み重ねが大事だと思います。合格者の方をみていると、在学中も含めて、朝早くから夜遅くまで自習室で勉強を継続していた方がほとんどです。合格するためには、一定量の勉強は絶対に必要となりますので、淡々と勉強を継続していくことが、合格への一番の近道だと思います。
 また、不合格となってしまった場合は、何らかの点で勉強方法が間違っていた可能性がありますので、合格者の方に再現答案を見てもらって、軌道修正することが重要だと思います。不合格となってしまう原因としては、大きくは、①基本的知識の不足、または②答案の表現力に問題がある(三段論法ができていないなど)、ことが考えられます。いずれが原因であるのかについて、早目に自覚して軌道修正すべきです。私の場合は、法務研のゼミで、至らない点を徹底的に指摘してもらうことができ、大変ためになりました。自分の至らない点を直視するのは非常に辛いことですが、そこを乗り越えないと、方向性を間違えて勉強してしまう恐れがあると思います。
 そして、合格を掴み取るためには、司法試験だけに集中して脇目を振らずに邁進することが必要です。明治では、そのような受験生のために多くのサポート体制が用意されていると思います。法科大学院の先生方や補助講師の先生方をはじめ、法務研でのゼミなど多くの先生方が、私たちの質問に対して時間を割いて答えて下さいますし、補助講師の先生方は自主ゼミの勉強も見てくださいます。ぜひ、積極的にそのような機会を利用させていただき、合格を掴み取ってください。

最後に

 本番では、今まで考えたこともない問題が出されたり、普段より答案構成に時間がかかったりして、「もう無理だ」と感じることもあるかもしれません。しかし、そういう問題の場合は多くの受験生も同様に感じているはずですので、決してあきらめず、制度や条文の趣旨に立ち返って論じれば大丈夫だと思います。
 また、司法試験は、日々の勉強の積み重ねだと思います。長い道のりなので、途中で心が折れそうになることもあるかと思いますが、淡々と勉強を継続していくことが、一番の近道だと思います。勉強方法を間違えず、一定の勉強を積み重ねれば必ず合格できると思いますので、最後まであきらめずにがんばってください。

一人でも多くの明治出身の受験生が合格されますことを祈念しております
最後まで読んでくださってありがとうございました。

以上

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